成果は出すがなぜか出世しない“自己チュー社員”が気づいていない根本的問題…「この資料僕がやりました!」の報告は必要か
新卒でP&Gに入社し、その後、外資系企業でマーケティングなどを手掛け独立。現在は、作家として『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』などの著書を執筆するほか、就活、婚活などの領域で様々な企画運営や、記事作成を行う編集プロダクションの経営者でもあるトイアンナ(新著に『えらくならずにお金がほしい』(大和書房))。一方、外資系のIT企業に入社後、現在はJTC(伝統的日本企業、Japanese Traditional Company)で働きながら、ネット上で多くの悩める会社員たちの声に、キレ味抜群のアドバイスと経験知を提供し続けるぱぴこ。実は旧知の仲だという二人の対談が実現したーー。
社内政治=上司に気に入られる、ではない
トイアンナ まずは手堅いテーマでいきましょう。ぱぴこさんは会社組織の中で生き延びた人、対して、私は会社組織の中で生き延びるのを諦めて起業にいった人なんです。ぱぴこさんに対談のお相手としてご依頼をさせて頂いた時に、「会社組織の中で生き延びるために大事なポイント」という観点で話したら面白いよね、という話になりまして。今回はまず「社内政治のルール」について話していこうかと思います。早速、重たいテーマですね(笑)。
ぱぴこ 確かに(笑)。今回のトイアンナさんの書籍でも重要なトピックの一つが管理職になる前、30代の間のキャリア構築のための社内政治ですね。
トイアンナ そもそも社内政治って一言で言うけど、それって上司に好かれることじゃないですよね?
ぱぴこ そうですね。まあ、社内政治って一口に言っても、「それを攻略する方法が分かってたら苦労しねえよ」みたいな話はありますよね(笑)。また、いわゆる社内政治が本当にクリティカルになるのはある程度職域が上がってから。若手だとあまり関係ないのが正直なところです。若い時は目の前の仕事をきちんとまずきちんとやってくださいという話ではないかなと。
そういった前提を共有したうえで、日本の会社さんと外資系の会社では結構スキームが違っていて。私は新卒から外資系の会社に行ったんです。外資系って比較的、ジョブが分かれていて、その組織に対して何をしたらタイトルが上がっていくかが設計されている。
数字・成果は出すけど、協調性ない人は出世できるのか
ぱぴこ 一方で、日本の会社さんって基本的には崩れているといえど、終身雇用を前提にしているシステムなので、極めて定性的な誰に気に入られているとか、誰が出世頭であるって情報を把握しながら動かなくてはいけない。ここがおそらく非常にネックなんです。
トイアンナ 私のいた会社は、上司が人事権を持っていて、上司の上司がさらに人事権を持っている、人事は人事権を持たないって組織でした。上司の奴隷になると出世する、わかりやすい構図でしたね。
こういうところで新卒を経験すると、上司の好き嫌いが全ての人事に反映されると誤解してしまうんです。けれども、いざ自分が上司側になってしまうとそのあり方は全然違うことがわかりました。特に顕著なのは数字や成果を出しているけど、周りと協調行動が取れない人。実は上司目線で見た時、この人が部署の売り上げを下げる人なんです。その部署全体で見た時には、結局昨対比で何パー達成しなきゃいけないというのが決まっている。上司からしたら重要なのは全体の売り上げ。つまり、全体のパフォーマンスを上げてくれる人の方が売り上げを上げているという評価になるんです。こんなことを言いながらも、私は自分が会社員の時、全然協調行動をしていないので、あの時の私って本当に無能だったんだなっていうのを振り返らされたことがありました。
ところで、ぱぴこさんに対するネット上の人生相談を私も楽しく拝読してるんですけれど、この上司に好かれる好かれないの話は、結構多いですよね?
