トヨタ「プリウス」3年半でなぜ売れ行きが“ほぼ半減”した? 「ハイブリッド専用車」の役目は終了!? カッコよすぎる“クーペ化”を選んだ必然のワケ
売れ行き半減! 激変したハイブリッド市場
「プリウス」はハイブリッドの先駆的な存在です。初代モデルは1997年に、世界初の量産ハイブリッド車として発売されました。それ以来、約30年間にわたり、ハイブリッド専用車としてラインナップされています。
ただし近年のプリウスは、売れ行きを下げました。2023年1月に発売された現行プリウスは、同年には1か月平均で8262台を登録しましたが、2025年は5310台ですから2023年の64%に留まります。2026年1〜5月の平均は4382台まで下がり、2023年の53%です。
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発売から時間が経過して売れ行きが下がるのは当然ですが、約3年で半減というのは減り方が大きいといえます。なぜ現行プリウスの売れ行きは、これほど急激に減少したのでしょうか。販売店に話を聞いてみました。
「現行型のプリウスは、背が低く(全高は1430mm)、外観がクーペのように見えます。発売当初は好調に売れましたが、お客様の好みが分かれるため、最近は売れ行きが伸び悩んでいます」
それなら今までプリウスを買っていた人は、何に乗り替えたのでしょうか。
「今は大半のトヨタ車にハイブリッドが用意されています。先代型や2世代前のプリウスから、『カローラクロス』や『シエンタ』などのハイブリッドに乗り替えるお客様も増えました。現行プリウスが値上げされ、お客様がほかの車種に乗り替えた事情もあります」
納期の遅延などはなかったのでしょうか。
「現時点(2026年6月下旬時点)の納期は、3か月から4か月ですが、以前はもっと長かった時期があります。受注を停止したこともあり、これも売れ行きが下がった原因です」
以上のように現行プリウスの登録台数が減った背景には、いろいろな理由があります。特に大きな影響を与えたのは、販売店の指摘通り、さまざまなトヨタ車でハイブリッドを選べることです。
カローラシリーズやシエンタのほか、「ヤリスシリーズ」「ライズ」「ノア/ヴォクシー」など、登録台数の多いトヨタ車には、必ずハイブリッドが用意されています。そうなれば敢えてハイブリッド専用車のプリウスを選ぶ必要はありません。
一方で、プリウスが個性的な5ドアクーペ風の外観を採用した背景にも、トヨタにおけるハイブリッド車の普及があります。
過去を振り返ると、2009年に3代目プリウスが発売された頃は、アクア、カローラハイブリッド、ノア&ヴォクシーハイブリッドなどは発売されていませんでした。そのために3代目のプリウスは、2010年に1か月平均で2万6000台も登録されました。
それがほかのトヨタ車でもハイブリッドが普及すると、プリウスの売れ行きは下がっていきます。2023年1月に発売された現行プリウスは、同年には1か月平均で8262台を登録しましたが、2025年は5310台(2023年の64%)に留まり、2026年1〜5月の平均は4382台(2023年の53%)まで下がりました。
かつて2万6000台を記録した2010年に比べると、現在の登録台数は約6分の1に達する減少ぶりで、現行型だけで見ても、発売から約3年で半減したことになります。
もはや「燃費の良いハイブリッド専用車」では売れなくなり、この時に「ハイブリッドを普及させるプリウスの役目は終わった」と判断して、車種を廃止する方法もありましたが、伝統の車種でもありトヨタは存続を決めました。しかし従来と同じクルマ造りでは、売れ行きがさらに下がるだけです。
実は超お買い得? 今プリウスを狙うワケ
そこで現行プリウスは、低燃費よりもハイブリッドの「走りの良さ」という付加価値に注目しました。機敏に反応するモーター駆動が、そのエネルギッシュな走りを生み出しています。
