「サブウェイの口頭注文」を変えたら売上7倍…渡邉美樹が目指す「サンドイッチでマクドナルド超え」の実現可能性

■「ワタミ式改革」で売り上げ7倍に急成長
ワタミが2024年10月、日本法人を買収して新たに展開を開始したのがサブウェイだ。既存店売上高が67カ月連続で前年比を上回っており、買収の効果が表れている。また2025年4月に初のモデル店舗「サブウェイ ヨコハマベイサイド本店」オープンを皮切りに、年内に38店舗を新規出店している。

先行投資段階でいまだ黒字転換はしていないものの、2025年度の売上高は27億円で前年度の3億9000万円を大きく上回った。
ワタミはコーヒーのブラッシュアップや、店舗で焼き上げるベイクドクッキーなど、新機軸を打ち出して新しくなったサブウェイをアピール。また客の目からみてとくに変化を感じさせたのがセルフレジの導入だ。
パンの種類や具材、ドレッシングなどを客の好みで選べる、カスタム注文がサブウェイの大きな特徴。しかしこれまでは、客が口頭でオーダーを伝えながら、サンドイッチを作ってもらう方式だった。セルフレジ化が業績の変化にどう影響しているのか、気になるところ。こちらについても後ほど詳しく解説していく。
■500店舗→170店舗まで減少していた
まずは、かつて居酒屋を主要な事業とし、今は宅食や農業など多角化へ舵を切っているワタミがサブウェイを展開するに至った背景から見ていこう。
サブウェイは世界100以上の国・地域で約3万7000店舗展開と、マクドナルドにも匹敵するファストフードチェーン。日本では1991年にサントリーホールディングスの子会社である日本サブウェイが事業を担い、かつては500店舗近くまで展開を広げた。2018年にはサントリーから離れ、アメリカのサブウェイが直接運営するようになったが、2020年には店舗数が約170店舗まで減少。
ただしコロナ禍のテイクアウト需要から業績も上向き、約180店舗に復活してきていた。そんな折の2024年10月25日、ワタミはサンドイッチチェーンのSUBWAY(サブウェイ)とマスターフランチャイズ契約を締結。同時に、日本法人である日本サブウェイを買収した。
■ワタミがサブウェイから選ばれた理由
渡邉美樹氏によると、もともとアメリカのサブウェイ本社が日本のマスターフランチャイズ相手を探していたところから話は始まったという。サブウェイはマスターフランチャイズで世界展開しているので、むしろこれまでの日本でのやり方がイレギュラーだったわけだ。
「何社か名乗りを上げた中で、われわれが決まりました。一番の決め手となったのは、やはりワタミファームの運営。サブウェイは野菜をとても大事にしているので、有機農業で30年近く野菜を作ってきた実績が評価されたのだと思います。
もう一つは、われわれが日本で27年間運営しているTGIフライデーズ。アメリカ本社の社長がサブウェイの社長に連絡し、これまで一つもトラブルなく、誠実にビジネスをしている、組むならこんないい会社はない、と伝えたと聞いています」

