作品への思いなどを語る森井監督(左)と中尾さん(鳥取市で)

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 鳥取県内で撮影が行われ、俳優の綾瀬はるかさんが主演を務める映画「ルート29」が8日、全国公開される。

 メガホンを取った森井勇佑監督(38)と、原作の詩集「ルート29、解放」を書いた鳥取県若桜町出身の中尾太一さん(46)に、作品に込めた思いなどを聞いた。(山内浩平)

 ――森井監督が詩集に出会ったきっかけと、映画にしようと思った理由は。

 森井 前作の「こちらあみ子」の映画評を中尾さんが書いてくれたのがきっかけ。プロデューサーから「ルート29、解放」を紹介してもらった。詩の原風景が浮かび、映画になると直感的に思った。

 中尾 前作に衝撃を受けて森井監督のファンになった。自分の原作が森井監督の映画になり、驚いている。

 ――国道29号はどんな場所か。

 森井 脚本にするうえで実際に歩き、トンネルやダムを映画に出したら面白いと具体的な作業を進めた。ずっといると、自然と国道29号が好きになっていった。普通の映画はストーリーが先にあって、各所でバラバラに撮影することが多い。この映画はほとんど、姫路から鳥取まで歩く順で、国道29号に「当て書き」している。実際に歩いたことからの発想だった。

 中尾 遠くから来て、どこかへと続く道をぼんやりと見て、そこに自分の影が歩いていると想像し始めたのが原点。国道29号を描くことで自分や故郷への郷愁は当然ある。自分を懐かしむような気持ちで、人生を再構築している気がする。

 ――完成した作品について。

 森井 主人公・のり子(綾瀬さん)という女性とハル(大沢一菜さん)という少女が、国道29号を姫路から鳥取に向かって旅をするロードムービー。一本道が続く中を歩きながら、不思議な人や出来事に出会う過程で、のり子の心が満たされていくような心の旅路を描いた。楽しむポイントは人それぞれなので自由に楽しんでほしい。

 中尾 自然や人が同じように透明な雰囲気を醸し出しているところが、鳥取の空気感に似ている。説明的に物語が進む映画ではなく、絵の美しさやワンカットへのこだわりを感じる。風のように移動する登場人物の姿を、森井監督の感性で捉えていて爽やかでみずみずしい作品。

 ――撮影の裏話を。

 森井 封鎖ロケをした鳥取市の商店街ではたくさんの人が集まり、急きょエキストラで出てもらった。予定とは違ったが壮観になり、むしろ良かった。しゃんしゃん祭の後、綾瀬さんや大沢さんらと繁華街のラーメン店に行ったが誰にも気づかれなかった。

ロケ地マップで誘客

 映画「ルート29」の公開に合わせて、鳥取県観光連盟などは、舞台となった国道29号沿いの観光地をまとめた「ロケ地マップ」を作成した。東京、関西の映画館などで配布し、鳥取県内への誘客につなげる。

 映画は、兵庫県姫路市から同県宍粟市を通り、鳥取県若桜町、八頭町、鳥取市へ続く国道29号を舞台に展開する。昨年7月から約1か月間、兵庫、鳥取両県などで撮影した。マップにはロケ地と映画のシーン、沿線の観光情報を掲載。若桜町の橋、八頭町の物産館、鳥取市の大学などを紹介する。

 鳥取県観光連盟の安達直樹事務局次長は「映画を見て、ロケ地の雰囲気を味わいながら巡ってほしい」と話す。