具体的には、売れ筋グレードのエンジンを2リッターに拡大して、エンジンとモーターの相乗効果によるシステム最高出力も196馬力に達します。1.8リッターの140馬力に比べて、動力性能を1.4倍に増強しました。
全高は先代型に比べて40mm低い1430mmに抑えて、重心も下がり、全幅は20mmワイド化しています。動力性能の向上に併せて、走行安定性も高めました。

外観はフロント/リアウインドウを寝かせた5ドアクーペ風になり、これも現行プリウスの走り良さという付加価値を表現しています。
そのほかにも付加価値があり、充電可能なPHEV(プラグインハイブリッド)には、ソーラー充電システムをオプション設定しています。天井にソーラーパネルを設置して、1年間に約1200kmは、給油や外部からの充電を行わずに走行することが可能になり、この「電気の自給自足」もプラグインハイブリッドならではの魅力です。
100V・1500W電源コンセントの装着と併せて、後席のウインドウを閉めた状態でも、電源コードを外に引き出せる外部給電アタッチメントも採用しました。ウインドウに装着する簡素な装備ですが、これも外部への給電という、ハイブリッドの付加価値を高めます。
3代目までのプリウスは、低燃費を突き詰めるハイブリッドの王道で、魅力も分かりやすかったです。これに比べて現行型は、付加価値を追求したので特徴が分かりにくくなりました。その影響もあり、現在の売れ行きは最盛期の20%以下まで減っています。
しかし、その分かりにくさの正体である「5ドアクーペ風の外観」は、自動車のデザインとして非常に注目される存在です。かつての日本車で一世を風靡した「マークII」や「カリーナED」のような「天井の低い4ドアハードトップ」が、現代的なクーペスタイルとして発展的に再来したとも受け取れるからです。
そして、このように外観の目立つ趣味性の強い車種は、「発売直後は好調に売れるが、その後は急落する」という傾向があります。
発売直後は、そのスタイリッシュな個性に惹かれたユーザーの購買意欲を強く刺激するため、愛車の車検満了を待たずに購入されて販売台数も急増します。しかし、そうした熱心なユーザーに一通り行き渡ると、売れ行きは落ち着いて(下げて)いきます。
現行プリウスの売れ行きが3年で半減した背景には、実用車から「趣味性の強いクルマ」へと生まれ変わったがゆえの、特有の販売傾向もあったといえます。
現行プリウスの価格は、大半のグレードが300万円を超えますが、機能も充実しています。買い得な中級グレードであるハイブリッドの「G」は、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能に加えて、後方の並走車両を検知して警報する安全装備、ディスプレイオーディオ、前席シートヒーターなどを標準装着して、2WDの価格(消費税込、以下同)は332万4200円です。
2026年7月の改良で、車速感応オートパワードアロックを全車に標準装着するなど装備を充実させ、原材料費の高騰などにも対応した結果、価格はハイブリッドGの場合で7万6900円高くなりました。
また2リッターハイブリッドを搭載するGの価格は、1.8リッターハイブリッドの「X」に比べて52万8000円高いですが、2リッターのハイブリッドGには、ディスプレイオーディオ、アルミホイール、上級シート表皮など34万円相当の装備が加わります。
従ってハイブリッドGには、約18万円でパワフルな2リッターエンジンをベースにしたハイブリッドが搭載されることになり、これは割安だといえるでしょう。
プリウスの場合、残価設定ローンの残価(残存価値)は、3年後で新車価格の45%です。あまり高くないため、月々の返済額を抑えるには不利ですが、ローンを使わずに現金で購入するなら買い得です。
また「PHEV・G」は、ハイブリッドGに比べて価格が55万9900円高いですが、国から交付される補助金額は85万円に達します。PHEV・Gの実質価格は、ハイブリッドGよりも29万円安く、これも非常に買い得です。
プリウスは売れ行きを急落させましたが、価格を含めた商品力は今でも十分に高いといえるでしょう。