■「目標1兆円」にはファストフードが必要
一方、ワタミがサブウェイの運営に手を挙げたのは、将来的にグループ事業収益を1兆円規模に引き上げたいという目標があるためだ。前段階として2034年に1000億円を目指している。
「今の居酒屋や焼肉事業だけでは目指す規模には到達できません。そうなると必要なのはファストフード。将来的には、マクドナルドやスターバックスのような全国規模のチェーンに育てていかなければならないと考えています。
実際にアメリカの主要なチェーン店を当たってみましたが、多くがハンバーガーなんですね。しかし、日本ではすでに競争が激しく、同じ土俵で勝負することに大きな魅力は感じませんでした。そうした中でサブウェイの話があった。サンドイッチというまったく違う世界で展開できる、それが大きな理由です」
2026年4月末現在で232店舗となっているが、グループ収益1兆円を実現するためには、マクドナルドの3000店舗まで追いつく必要があるという。
■「サンドイッチの3要素」を磨き込む
ワタミがサブウェイを引き継いでからはさまざまな変革が行われ、売り上げの伸びという形で表れている。渡邉氏は決算説明会の席でも、サンドイッチを構成する3要素である、パン、ドレッシング、具材を徹底的に磨き込んでいくと語ったが、取材でも改めて商品力アップの必要性を強調した。
「世界のサブウェイなので、まずは世界でどんな商品が人気かをチェックしました。それを基に改善を繰り返しています」
コーヒーの刷新では元の原価の4倍になるアラビカ種100%の豆を使用し、1杯ずつ淹れるドリップ式に変更。これにより売り上げは1.5倍になった。またクッキーについても、店舗あたり1日12〜13枚を販売。これまでなかったティータイムの需要を取り込んだ。

■日本未上陸だった「世界で人気の商品」
サンドイッチの改善では、アメリカで大人気の「ランチドレッシング」(マヨネーズやサワークリームをベースにハーブを効かせた白いドレッシング)や、シンガポール、韓国、中国などで人気の「フラットブレッド」(薄いタコスのようなパン)などを導入。いずれも好評で、フラットブレッドは2カ月の販売期間を予定していたが、3週間で売り切れてしまったそうだ。

これほど売れる商品を、過去のサブウェイではなぜ出さなかったのかとの質問に、渡邉氏は「努力不足」と言い切った。
「世界のサブウェイには人気のある商品がある。それから今までのメニューももっとおいしくなります。クッキーだって、世界のサブウェイには必ずあるのに、日本にはなかったから、売れるようにしました。なぜ3万7000店になったかということを考え、その強さをしっかりと表現していけばいいんです」確かに、店舗で焼き上げたフレッシュなパンなど、サブウェイには強みもあるが、客にはあまり知られていない。商品力として、また客とのコミュニケーションの中で、しっかりと伝えていく必要はありそうだ。
■週80〜100通のクレームが13通に激減
また商品とともに大きく見直したのがサービス品質だという。渡邉氏がサブウェイの運営を引き継いでまず驚いたのが、クレームの多さだった。
「週に80〜100通のクレームがあったんです。FCオーナー一人ひとりと向き合うなどして改善してきたところ、直近では週に13通まで減ってきました」
多かったクレームが、私語、笑顔がない、テーブルの汚れ、商品提供の遅さなど。これらを重点項目として各店舗の更衣室などに貼り出し、改善を求めている。さらに、オーナー向け理念集、渡邉氏からオーナーへのビデオレターといった形で、意識改革を行ったそうだ。
さらに、これまでほとんどがFCだったが、直営も増やしており、2025年には直営も18店舗出店した。FCも、理念をしっかりと理解してもらえることを条件に選定しているという。
■セルフレジ化に難色を示すオーナーも
フランチャイズチェーンにおいて課題になりやすいのが、オーナーにブランドの考えを理解してもらうことだ。とくにサブウェイでこれまでセルフレジ化が進まなかったのには、対面方式を「サブウェイの良さ」と考えるオーナーの意見が強かったからという理由もある。また単純に、セルフレジ導入のコストもハードルになっていたのだろう。

しかし客の立場になると、ショーケースの前で並び、オーダーを一つひとつ伝えていくやり方が本当に「良い」のかは疑問だ。周りに気を遣ってゆっくり選べない人もいるだろう。
実際、ワタミが引き継ぐ前にもその点はサブウェイ内で検討されており、2022年からセルフレジの試験運用が行われていた。ワタミに運営が移ってからはさらに導入が進んでおり、現在は232店舗中105店舗まで増えてきた。「セルフレジを導入した店では売り上げも上がっているので、その実績も踏まえてFCオーナーには伝えています。ただ、セルフレジ化によりお客様とのコミュニケーションが少なくなってしまうのも事実なので、どう補うかを検討しているところです」
■マクドナルドに並ぶ3000店舗を目指す
ワタミの改革のもと、好調なサブウェイ。将来的にはマクドナルドと同レベルの3000店舗を目指す渡邉氏だが、可能なのだろうか。
「日本の経済状況による」というのが渡邉氏の回答だった。

