「絶対に売らずに持ち続けろ」…インフルエンサーを信じた投資初心者を襲う”丸投げ投資”の代償
前編記事〈「老後が不安」「物価高が心配」…それでも投資初心者の7割が「自分には無理だ」と痛感した瞬間〉では、投資に興味を持ちながらも71.4%が「難しい・自分には無理」と感じた経験を持つ、という調査結果を紹介しました。では、実際に投資を始めて失敗した人たちは、どこでつまずいたのでしょうか。
金融教育スクール「FEラボ」を運営する株式会社TRUST(トラスト)が、過去に「投資で失敗した・後悔した」経験がある190名を対象に実施した調査では、失敗の直接的な原因の第1位が「金融商品の仕組みやリスクを理解しないまま買っていた」(50.0%)でした。SNSのインフルエンサーや知人の言葉を鵜呑みにする、いわゆる「丸投げ投資」の代償です。
失敗の原因1位「仕組みを理解しないまま買っていた」
過去の投資における失敗の「直接的な原因」を聞いた結果は、次の通りでした。
■失敗の直接的な原因(上位)
1. 金融商品の仕組みやリスクを理解しないまま買っていた … 50.0%
2. 相場が暴落した時にパニックになり、慌てて損切りしてしまった … 32.1%
3. 「いつ売ればいいか(出口戦略)」を全く考えていなかった … 31.6%
ちょうど半数が、1位の「仕組みを理解しないまま」を挙げています。2位の「パニックになり慌てて損切り」、3位の「出口戦略を考えていなかった」も、それぞれ3割超。買う時点と売る時点、その両方に原因が散らばっている格好です。
では、なぜ仕組みを理解せずに買ってしまうのでしょうか。人のおすすめや情報を信じてしまった理由として上位に挙がったのは、次の心理でした。
・自分でゼロから調べて勉強する時間や手間を省きたかったから … 31.8%
・みんなが買っているから安全だろうと思い込んでいたから … 28.6%
1位は手間の回避、2位は多数派への安心感。いずれも、自分で調べるという工程を飛ばす方向に働く動機です。投資の専門用語や勉強のハードルが高いゆえに、「プロの窓口営業」「SNSのインフルエンサー」「投資に詳しい知人」の言葉をそのまま受け取り、投資判断を他人に丸投げしてしまう──調査からは、そんな初心者の実態が見えてきます。
「絶対に売るな」を信じて、一番底で売った
実際に「人のおすすめ」に乗った結果、何が起きたのか。アンケートには、こんな声が寄せられています。
・「SNSで話題の暗号資産と個別株に飛びつき、急落後も『絶対に売らずに持ち続けろ』というインフルエンサーの言葉を信じ、結局一番底で損切りしてしまった」
・「同僚から『絶対上がる』と勧められた銘柄を調べずに購入。直後の決算で大暴落し、パニックになったが損切りもできず含み損の嵐…」
・「銀行窓口でNISAを勧められ、専門用語も分からないまま言われるがまま投資信託を購入。基準価額が下がることに耐えられず売って損をした」
情報源はSNS、同僚、銀行窓口とそれぞれ違いますが、共通しているのは「他人の言葉を信じただけで、自分の中に判断基準がない」という点です。自分で納得して買っていないからこそ、相場が急変したときにどうすべきか分からずパニックになり、最悪のタイミングで手放してしまう。1つ目の失敗談は、「持ち続けろ」という助言に従ったはずが、最終的に一番底で売っている点で象徴的です。
「他人の正解」は自分の正解ではない
失敗を経て気づいた「他人の意見やおすすめに頼る丸投げ投資の最大の危険性」を聞くと、上位に挙がったのは次の2点でした。
1. 人によって「取れるリスクの大きさ」が違うため、他人の正解が自分に合うとは限らないこと … 35.3%
2. 発信者や金融機関の「売りたい商品(ポジショントーク)」であることに気づけないこと … 27.4%
どれほど親切に見える情報であっても、そこには発信者側の利益(手数料や再生数など)が隠れているケースが少なくありません。加えて、他人の家計と自分の家計では、そもそも取れるリスクの大きさが違う。1位の回答は、その前提のずれを指しています。
