新タワーより高い上海ヒルズ展望台
2008年8月の北京オリンピック開催を控えた同年春、高層ビルの建設ラッシュに沸く中国・上海市で、森ビルが手がける超高層複合ビルプロジェクト「上海ヒルズ」が竣工する予定だ。新タワーより高い展望台を擁する上海ヒルズの工事は現在、高さ70階(約300メートル)部分まで達している。
同社は、1986年のアークヒルズに始まり、愛宕ヒルズ(01年)、六本木ヒルズ(03年)、表参道ヒルズ(06年)と、大規模開発プロジェクトに必ず「ヒルズ」を冠してきたが、初めて海外でこの名称を使う。上海ヒルズがオープンする08年に着工し、11年完成予定の新東京タワーと同複合ビルの展望施設を比較した。
展望施設は新東京タワーより高い
上海ヒルズの中心となるメインタワー「上海ヒルズ環球金融中心」は、地上101階、地下3階建てで、高さは492メートル。ビルの頂部には台形の開口部が目を引く。472メートルの100階には長さ55メートルの展望廊下を設け、94階には広さ700平方メートル、天井高8メートルの大展望スペースも用意し、年間250万−300万人の来場者を見込む。森ビルでは広さを生かした大型展示も検討しているという。
2008年に上海ヒルズがオープンすると、新東京タワーの完成前に、第2展望台(高さ450メートル)を22メートル上回る「世界一高い展望台」が出現する。新タワーは建物全体の高さでは世界一となるが、観光客が実際に見られる眺望は、わずかな差とはいえ「世界一の高さ」ではない。
新タワーの事業主体である東武鉄道では、展望台よりも建物としての「高さ世界一」を国内外にアピールしていくという。新タワーの基本設計が07年春までに行われることを考えると、同社が第2展望台の高さを変更する可能性は少ない。
高さを競うだけのタワーではない
「高さはもちろん、美しさや親しみでも世界一になりたい」──。24日のデザイン発表の際に配布された東武の資料には、単に高さだけを競うタワーではないと、開発の方向性が示されている。
タワーの形状は日本刀や伝統的な日本建築に見られる「そり」と「むくり」を意識した。断面図で見ると、足部から頂部に向かって、三角形が円形に連続変化していく構造だ。また、災害時も電波塔としての役目を担うため、奈良・法隆寺の五重塔に見られる制震構造を最新技術で再現するなど、耐震性と耐風性も考慮している。
東武では高さ350メートルの第1展望台に、レストランや店舗などを設ける予定。また、新タワーの目玉となる高さ450メートルの第2展望台外周には、ガラスで覆われた、らせん状の空中回廊を設ける計画だ。
新タワーの年間来場者数は、国内では圧倒的な高さとなる展望台を武器に、初年度540万人、開業後30年平均で270万人を見込む。
単なる観光地を作るつもりはない
東武が全額出資する事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長は、11月に開かれた地元関係者向けのシンポジウムで「単なる観光地を作るつもりはない」と述べ、周辺地域の発展に寄与するタワーを目指す方針を示した。
同社では新タワーを防災拠点としても位置づけており、周辺にも「下町らしい個性あふれる賑わいを演出した複合施設」を計画している。開業当初のにぎわいが一段落しても、魅力の衰えない施設をどう実現していくかが課題だ。
タワーの高さは世界一、展望台の高さは…。このもどかしさをどう発展的に解決する新タワーが完成するのだろうか。(つづく)
■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ(12/2)
第1回 台北101と新タワーを比較する(11/30)
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上海ヒルズ(森ビル)
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2008年に上海ヒルズがオープンすると、新東京タワーの完成前に、第2展望台(高さ450メートル)を22メートル上回る「世界一高い展望台」が出現する。新タワーは建物全体の高さでは世界一となるが、観光客が実際に見られる眺望は、わずかな差とはいえ「世界一の高さ」ではない。
新タワーの事業主体である東武鉄道では、展望台よりも建物としての「高さ世界一」を国内外にアピールしていくという。新タワーの基本設計が07年春までに行われることを考えると、同社が第2展望台の高さを変更する可能性は少ない。
高さを競うだけのタワーではない
「高さはもちろん、美しさや親しみでも世界一になりたい」──。24日のデザイン発表の際に配布された東武の資料には、単に高さだけを競うタワーではないと、開発の方向性が示されている。
タワーの形状は日本刀や伝統的な日本建築に見られる「そり」と「むくり」を意識した。断面図で見ると、足部から頂部に向かって、三角形が円形に連続変化していく構造だ。また、災害時も電波塔としての役目を担うため、奈良・法隆寺の五重塔に見られる制震構造を最新技術で再現するなど、耐震性と耐風性も考慮している。
東武では高さ350メートルの第1展望台に、レストランや店舗などを設ける予定。また、新タワーの目玉となる高さ450メートルの第2展望台外周には、ガラスで覆われた、らせん状の空中回廊を設ける計画だ。
新タワーの年間来場者数は、国内では圧倒的な高さとなる展望台を武器に、初年度540万人、開業後30年平均で270万人を見込む。
単なる観光地を作るつもりはない
東武が全額出資する事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長は、11月に開かれた地元関係者向けのシンポジウムで「単なる観光地を作るつもりはない」と述べ、周辺地域の発展に寄与するタワーを目指す方針を示した。
同社では新タワーを防災拠点としても位置づけており、周辺にも「下町らしい個性あふれる賑わいを演出した複合施設」を計画している。開業当初のにぎわいが一段落しても、魅力の衰えない施設をどう実現していくかが課題だ。
タワーの高さは世界一、展望台の高さは…。このもどかしさをどう発展的に解決する新タワーが完成するのだろうか。(つづく)
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