「ツッコミって負の感情の鎮魂歌」 M-1王者・銀シャリの橋本直が教えてくれた、“人生をハッピーにするツッコミ術”

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芸人の間で“ツッコみの名手”と名高い、お笑いコンビ・銀シャリ・橋本直。そんな橋本が、初エッセイ『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)を刊行。ツッコミへの目覚めとコツ、ネガティブな感情を笑いに変換する秘訣を語ってもらった。

【画像】ツッコミの原点は、昔気質でピリピリしていた父親への「ある一言」だった?

細かすぎる性格を改善しようとした!?

──初エッセイの出版おめでとうございます! 本の中では学生時代、就活で自己PRすることがなにもない自分に対して、「スラムダンクでいうところのメガネ君の逆状態!」とか、相方・鰻(和弘)さんがフガフガ言いながらお弁当を食べるのを「フランケンシュタインか!」と例えるなど、秀逸なツッコミが出てきます。そもそもいつからツッコんでたんですか?

橋本直(以下同) 昔気質な銀行員の親父がとにかくいつもピリピリしてて。喫茶店で注文したコーヒーがなかなかこないと、いきなり「遅すぎるやろー」ってキレる人でした。

そんなとき、僕は「いやいやそんな怒ったところでコーヒー来るのは早くならんし、気まずくなるだけやがな」と子どもながらに冷静だったんです。そんな親父に心の中でツッコミまくっていたのが、たぶん原点ですかね。

──細かいことが気になり、脳内でいろいろとツッコんでいると疲れませんか?

疲れるし、しんどいです。だから一時期「鈍感力」の本とか読みました。もうちょっとうまく生きたいなって思って。でも結局ダメでしたね(笑)。

語尾は疑問形で優しくツッコめ!

──巧みなツッコミに憧れる一般人も多いと思います。いいツッコミをするコツはありますか?

ツッコむときは「優しく」したほうがいいかもしれないですね。関東の方って、関西弁の強めのツッコミに憧れがあるというか、便利だなと思っておられるようですが、関西人からすると、関東の優しいツッコミが羨ましいと思うときがあるんです。優しくツッコむことで、誰も傷つくこともないし、事を荒立てないですよね。

だから一般の方、特に関東の方は、むしろ語尾は柔らかめで、小さい声。なんならささやくくらいで。思い切って疑問形はどうでしょう? 「なんやそれ!」でなく「本気で言ってる感じ?」みたいに。

ツッコミはあくまでライブ!事前準備はするな!

──やはりツッコむワードって、あらかじめいくつか用意しておいたほうがいいんですか?

ツッコミってボケが存在しないとできないんですよ。ボケのカウンターとしてあるもので、リンクしたときに1番ウケるんです。ボクシングで相手がパンチにきたところをかわして、カウンターを打つみたいな感じ。

デビュー当時は、それこそ練りに練ったツッコミワードをあらかじめ用意してたんですが、やってて楽しくないんですよ。「太鼓の達人」でいうところのタイミングよく当たってない感じ。芯で捉えられてないんですね。

自分が1番言いたいことを、その都度言ったほうが、用意したものよりも語彙力が低くなっても、タイミングとパッションでうまくいくんです。極端な話、タイミングが合えば「あっ!」とかでもウケると思います。だから事前準備はしないほうがいいと思うようになりました。

──前もって用意しないんですね。橋本さんは「例えツッコミ」するとき意識していることはありますか?

例えば、僕はサッカーが好きなので、パーマをあててる方に「UAEの10番やん!」ってツッコんだことがあります。アフロヘアのサッカー選手、オマル・アブドゥッラフマーンを引き合いに出して笑いを誘いました。

オマル・アブドゥッラフマーン選手なんて、ほとんど誰も知らないですよ。でも、みんなが知らなくても、自分が例えたかったら、例えればいいと思います。人って案外、熱量で笑うんです。好きっていうパッションが大事だと思います。

なので、まずお試しで、自分と好きなものが共通しているコミュニティで、例えてみたら、めっちゃ楽しいと思います。アニメ好き、野球好き、相撲好き同士……。お互いハッピーな状態で例え合うのは、1番幸せですよね。

ツッコミって負の感情のレクイエム!

──エッセイを書き上げるのは大変でしたか?

以前、夕刊紙で連載を持っていたんですが、そのときと比べて文字数がずいぶん多いんですよ。短距離走と長距離走くらい違う。こんなにスタミナがいるんやって思いました。しんどかったけど、楽しかったです。

──長い文章を書く中で気づいたことはありますか?

日常生活で腹が立ったことなど負の感情を、書く中で成仏させることができるようになりましたね。

最近、ラーメン屋のカウンターで、隣のお客さんが調味料の豆板醤を台にして、スマホで映画見てたんですよ。隣にいる自分も使う豆板醤をですよ。しかも耳にワイヤレスイヤホンして、つけ麺を食ってる! もう腹立ってしょうがないわけですよ!

でも、そういうムカついたときこそ、脳内でツッコミ口調に変換してみると、なんか少しだけそのことがボケに見えてくるんですよ。ツッコミって負の感情の鎮魂歌に近いと思います。ボクはたまたまそうした思いをエッセイにできましたけど、一般の方なら、日記を書くとか、ポッドキャストでしゃべるとか、吐き出すところがあったほうがいいですね。

──今後の抱負は?

このエッセイも評判がよければ次も出したいですね! エッセイでは相方の鰻さんがボクの文章に合わせて、4コマ漫画を描いてくれていて、絵もうまいんですが、実は鰻さんって文章もいけるんです。海外のひとり旅の話とか最高です。

(担当編集者に向かって)鰻さんのエッセイも出版しません?

取材・文/集英社オンライン編集部 写真/松井秀樹

細かいところが気になりすぎて

橋本 直

2024/10/30

1,650円(税込)

192ページ

ISBN: 978-4103558514

どんな些細な出来事も見逃さず、森羅万象にツッコミを入れる男・銀シャリ橋本。ツッコミひとつが、怒りも照れも笑いに変えるから──。書き下ろし「結婚」を含む全20編を収録した、初エッセイ集。相方・鰻の4コマ漫画も!

<ライブ情報>
11/3(日祝)東京、11/23(土祝)大阪にて、計10000人を動員する銀シャリ史上最大の単独ライブツアー「シャリとキリギンス」開催。11/24(日)熊本、2/2(日)愛媛にて、銀シャリが全国47都道府県を周るライブ!「銀シャリ産地直送漫才~47都道府県巡り~」開催 ※詳しくはFANYチケットをご覧ください