穏やかな姿に秘められた過去 すばる望遠鏡が観測した渦巻銀河「M77」
こちらは、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡で観測した渦巻銀河「M77(Messier 77)」。くじら座の方向、地球から約4800万光年先にあります。

黄金のように輝く明るい中心部分から、外側へと何重にも広がる淡い渦巻腕(渦状腕)の構造が美しく、宇宙空間に咲いた大輪の花のような印象を受けます。
活動銀河の隠れた動力源
M77は、中心に活動銀河核(AGN)を持つ活動銀河として知られています。活動銀河核は強い電磁波が観測される銀河中心部の狭い領域のことで、その原動力は太陽の数百万倍〜数十億倍の質量がある超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)だと考えられています。
国立天文台によると、M77の活動銀河核には太陽の約1000万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが潜んでいます。全体としては穏やかに見える一方で、強烈な電磁波やジェットを放出する激しい性質を持つM77は、どうして中心部だけがこれほど活発な状態になっているのか、その理由は長年の謎とされてきました。
銀河どうしの合体が引き起こした活動
その謎を解き明かす手がかりをもたらしたのが、冒頭の画像の撮影にも使用された、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC(ハイパー・シュプリーム・カム)」です。HSCの観測によって、M77の銀河円盤のさらに外側に存在する差し渡し約5万光年にもおよぶ極めて淡い雲状の構造や、それらを一部に含む直径約25万光年の巨大なループ状の構造が発見されました。
これらの構造は、数十億年前にM77が小さな衛星銀河(伴銀河)を飲み込んで合体した証拠とみられています。この出来事が超大質量ブラックホールの周囲にあるガス円盤を激しくかき乱し、ブラックホールへと一気に落下させたことで、激しい活動の引き金になったと考えられています。
また、チリのアルマ望遠鏡(ALMA)を用いた観測によって、超大質量ブラックホールから噴出したジェットが周囲の分子ガスを外側へ激しく押し流すとともに、星の材料となる分子を破壊することで、M77の中心部では星形成が抑制されている可能性も示されています。
見かけの穏やかさとは裏腹に、M77はダイナミックな銀河の成長と進化の歴史を私たちに伝えているのです。
冒頭の画像は国立天文台から2026年7月22日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事その名は「NINJA」 すばる望遠鏡の新しい観測装置が2026年夏から始動へすばる望遠鏡が観測した対照的な銀河「NGC 3504」と「NGC 3512」のペアすばる望遠鏡が観測した“おとめ座”の渦巻銀河「NGC 4045」参考文献・出典すばる望遠鏡 - 活動銀河 M77
