便利屋ダリア

写真拡大

 たまに看板を見かけたり、ポスティングされたチラシで目にする「便利屋」という言葉。得体の知れない仕事だが、毎月100万円以上の売上を上げている男がいる。
 埼玉県を拠点に「便利屋ダリア」を営む傍ら、その様子を「便利屋ダリアの日常」という登録者約9万人のYouTubeチャンネルにアップしている片山仁氏(32歳)に、起業のきっかけや稼業が軌道に乗るまでなどを聞いていく。

◆歯科技工士の仕事を辞めて突然「便利屋」に

 現在は専業の便利屋として働く片山氏だが、前職は歯科技工士をしていたという。

「地元和歌山の高校を卒業後、専門学校を出て歯科技工士として大阪で3年、アメリカで2年働いていました。歯科技工士の仕事がちょっと退屈で別の仕事をしたいと思い、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出る直前の2020年3月に退職して帰国。そのまま以前から住んでみたかった東京に住むことにしました」

 何のツテもないまま東京都世田谷区に引っ越してきた片山氏は、貯金を切り崩しながらフリーター生活をすることになった。

「東京に出てきてすぐの頃はフードデリバリーなど食いつないでいたのですが、ほかに何かできないかと考えていました。人に雇われたくなかったのと、東京はとにかく人が多くていくらでも困っている人はいるだろうと思い、便利屋を始めました」

 大手便利屋の相場が大体1時間3000円ほどだと知った片山氏は、少し価格を下げた1時間2500円で自身を売り込み始めた。

「技術もないしお客さんもいなかったので、『なんでもやります』と書いたチラシを印刷して自宅の近所にポスティングして集客していました。

 当初の仕事は電球を替えたり、ゴキブリを処理したり、一人暮らしのお年寄りからの依頼で高い位置にあるコンセントを抜くだけ、みたいな依頼もありました。本当になんでもやってましたね」

◆SNS×便利屋の相乗効果か。2年目で月商100万円越え

 初月の給料はたった7500円。先が見えない状況で、なぜ便利屋を続けてこれたのだろうか。

「いざ始めてみると、お年寄りを中心にけっこう相談を受けたんですよ。意外と需要があるし、住んでいたエリアに競合がいないことも分かって。地道に続けていれば、一人で暮らせるくらいの稼ぎにはなるかなって。

 あとは、依頼者の許可を取って仕事の様子を撮影できれば、それが面白い企画になるはずだと思いました。当時“便利屋”でYouTubeをやってる人はいませんでしたし、もしかしたらブルーオーシャンなのかも…と期待していました」

 0から便利屋として試行錯誤する片山氏の姿は視聴者の心を捉え、順調にフォロワーを獲得。YouTubeやTikTokの視聴者からも仕事が舞い込むようになったという。さらに、SNSは片山氏の思惑以上の効果を発揮した。

「依頼が来るエリアや年齢層などが分かるようになったんです。データを活用して、今年の2月に拠点を世田谷から埼玉県の上尾市に移しました。SNSからの依頼は埼玉付近の方が1番多く、拠点を移した方が合理的だと思いました。今は依頼の8割がSNS経由ですね」

 地道なチラシ配りとSNSを絡めたアプローチは見事にハマり、月商は順調に増えていったと片山氏は続ける。

「7500円だった初月から半年後には月商が30万円を超えて、自分の人件費や経費を差し引いても黒字を達成。翌年、2年目の夏に月商は100万円を突破しました。キリがいいのもありますが、『稼げるようになってよかった』と達成感がありました」

◆未経験の仕事も「断らず技術を身に着ける」

 便利屋と聞いてなんとなくのイメージは湧くものの、具体的にはどのような仕事をしているのだろうか。

「季節に合わせた仕事が多いですね。例年、圧倒的に草刈りの依頼が増える夏が稼ぎ時です。10月頃からはエアコンのクリーニングが増えたり、年末にかけてハウスクリーニング系の依頼が多いです。冬場の売上は少し苦しいですね」