台北101と新タワーを比較する
2011年に開業予定の新東京タワーのデザインが24日発表された。当初の計画と同様、タワーの高さは地上610メートルで、350メートルと450メートルの部分に第1、第2展望台を設置する。第2展望台の外周には、ガラスで覆われた空中回廊を設ける予定で、今後環境アセスメントなどで修正が加えられない限り、新タワーは今回発表されたデザインでお目見えする。
現在、建築物として高さ世界一を誇るのは、553メートルの「CNタワー」(カナダ)だ。アジアでは、508メートルの「台北101」(台湾)が最も高い。建築物のうち超高層ビルに限ると世界一高いビルだ。同じアジアに位置する台北101に、新タワー完成後のまちづくりの手がかりはないか。10月中旬、遅い夏休みを取り台湾へ向かった。
台北の六本木ヒルズ
台北101は2004年に再開発地区「信義計画区」にオープンした。最寄り駅は台北駅から地下鉄で10分ほどの市政府駅。ここから歩いて7分ほどだ。周辺には市政府庁舎や市議会議事堂があり、台北101に隣接する高級ホテル「グランドハイアット 台北」との間には片側4車線の広大な道路が貫く。
展望台は地上382メートルの89階と、同390メートルとなる91階の2カ所。入場料は89階の屋内展望台が350元(1元=4円換算で1400円)、91階の屋外がプラス100元(同400円)だ。地下1階から地上5階までの低層部は高級ブランド店や食料品店などが入ったショッピングモールとレストラン街、中層部は金融やIT関連企業などが入るオフィスフロアとなっている。
台湾で同地区一帯は「台北のマンハッタン」と呼ばれているようだが、オフィスに入居する業種や高級ホテル、隣接する高級住宅地やコンベンションセンターを見ると、六本木ヒルズや横浜・みなとみらい21地区を思い起こしてしまう。
金色の球は何?
屋内展望台へは5階のエレベーター乗り場から、世界最速の分速1010メートルを誇る日本製エレベーターでわずか37秒で到着する。日本の高層ビルにある展望台と比べて広々としており、ゆったり景色を楽しめるような雰囲気だ。カフェや土産物店のほか、展望台から国内外へ手紙を送れるコーナーもある。
また、展望台の中心部に入ると金色の球が目に付く。風による振動を抑えるダンパー(チューンド・マス・ダンパー、TMD)だ。直径5.5メートル、重さ660トンと世界最大の大きさで、TMDの周りでは写真を撮る観光客も多かった。
台北の街全体が見渡せる展望台からの眺めはすばらしい。眼下には高級マンション「信義之星」が広がり、西側の窓からは台北駅前のデパート「新光三越」が入る新光タワー(高さ244メートル)が見える。屋外展望台へ出るとかなりの強風が吹いており、ピューピューと風切り音が途切れることがない。
新旧入り交じる街並み
展望台から見えた富裕層向け住宅地へ向かった。台北101と信義之星の間を通る幹線道路の下では、2011年末開業予定の地下鉄信義線の工事が続いており、最寄り駅の「世貿中心駅」開業後は台北駅方面へのアクセスが向上する。現在住宅地から地下鉄の市政府駅までは20分ほど歩くが、住宅地に近い信義線の開業で、周辺地域の開発が一層加速しそうだ。
信義之星を通り過ぎると突如風景が変わる。低層の古びた建物がひしめく、台北市内でよく見かける下町の風景だ。商店街には「10元ショップ」もあった。台北101からは10分ほどの距離であったが、観光客と思われる人は皆無だった。
新東京タワー建設地の周辺は?
