黒沢明監督(1980年頃)

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 黒沢明監督(1910〜98年)が途中降板したことで知られる日米合作の戦争映画「トラ・トラ・トラ!」で、撮影中の黒沢監督の音声を記録したテープが見つかった。

 国立映画アーカイブ(東京)が17日、発表した。黒沢監督が演技指導をする音声などが収録され、同アーカイブは「幻の撮影現場の様子がわかる貴重な資料だ」としている。

 真珠湾攻撃を描いた「トラ・トラ・トラ!」は、米20世紀フォックスが企画。日米双方で監督を立てて製作が進められた。米側はリチャード・フライシャー監督、日本側は黒沢監督が起用されたが、1968年12月2日の撮影開始から約3週間で黒沢監督が降板。関係書類などを破棄するよう全スタッフに指示したとされ、撮影したフィルムは見つかっていない。この期間の撮影の様子と突然の降板劇は、「映画史の謎」とされている。映画はその後、舛田利雄、深作欣二の両監督が演出を担当して完成し、70年に公開された。

 今回発見された音声テープは、2022年11月に本作の関係者から同アーカイブに提供された。録音技師の渡会伸(わたらいしん)が録音したもので、11本、計約138分に及ぶ。東映京都撮影所で撮影した際の録音で、必要な部分を切り出し、実際に映画に使用する予定で録音された音声だったという。

 テープには、出演者の演技に対し、黒沢監督が「そういう芝居するだろ、するからいけないんだ」などと指摘する声や、自らセリフを読んで演技指導をする声なども収められている。

 黒沢監督は撮影で、スタッフとのトラブルを抱えていたとも言われる。降板理由については、当時「強度のノイローゼ」などと報じられた。しかし、同アーカイブの岡田秀則主任研究員は「音声を聞く限り、非常に冷静に撮影をしているように思われる」と指摘する。

 音声は、現在20世紀フォックス作品の権利を保有するウォルト・ディズニー・ピクチャーズとの協議により、同アーカイブの主催事業に限って使用される。岡田研究員は「音声は映像に次ぐ貴重な資料で、映画史上に残る発見と言える。有効な活用法を考えたい」としている。

 同アーカイブは、映画資料の保存や研究、上映などを行う、日本で唯一の国立の映画専門機関。独立行政法人国立美術館が配分した国からの運営費交付金の減額などで活動資金不足に直面しており、9月23日まで、目標金額1億円のクラウドファンディングを実施している。