インタビュー:菊地凛子「恐怖や怖さを捨てて誰かを愛そうよ」
■確かに、本当に美しいシーンでした。
私的には、あの人間の本質が現れたシーンを“美しい”と捉えていますが、でもどう捉えるかは観る人の自由です。美しかろうが醜かろうが、そのシーンに何かを感じてもらえればいいんです。『バベル』での私の仕事は現場でもう終わっていて、後はオーディエンスのもので、自由にどう捉えてもらってもいいんです。ただ、私はあのシーンが美しかったと思うし、チエコにとって“それしかなかった”というところ、最後にそれに“挑む”というところ、怖いあまりにやってしまう、その衝動って美しいと思うんです。
■『バベル』によって変化はありましたか?
周りの環境が変わったのは確かで、それは実感しています。今まではただの菊地凛子だったのに、『バベル』の凛子、アカデミー賞(R)にノミネートされた凛子、とワンクッション入るようになって。そういったところから変わってきたと思います。でもこうなった以上は右往左往してもしょうがないと思ってます(笑)。“菊地凛子”はどうでもいいことで、演じる役柄のなかでどう存在していくか、どれだけ現実味を帯びた演技をやれるか、課題がすごくあります。自分自身は菊地凛子がどうなるかなんて全く興味がなくって、とにかく良い作品に出て、良い監督に出会って、良い役柄ができればいいな、と。集中して、責任をもって、真摯に今やるべきことを、今の仕事を丁寧にやっていくだけです。
■その静かだけれどアツい情熱は、どこから生まれているんでしょう?
私はただ単に映画にとりつかれているだけなんです。幼い頃から映画がバイブルのようだったんですね。学校の勉強よりも映画にたくさんのことを教えてもらいました。人間関係、歴史、音楽、いろんなことを教えてくれて、その中で映画に助けられたんです。そういうことがあると自然と映画に近づいていくもので、今こうやって映画に出ているわけなんですけど。
もともと自分が演じる力を持っているわけではなくって、「私にできるかしら?」といつも思いますね。でもそう思っても挑戦するんです。そして最終的に役が教えてくれる。回数をこなすたびに自分が成長していく感じで、そういうところに希望をもってやっています。菊地凛子としての自分は大して面白くない人間なんですよ。
■最後に、菊地さんが感じるこの映画の魅力を教えてください。
この映画の登場人物はどれも自分に近く、みなさんにとって近いものであると思うんです。
恐怖がありながらも、そこから一歩を踏み出そうとする。どこか皆さんとリンクできるところがあります。許し、感謝、犠牲、その後の再生。人間が一度は通る部分を描いていると思うんです。普通の人間が一生を生きている中で、何かを請うたり、求めたり、そういったことを描いていて、全く他人事ではない映画になっていますね。人間らしさ、もっと言えば“動物”らしさ。言語を越えて「もっとコミュニケートできるんじゃないか」という希望をもっている映画です。「恐怖や怖さを捨てて誰かを愛そうよ」、そう思わせてくれんです。素晴らしい、歴史に残る映画なんじゃないかなと思います。
<ストーリー>
モロッコを旅する米国人夫婦。一発の弾丸が発砲され妻に命中、重体となる。妻の命を救う為に辺境で必死になる夫。事態はテロ事件へ発展し、銃の持ち主が東京に住む会社員へとたどり着く。その頃、二人の子供はメキシコへと連れられ生死の境目をさまよっていた・・・。事件はアメリカ、メキシコ、そして日本へと波紋をひろげ息をのむラストへと加速する。
・キャスト:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子
・スタッフ:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(監督)
・公式HP:http://babel.gyao.jp
・GW特集:http://movie.news.livedoor.com/special/gw2007/detail_07.html
配給:ギャガ・コミュニケーションズ powered by ヒューマックスシネマ
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