一方、新東京タワーの建設地である「押上・業平橋地区」も、現在はごく普通の住宅地。墨田区が中心となって進める新タワー周辺の「災害に強いまちづくり」では、建物の不燃化促進や生活道路の整備による災害対策に加え、下町情緒を生かした観光客をもてなす街並みづくりを目指す。
また、同区では建設地沿いを流れる北十間川を「水辺拠点」と位置づけ、水質浄化や橋の改修、親水ステージや船着き場の整備などを計画している。新タワーでいかに観光客を呼び込み、周辺の街を活性化できるかが「観光都市」を目指す同区の課題だ。
はたして、どのような風景に変ぼうするのだろうか。(つづく)
■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ(12/2)
第2回 新タワーより高い上海ヒルズ展望台(12/1)
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■関連リンク
台北101(中文または英文)
Rising Eastプロジェクト(東武鉄道・新東京タワー)
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台北101は2004年に再開発地区「信義計画区」にオープンした。最寄り駅は台北駅から地下鉄で10分ほどの市政府駅。ここから歩いて7分ほどだ。周辺には市政府庁舎や市議会議事堂があり、台北101に隣接する高級ホテル「グランドハイアット 台北」との間には片側4車線の広大な道路が貫く。
展望台は地上382メートルの89階と、同390メートルとなる91階の2カ所。入場料は89階の屋内展望台が350元(1元=4円換算で1400円)、91階の屋外がプラス100元(同400円)だ。地下1階から地上5階までの低層部は高級ブランド店や食料品店などが入ったショッピングモールとレストラン街、中層部は金融やIT関連企業などが入るオフィスフロアとなっている。
台湾で同地区一帯は「台北のマンハッタン」と呼ばれているようだが、オフィスに入居する業種や高級ホテル、隣接する高級住宅地やコンベンションセンターを見ると、六本木ヒルズや横浜・みなとみらい21地区を思い起こしてしまう。
金色の球は何?
屋内展望台へは5階のエレベーター乗り場から、世界最速の分速1010メートルを誇る日本製エレベーターでわずか37秒で到着する。日本の高層ビルにある展望台と比べて広々としており、ゆったり景色を楽しめるような雰囲気だ。カフェや土産物店のほか、展望台から国内外へ手紙を送れるコーナーもある。
また、展望台の中心部に入ると金色の球が目に付く。風による振動を抑えるダンパー(チューンド・マス・ダンパー、TMD)だ。直径5.5メートル、重さ660トンと世界最大の大きさで、TMDの周りでは写真を撮る観光客も多かった。
台北の街全体が見渡せる展望台からの眺めはすばらしい。眼下には高級マンション「信義之星」が広がり、西側の窓からは台北駅前のデパート「新光三越」が入る新光タワー(高さ244メートル)が見える。屋外展望台へ出るとかなりの強風が吹いており、ピューピューと風切り音が途切れることがない。
新旧入り交じる街並み
展望台から見えた富裕層向け住宅地へ向かった。台北101と信義之星の間を通る幹線道路の下では、2011年末開業予定の地下鉄信義線の工事が続いており、最寄り駅の「世貿中心駅」開業後は台北駅方面へのアクセスが向上する。現在住宅地から地下鉄の市政府駅までは20分ほど歩くが、住宅地に近い信義線の開業で、周辺地域の開発が一層加速しそうだ。
信義之星を通り過ぎると突如風景が変わる。低層の古びた建物がひしめく、台北市内でよく見かける下町の風景だ。商店街には「10元ショップ」もあった。台北101からは10分ほどの距離であったが、観光客と思われる人は皆無だった。
新東京タワー建設地の周辺は?
一方、新東京タワーの建設地である「押上・業平橋地区」も、現在はごく普通の住宅地。墨田区が中心となって進める新タワー周辺の「災害に強いまちづくり」では、建物の不燃化促進や生活道路の整備による災害対策に加え、下町情緒を生かした観光客をもてなす街並みづくりを目指す。
また、同区では建設地沿いを流れる北十間川を「水辺拠点」と位置づけ、水質浄化や橋の改修、親水ステージや船着き場の整備などを計画している。新タワーでいかに観光客を呼び込み、周辺の街を活性化できるかが「観光都市」を目指す同区の課題だ。
はたして、どのような風景に変ぼうするのだろうか。(つづく)
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