『潜入兄妹』“幻獣”が食べている「幻獣めし」を作ってみた! 肉の旨味が溢れるパンダまん
あの映画やドラマに出てくる美味しそうな料理は、どうやったら食べられるのか。スクリーンの向こうから食欲を誘う、濃厚で魅力的なパスタや、物語の中から香り立つように登場する心温まるクリーミーなスープ。ああ、どうしても食べてみたい。でもその料理たちは、画面の中の世界でしか味わえない……。
参考:『鬼滅の刃』炭治郎のおにぎりを作ってみた! “炭火稽古”を乗り越えて沁みる味噌の味
しかし、ふと思った。もし食べられないのなら、自分で作るのはどうだろう?
そんな“エンタメグルメ”に憧れるライターのすなくじらが実際に料理を作ってみる連載「絶対食べたいグルメ」。第3回は、復讐のために巨大特殊詐欺グループ「幻獣」の内部に潜入捜査を行い、特殊詐欺の闇を暴く兄妹を描いた竜星涼&八木莉可子主演のドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系)でお送りする。
■『潜入兄妹』“幻獣”玄武が何気なく頬張っていた「パンダまん」
……さて、そんなこんなで時刻は深夜2時。わたしはひたすら真っ白な生地を捏ねている。作ろうとしているのは、ドラマの中で印象的だった“パンダまん”だ。本作は『占拠』シリーズ制作チームによる新プロジェクトということで視聴し始めたのだが、これがなかなか面白い。
組織の幹部たちが新入りの兄妹について議論を交わす緊張感漂う場面で、玄武が何気なく頬張っていたパンダまん。幻獣のアジトである中華料理店で、玄武がむさぼり食べているものがいつもとにかく美味しそうなのだ。だからこそ、番組公式SNSとクックパッドで、この料理が“幻獣めし”として公開されているのを見つけた時は、ちょっとした使命感を抱いた。
前回、『鬼滅の刃』の炭治郎の炭火おにぎりに挑戦した時に買った七輪に続き、今回はせいろを新調。こうして少しずつ、物語の世界の味を再現するための道具が増えていく。
早速、基本の生地作りに取り掛かる。ボウルにホットケーキミックス粉200g、インスタントドライイースト3g、サラダ油小さじ1を計量していく(※今回は公式レシピの倍量で作っている)。そこに水を60g~80g、慎重に加えていく。水加減がかなり重要らしく、柔らかすぎると、この後の工程が台無しになってしまう。
次は、パンダの命(?)とも言える黒いパーツを作っていく。生地の一部を取り分け、ココアパウダーを小さじ1加えていく。レシピには竹炭パウダーかブラックココアとあるけれど、この時間に買い出しに行くのも気が引ける。そこで家にあったココアパウダーで、とりあえずやってみることに。見た目は少し優しめの色になりそうだけど、まあ温厚なパンダということで。真夜中の台所で、黙々とパンダの顔パーツを作る、作る……。
白い生地は4~5分ほど根気よくこね上げるとのこと。つやが出てきたら丸くまとめてラップをかけ、10分程度冷蔵庫で寝かせる。生地が休む間に具材作りへ。
しいたけと長ネギは細かな粗みじん切りにして、豚肉の半量を炒める。肉の色が変わってきたところで、おろししょうが小さじ1/3、塩少々、砂糖小さじ1、しょうゆ小さじ1/2、酒小さじ1、ごま油小さじ1/3を加える。香ばしく炒めた具材をボウルに移して冷まし、残りの豚肉を加えてよく練り混ぜる。
冷蔵庫での休憩を終えた生地を、直径18cmの円形に優しく伸ばしていく。ちなみにB6サイズの成人向け・女性向け漫画の高さが18cmらしいので、『ヤングジャンプ』や『モーニング』などの成人向けコミックスが家にある方はイメージの参考になるかもしれない。中央に練り上げた肉だねをそっと置き、丁寧に包み込んでいく。
そしていよいよ、パンダの表情づけ。先ほど作っておいた黒いパーツを、耳、目、鼻と慎重に配置していく……のだが、これが意外と難しい。見本写真のようにはいかず、どことなく不細工な顔立ちになってしまった。でも、深夜に作るパンダまんに完璧を求めるのも酷というもの。
蒸気の立ち上る蒸し器に、できたてほやほやの生パンダを入れる。15~20分の蒸し時間の間、せいろと鍋の相性について考える。専用の鍋セットもあるらしいが、今回は手持ちの厚底フライパンで代用することに。ただし、せいろと同じ直径の鍋やフライパンを使うと不安定になるとのことなのでサイズには要注意だ。
そしていよいよ、蓋開けの瞬間。ここまで手間暇かけて失敗したらどうしようかと、原稿の締め切りのことも頭をよぎる。おそるおそる蓋を開けると……おお! 確かにパンダだ。やや割れてはいるものの、これはこれで個性的な表情として許容範囲だろう。一口かじると、フカフカの生地の中から肉の旨味が広がる。生地も予想以上に膨らんでいて、きちんと“パンダまん”にはなったのではないだろうか。
せっかくなので、今回は第2話に登場した手羽先にんにくしょうゆ唐揚げも添えている。にんにくとしょうがをすりおろし、しょうゆ大さじ3、みりん大さじ3、酒大さじ1をビニール袋に入れ、手羽先と一晩寝かせる。翌日は水分を軽く拭き取り、片栗粉をまぶして油で揚げるだけ。
160℃の油で5分、そして180℃で1~2分でこの通り。パンダまんのようなインパクトはないが、できあがりの香ばしさは負けず劣らずの存在感だ。夜食にはちょっと罪深いかもしれないけれど、これはこれで「幻獣めし」の魅力を堪能できる一品だと思う。
今週で第5話を迎えるドラマ『潜入兄妹』。幻獣たちの食卓には、まだまだ魅力的な一品が潜んでいるはずだ。犯罪組織の謎だけでなく、たまにはほんの少し視点を変えてドラマを楽しんでみるのもいいかもしれない。(文=すなくじら)