痛い目を見た経験者たちの助言
痛い目を見た経験者たちは、過去の自分やこれから投資を始める初心者へ、どんな言葉をかけるのでしょうか。
■経験者が語る「自衛のコツ」(一部抜粋)
・「自分が理解できない複雑な商品には絶対に手を出すな」
・「おすすめ銘柄はそのまま買わず、必ず自分でも裏付けをとれ」
・「インフルエンサーの『これ一本で億り人』は自分の利益のための煽り。他人の推奨銘柄をそのまま買うのは、自分の財布を他人に丸投げしているのと同じで非常に危険」
・「これでいい、で決めるな。これがいい、で決めろ!」
理解できないものは買わない。おすすめは自分で裏を取る。最後は自分で決める。並べてみると、いずれも判断の主体を自分側に戻す、という一点に向かっています。
求められているのは「自分で判断できる力」
投資で失敗を経験した人に、改めて「お金の知識(マネーリテラシー)」を学ぶ必要性を感じるか聞いたところ、「強く感じる(52.1%)」「やや感じる(43.7%)」を合わせて95.8%が必要性を感じると回答しました。
内訳として興味深いのは、何を身につけたいかという設問の結果です。
■投資経験者が「身につけるべき」と考える知識とスキルTOP3
1. 第三者の意見に惑わされず、自分で良し悪しを判断できる「マネーリテラシー」 … 63.7%
2. 特定の銘柄ではなく、投資の「基礎的な仕組み」や「本質」 … 47.9%
3. 経済ニュースや世の中の動きを正しく読み解く力 … 39.5%
1位は「自分で良し悪しを判断できる」こと、2位は「特定の銘柄ではなく」仕組みや本質。どちらの選択肢にも、個別の商品や銘柄から距離を置く言い回しが含まれています。失敗を経験した人が挙げた自衛のコツと、方向はそろっています。
もう「丸投げ」をしないために
今回の調査で最も多くの人が失敗の原因に挙げたのは、「仕組みを理解しないまま買っていた」ことでした。そして丸投げの危険性として1位に挙がったのは、取れるリスクの大きさが人によって違う以上、他人の正解が自分に当てはまるとは限らない、という点です。
裏を返せば、投資には「誰にでも当てはまる絶対の正解」がない、ということでもあります。だからこそ、失敗を経験した人たちの助言は「理解できない商品に手を出すな」「おすすめはそのまま買わず裏付けを取れ」といった、他人の言葉との距離の取り方に集中したのでしょう。身につけたい知識の1位が「自分で良し悪しを判断できる力」だったことも、同じ方向を向いています。
とはいえ、自分にとっての「正解」を判断する力を身につけるのは簡単ではありません。初心者向けの投資本や動画で勉強するのも一案ですが、そこでもやはり「誰の言うことを信じるか」という同じ問題が残ります。独学に限界を感じたら、お金の専門家を頼るのも一つの手でしょう。
ただし、ここでも丸投げは禁物です。手がかりになるのは、丸投げの危険性2位に挙がった「売りたい商品(ポジショントーク)」(27.4%)。問題は他人に聞くことではなく、相手が何で稼いでいるのかを知らないまま聞くことです。手数料で稼ぐ人と、助言そのもので稼ぐ人とでは、「おすすめ」の意味が違ってきます。
専門家を頼ることと、丸投げすることは違います。分かれ目は、判断そのものを委ねるのか、判断材料を集めるのか。他人の正解が自分に合うとは限らない以上、決めるのは最後まで「自分」です。
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■調査概要
・調査名:「投資の失敗経験とマネーリテラシーに関する実態調査」
・調査対象:過去に投資や資産運用で「失敗した」「後悔した」経験がある方(20代〜60代男女)・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2026年6月17日〜6月19日
・有効回答数:190名
・引用元:金融教育スクール(FEラボ)