ぱぴこ そうですね。JTCでも当然、人事制度設計を工夫して、人事面談を手厚くやられていたりとか、1on1やってみたりしてると思うんですよ。問題はこれがキャリア開発に繋がってない気がするし、上司が自分を見てくれてない気がするという点です。
やることはやっているから上司も見てくれてるだろうって部下は思ってしまいがちなんですけど、残念ながら見てません(笑)。その上司と部下のギャップを埋める手段を皆さん知らないんです。だって、誰も教えてくれないし、上司もそんな感覚でいませんから。それはご相談を見ていて非常に感じるところですね。
出世したいが故に空回りしてしまう人の特徴
トイアンナ 「上司は自分が出世したいことすら知らない」っていうケースがよくあります。上司に「この資料やってきました!」「メール返しておきましょうか!」とか一生懸命にアピールする人がいますが、これって秘書業務なんですよね。上司は「◯◯はなんていいアシスタントなんだろう。きっとアシスタントをやりたいんだな!」って思ってしまう。出世したいのであれば、「私は、大体何年後ぐらいまでに◯◯職になりたいんです。そのために必要なスキルと今の自分のギャップをどう埋めたらいいか、ご指導ください!」と言わないと、上司は気付かないんです。とにかく、上司は本当に察しが悪い生き物だと思ってもらって、皆さんが部下なら1から10まで言語化してほしいです。
ぱぴこ おっしゃる通り、上司にきちんと伝えることも大切なんです。けれど、実態としてそれを上司にあげたとて、すごい微妙な顔をされると思うんです。「受け止めはするけど、できることはないよ」ぐらいのことで予防線を張られるとか。
基本的には会社の稟議を通していくっていうプロセスの中で、必要な情報がないと上司でも組織を動かせないんです。なので、他の人と協力しながらどこで誰が何をして、どんな酷いことが起こったのかを時系列でまとめて、綺麗なパッケージにして提案しないと、上司も動けないんです。
あと、そもそも本当にそこは戦うべきフィールドなのかは冷静に判断したほうがいいかなと。実際、手段と環境を顧みて、撤退も視野に入れるぐらいの心持ちでご理解頂いた方が賢明と思います。
ホワイト企業でもバーンアウトするのはなぜか
トイアンナ 職場の人間関係という点では、そこで様々な「理不尽」な目にあうという相談もよく届きます。このあたりはいかがでしょうか。
ぱぴこ 仕事において、何を理不尽に感じるかは個々人で捉え方が大きく違っていますよね。おそらくトイアンナさんや私は、目的がはっきりしていれば、ハイプレッシャーかつ長時間労働が比較的大丈夫なタイプの人間。でも、労働時間がすごく短くても、目的がよくわからない状況が発生した時に私は非常にしんどかったんです。いわゆるホワイト企業は素晴らしいと思うんですけれど、それだけが唯一解だと思ってしまうと苦しむことがある。自分にとっての「理不尽」というものの捉え方を読み違えると、本当にいい会社だなって思ってるのにバーンアウトしたりします。
残業時間が月200時間以でも「めっちゃ楽しい!死ぬ!」と思える自分
トイアンナ 私もそういう経験をしてきました。1社目の残業時間が月200時間以上と凄まじくて。めちゃくちゃ楽しいって言いながら「このままだと死ぬ!」と転職しました。そこは、「月40時間以上残業したら私はもう無理です!」の人もきっといるし、ハイプレッシャーでもいいけど、「結局何がしたいか教えて!」みたいな人もいますよね。あとは人格攻撃で一発ダウンする人も。
大事なのは自分が何に耐えられないのかを言語化することだと思うんですね。他の人から見たら、「そんな職場環境、大丈夫?」みたいなところであっても、私は「楽しいけど?」って言える職場というものが世の中にはあります。最終的に自分のベストな職場と出会えればいいと思っております。
ぱぴこ 本当にそうですね。自分の「理不尽耐性」がどこにあるかを把握しておくことが、働きやすい職場を手にするために重要かなと。…でも、まだまだ話し足りませんね(笑)。
<プロフィール>
トイアンナ
ライター、作家。採用や人的資本経営に強いライターとしても活躍。外資メーカー(P&Gジャパン、LVMHグループ)のマーケティングを務め、独立。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社)、『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定 二訂版』(KADOKAWA)など。最新刊は『えらくならずにお金がほしい』(大和書房)。
ぱぴこ
アラフォーDINKS OL。外資系IT企業から転職して、現在JTC管理職。Xやnote、TipsなどのSNSで、主に日々の仕事に悩める相談者に、鋭くもユーモア溢れる回答を送っている。