「サブウェイはアメリカに2万1000店あり、1年で1000店撤退した。店舗が多過ぎたことが理由です。日本も経済に合わせた出店が必要。最低でも1000、2000までは行けると思っています。ただ、日本の経済が良くならなければ、3000店舗までは行かないと考えています」
渡邉氏は日本の経済には悲観的で、一時的には1ドル300円、400円まで追い込まれる時が来るだろうと予想。
しかしそのままでは終わらない。輸出が好調になり、もう一度ものづくりの日本に変わっていく、というのが、渡邉氏が描くシナリオだ。その将来を踏まえ、運営するワタミファームでは2026年度から積極的に米作りに取り組む。
契約農家を含めて2026年度は500トン、2027年度は600トンを収穫できる見込みで、これによりグループ全体で使用する米の50%を賄うことができる。将来的には「ワタミ米」としての販売に加え、海外への輸出も視野に入れている。
このように自社も携わって日本の経済を向上させることを前提に、サブウェイ3000店舗を掲げる渡邉氏。
■「サンドイッチはハンバーガーに対抗可能」
しかし、筆者として個人的に抱いているのが「サンドイッチはバーガーに勝てるだろうか」という疑問だ。サンドイッチというとヘルシーなイメージが強く、ハンバーガーのパンチ力に敵わない気がするのだ。日本のKFCも、商品名をサンドからバーガーに変えた。バーガーという名称には食欲を直接刺激するインパクトがあるためではないだろうか。

「まず市場のポテンシャルとしては、サンドイッチは十分にハンバーガーと対抗できます。確かに日本では、サンドイッチの市場は大きくありません。しかしアメリカではバーガーとサンドイッチはほぼ同規模の市場を形成しています。店舗数ではマクドナルドよりサブウェイの方が多いぐらいです。私は、サンドイッチ市場の可能性に賭けてみたいと思っています」
20年かけて現在の約230店舗から3000店舗を目指すとしているが、2025年度の出店数38店舗では、1000店舗を達成するにも20年近くかかる計算だ。
ちなみに、同じくマクドナルド超えを目指すハンバーガーチェーンのバーガーキングは、2025年に85店舗を出店している。
3000店舗の数字を現実的にするためには、ブランド力を維持しつつの出店加速化が必須になってくる。
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渡邉 美樹(わたなべ・みき)
ワタミ会長兼社長CEO
明治大学商学部卒。2024年に創業40周年を迎えるワタミグループの創業者として、外食、宅食、有機農業、再生可能エネルギー事業などを展開し独自の6次産業モデルを構築。2011年、東京都知事選出馬。2013年〜2019年、参議院議員を一期6年務めた。郁文館夢学園理事長兼校長として教育者の顔も持ち、政府教育再生会議委員なども歴任。公益法人「School Aid Japan」代表としてアジア3地域で350校を超える学校建設や孤児院を運営する。『大暴落』(プレジデント社)、『夢に日付を!』(あさ出版)ほか著書多数。
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圓岡 志麻(まるおか・しま)
フリーライター
東京都立大学人文学部史学科卒業後、トラック・物流の専門誌の業界出版社勤務を経てフリーに。健康・ビジネス関連を両輪に幅広く執筆する中でも、飲食に関わる業界動向・企業戦略の分野で経験を蓄積。保護猫2匹と暮らすことから、保護猫活動にも関心を抱いている。
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(ワタミ会長兼社長CEO 渡邉 美樹、フリーライター 圓岡 志麻)
