森さんは二階堂さん演じるヒロイン・音の妹である梅役を務め、冷静沈着な文学少女を好演。梅は感情をあまり表に出さないキャラクターですが、小説家になる夢を追うなかでの紆余曲折や、切ない恋を経験する場面などでは、しずかに感情がにじむ美しい演技を見せてくれました。

 同年には、独特な映像美やノスタルジーを感じる繊細な作風でファンの多い、岩井俊二監督の映画『ラストレター』へも出演。

 岩井監督はオーディション時の森さんのエピソードとして「アドリブもかましながら自由に演じていた」と振り返り、彼女を“逸材”と称しました。多くの俳優を目にしてきた名匠からみても、類まれな素質を感じたのでしょう。

 また、森さんは本作の主題歌「カエルノウタ」で歌手デビューを果たすなど、俳優以外の新たな才能も発揮。そしてこの作品で「第44回日本アカデミー賞 新人俳優賞」を受賞し、女優としてのキャリアを確固たるものにしました。

◆主人公を支える気丈な“バイプレーヤー”

 2025年は、数々の話題作にキャスティングされ、劇場などで森さんの演技を目の当たりにする演劇ファンも増えたと言える年だったのではないでしょうか。

 特に話題となった映画作品への出演は多く、脚本家・坂元裕二さんが手がける『ファーストキス 1ST KISS』、第49回日本アカデミー賞で“13部門17賞”を達成した話題作『国宝』、人気を博した劇場アニメーションの実写版『秒速5センチメートル』などがあります。

 いずれの作品でも森さんが演じたのは、主人公を見守る気丈なキャラクターでした。時にはまっすぐな性格ゆえに振り回されることもあり、例えば『秒速5センチメートル』では、小学生時代に心を通わせた相手が忘れられない主人公を、一途に想い続ける高校生役を熱演。

 素朴で飾らない森さんの演技は、天真爛漫なだけでなく、心に陰りを持つ切ない役柄でこそ一層の輝きを見せます。観る者が“思わず共感してしまう”魅力的なバイプレーヤーを多く演じたのが、デビュー10周年を控えた昨年のことでした。

◆アニバーサリーイヤーで「トー横女子」を単独主演!

 そして今年、春に公開された映画『炎上』で森さんが演じるのは、家を離れ「トー横」に流れ着いた主人公の少女・小林樹理恵。

 役作りのために撮影期間中はあえて新宿のホテルに泊まったり、樹理恵の生活環境に近づけるために、必要最低限なもの以外を捨てて“断捨離”したりするなど、作品に懸ける並々ならぬ意気込みが感じられます。

 これまでの爽やかなイメージを破り、より“等身大”な演技という持ち味に磨きをかけて、幅広いジャンルへの可能性を見せた森さん。

 彼女は作品選びの基準について、「自分の未来になる感じがする」という直感を信じる、とも語っています。森さんのもつ“直感”というコンパスは、今後も彼女自身を俳優としての“新境地”へと導いてくれるに違いありません。

<取材・文/蜜ツ冶(A4studio)>