Juice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」異例のヒットの秘密 山崎あおいが語る、“ハロプロだから”できる信頼感
TikTokでのバイラルヒット、そして異例のライブ音源先行サブスク配信――。Juice=Juiceの「盛れ!ミ・アモーレ」は、2020年代のハロー!プロジェクトにおけるひとつの到達点とも言える熱狂を巻き起こした。この楽曲を手掛けたのは、シンガーソングライターとしても活躍する山崎あおい。ラテン歌謡と現代的な“盛り”という一見ミスマッチな要素を、なぜ彼女はこれほどまでに鮮やかなポップスへと昇華できたのか。山崎が寄せる彼女たちへの信頼、そしてサブスク解禁という転換期を迎えたハロプロの未来まで、ヒットメーカーの視点から語ってもらった。(編集部)
(参考:Juice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」が先取りするハロプロ“サブスク解禁”の未来 スキルと多彩さに集まる注目)
■「盛れ!ミ・アモーレ」はハロプロだからできた曲――まず「盛れ!ミ・アモーレ」というタイトルがすごいですよね。この曲は「盛る」というテーマと、ラテン調のサウンドという二つの要素が混ざっているように思いますが、曲と歌詞のどちらが先にできたんですか?
山崎あおい(以下、山崎):曲です。メロディが先にできました。その後歌詞を書く段階で、バズを狙っていたわけではないのですが、バズるきっかけになるような要素を所々に入れていて。例えば、歌詞に関しては、TikTokでバズりそうなパンチラインのある曲を書きたいと思っていたので、「オレ!(olé)」というフラメンコなどでよく聞く掛け声と韻が踏まれている「盛れ」にして、少しツッコミどころのあるタイトルと歌詞になりました。その後歌詞に合わせてラテンやサンバなども混ぜてごちゃっとしてみたら、ああいう形の曲になったっていう感じですね。
――サウンドだけ聴くと強い女性像が浮かび上がるようなものですが、一方で歌詞は〈私を好きでいさせて〉と等身大の一面もあります。このバランスはどう意識しましたか?
山崎:あまりバランスは意識してなかったんですけど、歌い古されていないことを言いたいとは常に思っているんです。王道の失恋ソングや流行の歌詞ってあると思いますが、まだ誰も言っていないことを、言ってなかった言い方で言いたいなって。それを探した結果があの歌詞です。
――流行のワードとして“盛り”を反映するのはよくわかるんですが、そのワードを当てる曲がラテンというのがすごいなと。
山崎:あれはハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)のグループだからできたことだと思います(笑)。この歌詞を同じようにラテン歌謡っぽい曲に当てて書いたところで、きっと他のアイドルの方はこの曲をシングルにはしないと思うんです。だから、ああいう風に仕上げたディレクターさんがすごいなと思いますね。
――Juice=Juiceといえば、同じくラテン調の「Fiesta! Fiesta!」も人気曲の一つですが、作家視点で見ても、Juice=Juiceとラテンは相性が良いのでしょうか。
山崎:そう思います。以前ライブに行ったときに、「Fiesta! Fiesta!」で炎が上がる演出があって、それがすごく似合うなと思いました。今のメンバーの歌声も、もちろんクールに歌う曲もあるけど、リズムをバチバチにはめて、聴かせ所のある曲が似合うと思うんですよ。思えば「盛れ!ミ・アモーレ」も、聴かせ所しかないような曲を書きたいというのが出発点でした。
――「盛れ!ミ・アモーレ」は、特にラストのサビのインパクトもかなり強い曲になります。ここはどのようなことを意識して作られたのでしょうか。
山崎:私は作曲を担当していて、デモ段階のアレンジのみだったので、大サビに向かってめちゃくちゃ盛り上がっていくようなアレンジは、制作段階では正直想像できていなかったです。だから編曲が終わってアレンジと歌が入った音源を聴いて、「これは予想を超えてきたな、熱いな」と嬉しく思いました。
――一足先にサブスク配信されたライブバージョンだと、ファンの方のコールが入っていますよね。アイドルへ楽曲提供する作家さんはコールのための余白をわざと残す方も多いようですが、山崎さんはどうですか?
山崎:アイドルソングをたくさん書いてるので、無意識に余白を手癖で作っていることはあると思うんですが、あえて「ここでコールかな」とかは実はあまり考えないで書いています。
――この楽曲のファンの方から自然発生したコールを実際に聞いてみて、どう感じましたか?
