「孫が大切だから、少し離れます」…69歳ばあば、7歳の孫溺愛で〈年間60万円〉を援助するも…駆け付けた発表会で気づいた「本当の役割」
共働き世帯が増え、祖父母が子育てを支えることは珍しくありません。送迎や預かり、習い事の付き添いなどを担うことは、家族を助ける大切な役割です。しかし、その善意が親の役割との境界を曖昧にしてしまうことも。69歳女性が孫娘の発表会で気づいた「支えること」と「代わること」の違いとは?
可愛い孫を「全力応援」…多忙な娘夫婦を支えてきた“ばあば”
神奈川県に暮らす好美さん(69歳・仮名)は、夫との2人暮らし。 娘の瑞希さん(40歳・仮名)一家とは徒歩10分の距離に住み、頻繁に行き来をしていました。
というのも、瑞希さんは看護師、娘婿は消防士。ともにシフト勤務のため、土日も仕事になることが珍しくありません。小学1年生になる孫娘・結菜ちゃん(7歳)も好美さんに懐き、送り迎えや夕食づくり、休日の預かりまで、好美さんは喜んでフォローしていました。
結菜ちゃんが熱心に取り組んでいるのが、お稽古のバレエ。バレエ教室の送り迎えはもちろん、月謝、衣装代の一部まで負担し、それ以外に食費、プレゼント、お小遣いも含め、孫に使うお金は年間60万円を超えていました。それでも好美さんは苦になりません。「なんといっても、可愛い孫だもの」――その一心でした。
そんな結菜ちゃんのバレエの発表会が近づくと、好美さんは一段と張り切りました。本番用の花束を予約し、ビデオカメラを充電。しかし、娘夫婦は来られませんでした。娘は日勤。娘婿は当直勤務になったのです。
「仕方ない、仕事だから」。そう好美さんは考えていました。しかし、結菜ちゃんは朝から俯いたまま。
「ママとパパは? ばあばだけなの?」
「さっき言われたでしょ? 今日はお仕事なの。大丈夫、ばあばが2人の分も応援するからね!」
しかし、舞台が始まってからも、結菜ちゃんは踊る合間に何度も客席へ目を向けます。好美さんは懸命に手を振りました。ですが、その視線が探していたのは、自分ではないことがわかりました。
二世代にまたがって続く“孫育て”
帰宅後、好美さんが思い出したのは、昔のこと。好美さん自身も、若い頃は仕事が忙しく、保育園のお迎えや発熱などの対応は実母に頼り切りで、 運動会や発表会も、仕事で行けなかったことが何度もありました。
「おばあちゃんが代わりに行くから、大丈夫」
そう思っていました。でも、本当にそうだったのだろうか。結菜ちゃんの寂しそうな横顔が、幼かった娘の顔と重なりました。
「あの子も、私が来るのを待っていたんじゃないか。それに、私はきっと、娘の晴れの日をたくさん見逃してきてしまったんだ」
好美さんはこうも思いました。
「娘にとって、一時期はおばあちゃんが“親”のようなものだった。娘はそれを当たり前だと思ってしまったのではないか。それに、私が手伝いすぎたことで、『任せても大丈夫』と思うようになってしまったのかもしれない」
脈々と続く“孫育て”。それに気づいた瞬間、「これからも困ったときは助ける。でも、少し距離を置いて、遠くから支えよう」――。好美さんは決意しました。親としてしかつくれない特別な思い出まで、自分が埋めるべきではないと思ったからです。
支えることと、代わることは違う
株式会社ハルメクホールディングスの「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査2025」によると、祖母が孫に使う金額は年間平均約18万円。好美さんはその3倍のお金を孫にかけてきました。
お金をかけること自体が悪いわけではありません。けれど、送り迎えや食事、休日の預かり、そして発表会への付き添いまで……祖母が「できること」を積み重ねていくうちに、それが親子双方にとって当たり前になってしまうこともあります。
好美さんは、娘に自分の考えをはっきり伝えました。「自分は関わりすぎてしまった。“孫育て”は、もう終わりにするわ」――と。それ以降、娘夫婦は勤務を早めに調整し、学校行事や発表会は、二人のどちらかが足を運ぶようになりました。
祖父母の役割は、助け過ぎることではなく、必要なときにそっと手を差し伸べること。その距離感こそが、三世代の幸せを長く支えるのかもしれません。

