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多くの部品を当時のルノー車と共有

アルピーヌ V6ターボやA610の場合、エンジンやメカニズムの状態は、ボディやシャシーの状態ほど重要視する必要はない。多くの部品を当時のルノー車と共有するため、比較的入手しやすい状態にあるからだ。

【画像】部品をルノー車と共有する安心感 アルピーヌV6ターボ/A610 先代A310と現行A110 クリオ V6も 全114枚

一方、英国のオーナーズクラブを率いるピーター・ホワイトハウス氏は、腐食しがちなシャシーの修理には相当な費用が必要だと話す。ボディが接着されており、A610を本格的に対策するのに、1万ポンド(約192万円)近くかかることもあるという。


アルピーヌV6 GT(ルノーGTA/1984〜1990年/英国仕様)

V6ターボの方が、シャシーの修理費用は小さく抑えられるとか。それでも、サビが酷いものより、状態の良いクルマを選んだ方が、限られた予算を効果的に使えるはず。

エンジン廻りでは、オーバーヒートの痕跡がないか観察したい。シリンダーライナーがラジエタークーラントに接するウェットライナー構造で、ヘッドガスケットが破損する場合がある。

エアインテークが変形していると、充分な空気が当たらず、必要な冷却効果が得られなくなる。また、ラジエター自体が汚れで詰まっていても同様だ。

タイミングチェーンを採用し、交換の心配は基本的に不要といえる。自然吸気エンジンには、変わったレイアウトでソレックス・キャブレターが2基載っている。設定が難しく、不調の原因になりやすい。

シンプルなホーリー・キャブレターやウェーバー・キャブレターへ換装されることも多い。性能も向上できる。

5速MTは堅牢 家族で楽しめるリアシート

5速マニュアルのトランスミッションは、基本的に堅牢。定期的にフルードが交換されてきたか確かめたい。手入れを怠らない限り、殆ど不具合は起きないようだ。

クラッチの異常振動は、フルード漏れが原因の場合がある。A610の交換用クラッチは入手が難しい。英国では特別注文で入手可能だが、お値段は500ポンド(約10万円)以上するという。


アルピーヌV6 GT(ルノーGTA/1984〜1990年/英国仕様)

初期のV6 GTなどには、メトリック規格のタイヤが組まれていた。純正のサイズはフロントが190/55 VR365、リアは220/55 VR365で、15インチとなる。リア側は特に高価なアイテムで、一般的なタイヤへ交換されている場合が殆ど。

V6ターボでは、前が195/50、後ろが255/45の15インチ。A610では前が205/45、後ろが245/45の16インチを履く。

スペアタイヤがフロント側に積まれ、荷室と呼べる空間が存在しないことにも注意したい。そのかわり2+2のリアシートを備え、パートナーだけでなく、子どもとも一緒にドライブを楽しめる。

ちなみにドイツのルノー・ディーラーは、10台ほどのA610のルーフをカット。コンバーチブルを独自に製作し、販売している。ルノー自らもカブリオレを試作したものの、正規での提供には至らなかった。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとタイヤ

これまでの走行で生じた破損や、ヘッドライトの状態に注意したい。フロントピラーに固定されたドアヒンジの劣化具合や、ドアが滑らかに開閉できるか、位置がズレていないかも確かめる。純正サイズのリアタイヤは、かなり高価だ。

シャシーのサビ

フロントのクロスメンバーとサスペンションマウント、バルクヘッド、ステアリングラック・マウント、側面のアウトリガーやサイドシル、ジャッキアップ・ポイント、リアのサブフレームなどは錆びやすい。燃料タンクも確認したい。


アルピーヌV6 GT(ルノーGTA/1984〜1990年/英国仕様)

A610では、フロントのフロア部分やインナー・ホイールアーチも弱点となる。

エンジン

自然吸気のPRV V6エンジンは、ルノー30からの流用。ちなみに、デロリアンとも共有している。V6ターボは、ルノー25 ターボからの流用だった。ヘッドガスケットの劣化、エンジンオイル漏れ、オーバーヒートの痕跡などを確かめる。

カム・フォロワーからの異音、ターボチャージャー由来の白煙などもチェックポイント。エアインテークやラジエターの状態と、クーラントパイプのサビにも注意したい。

サスペンションとブレーキ、ステアリング

ステアリングラックと、サスペンション・ジョイントやブッシュ類の状態を観察する。ロワー・ウイッシュボーンは錆びやすい。

ブレーキキャリパーとハンドブレーキは固着しがち。A610のリア・ブレーキディスクは値段が高い。

インテリアと電気系統

スピードメーターとオドメーターは不調になりがち。過去の整備記録を遡り、走行距離が正しいかチェックしたい。燃料計も正確ではないことが珍しくない。

パワーウインドウとリアガラスの熱線、集中ドアロックなどが正常に動くか確かめる。レザー内装はオプションだった。交換部品は珍しいため、細部まで状態を確かめたい。

アルピーヌ V6ターボ/A610のまとめ

登場から40年が経過しても、優れた操縦性と乗り心地を兼ね備えた、運転の楽しいグランドツアラー。ボディに隠れて見えないシャシーのサビと、ボディパネルや内装部品の入手が困難ということが、大きな懸念事項といえる。

状態の良いクルマを探し出し、しっかりメンテナンスを施せば、同時代のライバルより遥かにローコストで特別な時間を味わえるはず。スタイリングも美しい。

良いトコロ


アルピーヌV6 GT(ルノーGTA/1984〜1990年/英国仕様)

ボディはプラスティックとグラスファイバー製で錆びない。ジュニア・スーパーカーといえる見た目と性能を備えつつ、燃費は良好。ルノーの部品が多用され、維持費もそこまでかからない。

良くないトコロ

生産数が少なく、ボディやインテリアの部品は供給不足。得意とする整備士も少ない。外から確認できないスチール製シャシーのサビは、致命傷に繋がる。本格的な修理には、大々的にボディを剥がす必要がある。

アルピーヌ V6ターボ/A610(1984〜1995年/英国仕様)のスペック

英国価格:2万2815〜2万8500ポンド(1989年時)
生産数:1509台(V6 GT)/4639台(V6ターボ)/325台(ル・マン)/818台(A610)
全長:4330-4415mm
全幅:1754-1762mm
全高:1188-1197mm
最高速度:225-262km/h
0-97km/h加速:5.8〜7.5秒
燃費:7.1-12.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1140-1380kg
パワートレイン:V型6気筒2849cc 自然吸気SOHC/V型6気筒2458・2975・2963cc ターボチャージャーSOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:159ps/5750rpm-250ps/5750rpm
最大トルク:22.4kg-m/3500rpm-35.6kg-m/2900rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)