山崎:最初は勢いがすごくて笑っちゃったんですけど(笑)、見ているうちに、自分の書いた曲でファンの方が熱く盛り上がってくれて、それに応えるように本人たちのボルテージも上がっているのに感動しちゃいました。すごいなぁと。
――リリースを経てこの楽曲は大ヒットを記録します。制作時、ここまでのヒットは想定していましたか?
山崎:ここまでのヒットは想定外でした。この曲は現在はライブバージョンだけサブスク配信されてますけど、そもそもハロプロって基本的にはサブスク配信しないじゃないですか。やっぱりバズるためにはサブスク配信が必須条件だと思っていたので、こういうこともあるんだなって驚きました。
――なぜこんなに「盛れ!ミ・アモーレ」がバズったと思いますか?
山崎:わからないんですけど、個人的にはいろいろなものが重なった複合的な結果なのかなと思っています。Juice=Juiceのメンバーが全員揃った万全の状態でライブをして、すごいパフォーマンスを見せてたこともあるし、ファンの方のコールも外から見たらすごく迫力のあるものとして映ったと思います。他にも『THE FIRST TAKE』に出演したこととか、そういった全てのタイミングが上手く噛み合って、ここまで大きくなってくれたのかなって。
――今回の楽曲を筆頭に、山崎さんの曲はタイトルが独特で印象的です。歌詞を書き終えた後にタイトルを考えるのでしょうか。
山崎:「盛れ!ミ・アモーレ」はコンセプトが先に決まったので、タイトルをそれに合わせてつけました。『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」』は、元々はもう少し短いタイトルだったんですが、あそこまで長くしたのはアップフロント(事務所)の方々の判断でした。そう考えるとタイトルが先なことが多いかもしれません。
――では書きたいテーマがあって、そこからタイトルを決めて進めていくと。
山崎:そうですね。
■作家として感じるJuice=Juiceの強み――山崎さんはJuice=Juiceに限らず、多くのハロプロのグループ/メンバーに楽曲を提供しています。彼女たちは、いわゆるハロプロ歌唱と言われるように、リズムを意識して歌うような方が多いと思うのですが、そういったスキルを踏まえて、作曲面で意識していることはありますか?
山崎:逆に意識しなくてもいいという点に助けられていますね。「もうちょっと難易度下げなきゃ」とか「この譜割はちょっと難しいかな」みたいなことをあまり考えずに書けるので。あと私の作家としての出発点もハロプロからで、ハロプロに作家として育てられた部分も大きいんです。だからきっとハロプロの音楽が血となり肉となって、ハロプロ歌唱で歌ってもらえるようなメロディを書く癖がついているんじゃないかなと思っています。
――これまで多くの楽曲をJuice=Juiceに提供していく中で、Juice=Juiceの強みや魅力はどんなところだと思いますか?
山崎:多分みんな感じていると思いますが、個々の歌の力がすごいですよね。特に段原(瑠々)さんは、ハロプロの枠を超えて、アイドルの中でも歌唱力の高い方として名が知れていると思います。でもライブを見に行ったときに、段原さんだけが頭一つ抜けているわけじゃなくて、全員が個性的な歌声で、ちゃんと技術もあるじゃないですか。そこが魅力の一つだし、そこに向かって作家たちも書いてるんじゃないかなと思います。
――そもそも、アップフロントも含めて、ハロプロに楽曲提供をすることになったきっかけはなんだったんでしょうか。
山崎:ハロプロより先にアップフロントでいうと、鈴木愛理ちゃんや安倍なつみさん、ハロプロ研修生などの曲も、もう少し前に提供させていただきました。その後ハロプロとしてはアンジュルムの「泣けないぜ…共感詐欺」と「Uraha=Lover」が初めて提供した曲になります。私がシンガーソングライターとして活動していた時に、安倍なつみさんの曲を探していたらしくて、安倍なつみさんと同じ北海道出身のシンガーソングライターがいるから一曲書かせてみようということで、たまたま書かせていただいたのが最初でした。
――それが作家デビューだったんですね。それ以前はアップフロント/ハロプロに対してはどんなイメージを持っていましたか?
