税務調査は、事業所をどの地域に置くかによって、その「来やすさ」が大きく変わるという事実がある。脱・税理士の菅原氏が自身のYouTubeチャンネルで取り上げたこのテーマは、経営者や起業家が見過ごしがちな視点を鋭く突いている。
 
菅原氏がまず指摘するのは、税務署の職員数と事業所数の比率だ。都市部、とりわけ渋谷のような大都市圏では、管轄内の事業所数が極めて多い。その分、調査官1人が担当する法人件数も増え、1件あたりの調査確率は必然的に下がる。一方で地方都市では、事業所数に対して職員数が相対的に少なく、規模の大きな会社ほど地域内で際立って見えやすい。「このエリアでこれぐらいの規模の会社は少ないので、定期的にお邪魔すると思います」と調査官から帰り際に告げられた実例が動画内でも紹介されており、地方で業績を伸ばすことが調査リスクに直結する構造が浮かび上がる。
 
こうした背景から、「東京に法人を置けば調査を回避できる」と考える経営者は少なくない。実際、調査の連絡が届いた後に法人の本店所在地を遠方の別エリアへ移転させ、管轄を変えることで調査打ち切りを狙う手法が、かつて存在したという。ところが令和3年のルール改正により、管轄外でも税務調査が実施できるようになった。国税情報はデータベースで全国管理されており、過去の移転歴を含む履歴が完全に追跡できる仕組みが整っている。今や「引っ越しで調査を逃れる」という発想は、現実的な選択肢とはいえない状況だ。
 
さらに菅原氏は、実態を伴わないバーチャルオフィスへの登記や、売上が落ちたタイミングでの移転が、むしろ税務署の目を引く要因になりうると語る。不自然な動きは疑念を呼び、かえって調査対象として選ばれやすくなるリスクがある。所得の規模に対して法人化が遅れている場合も、「なぜ法人にしないのか」という観点から着目される可能性があるという。
 
都会に事業所を置くことで調査確率が下がるのは事実だが、それは「埋もれやすい環境」があるからに過ぎない。場所を選ぶより先に、自社の業績推移や移転のタイミングが外からどう映るかを、冷静に見直す必要がある。

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