山崎:私はモーニング娘。世代なので、子どものころにすごく憧れて、「オーディションを受けようかな」なんて思ったこともありました。あと高校ですごく仲良かった友達がハロプロファンで、CDをくれたり解説してもらったりしていたので、多分普通の人よりは少し詳しかったと思います。
――特に近年のハロプロは楽曲に「強い女性像」を打ち出されることが多いです。ファンの方がそういった曲を求めているという側面もあるかと思うのですが、こういったファンの声は意識していますか?
山崎:最近はしなくなりましたが、最初はすごく意識しました。基準がわからないので、それこそハロプロファンの友達に「これはオタク人気がある」とか教えてもらったり。あとは実際にライブを見て、どの曲でどう盛り上がるんだろう、というのを考えたりします。それこそ、「泣けないぜ…共感詐欺」はアンジュルムに求められるものを意識して書きました。
――作りながらメンバーの歌割を想像することもありますか?
山崎:そこまで細かくは考えないですが、「落ちサビはこの人かな」とか「サビ始まりはこの人っぽいな」とかイメージしながら書くことはありますね。
■アイドルの曲を作る上で意識しているイメージ――山崎さんはご自身で音楽活動するときの曲調と、ハロプロへの提供曲の曲調はかなり雰囲気が異なりますよね。自分で歌うものと、人に作るもので明確に分けて作っているのでしょうか。
山崎:出発点も発想も、何もかもが違うと思います。自分のライブは基本的にアコースティックギターでの弾き語りスタイルなので、それで魅力が伝わるようなメロディや自分の声が入るイメージで考えます。だから歌のレンジも世界観の幅も結構狭いんですよ。でもアイドルさんへ提供するとなると、会場の規模もどんどん大きくなりますし、それこそコールが入るとか、人数がクロスして歌うとか、色々できますよね。イメージの出発点が全く違うので、到達点も変わる感じです。
――制作する上では、どちらが難しいですか?
山崎:時期によりますが、最近は自分の曲の方が難しいです。10代の頃は尖ってた部分もあったのでので世間に対する不満もありましたが、段々なくなってくるんですよね。作家的な曲は、曲作りの楽しさだけで書けたり、この曲似合うんじゃないかなっていう発想でどんどん作れますが、いざ自分の曲となると、「自分には何が似合うんだろう」とわからなくなってしまうところがあります。
――歌うアーティストが決まっているからこそ、アイドルの曲は書きやすいということですか?
山崎:そうですね。自分が歌うんじゃないと思えば書ける曲もあります。たとえば若くて甘酸っぱい曲も私は大好きだけど、自分が歌うのは違うかなとか、そういう邪魔なエゴが入ってきてしまうこともあるので。
――アイドルに提供する場合は「この人に歌わせたい」という気持ちがあって作ることもあるのでしょうか。
山崎:「このメッセージを歌ってほしい」という個人的な気持ちというよりも、イメージですね。私は視覚的なイメージで曲を書くことが多いんですが、ライブで歌ったときに、このフレーズでこの子が切り抜かれてこういう表情をしたら多分ドキッとするだろうなぁみたいなのを想像しながら書いていきます。
■サブスク解禁でもっと広がるハロプロ楽曲――今年からハロプロもサブスクが解禁されます。「盛れ!ミ・アモーレ」のライブバージョンのサブスク解禁のときも、ハロプロの歴史が動いたという感覚がありましたが、より広く聴かれることで反響に変化はありましたか?(取材は1月下旬に実施)
山崎:『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』が多くの方に聴いていただいたときも、「今カラオケで歌ってるよ」とか「スナック来たんだけど、お客さんで歌ってる人いたよ」って連絡をもらうことがありました。「盛れ!ミ・アモーレ」も、サブスク解禁されてからなのかはわかりませんが、いろいろな人がTikTokで踊っている動画がすごく回ってくるようになって、SNS上でもちゃんとバズっている感覚はあります。
――ハロプロのサブスク解禁にあたって、作家としてはどんなことを期待していますか?
山崎:本当に大量の楽曲が世に放たれるので、もちろん今までの自分の作品がより多くの人に届くのが楽しみです。また、一リスナーとして昔のハロプロの曲を聴きたいときとか、曲作りの参考として聴きたいときとかも、今まではなかなか辿りつけないこともあったので、そういう面でもサブスク解禁は嬉しいですね。
(文=佐々木翠)
