工事が進むJR東日本の「羽田空港アクセス線」。同線には、東武線からの直通列車を走らせる構想や動きがあります。果たして実現するのでしょうか。

東武日光・新鹿沼方面から「羽田直通」目指す動きが始動

 工事が進むJR東日本の「羽田空港アクセス線」。この新線にはJR線だけでない“乗り入れ構想”が存在します。宇都宮線の久喜駅で接続する東武伊勢崎線と相互直通運転を行い、埼玉北部や両毛地域と羽田空港を直結するというものです。

 また、2024年10月上旬には、東武日光線の沿線自治体や商工会議所などが「東京都心・羽田空港直通電車推進期成同盟会」を設立。東武日光線方面からも羽田空港直通を目指す動きが始動しました。東武線から羽田空港への直通列車は果たして実現するのでしょうか。


東武鉄道の新型特急「スペーシアX」。東武鉄道によると、「スペーシアX」はJR線に対応した保安装置を搭載することで、技術的にはJR線へ乗り入れることは可能だという(画像:写真AC)。

 JR東日本は、宇都宮線・高崎線・常磐線方面から羽田空港への直通運転を実現する「東山手ルート」について、2031年度の開業を目指して工事を進めています。羽田アクセスの分岐点は東海道線の新橋駅付近です。
 
「東山手ルート」は新橋〜羽田空港間ノンストップで、片道1時間あたり4本、1日あたり72本の運行が計画されています。ただJR東日本は、現時点で運行形態を明らかにしていません。

 しかし、羽田空港アクセス線をめぐっては、国の新たな鉄道整備の方向性となる、2016年の交通政策審議会の答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」において、運行形態に言及している興味深い記述があります。
 
 ここには、プロジェクトの課題の一つという形で「久喜駅での東武伊勢崎線と東北本線(宇都宮線)の相互直通運転化等の工夫により、さらに広域からの空港アクセス利便性の向上に資する取組についても検討が行われることを期待」と明記されているのです。
 
 東武伊勢崎線と宇都宮線が直通運転を実施すれば、加須、羽生、館林、佐野、足利、太田といった埼玉県北部や栃木・群馬県南部エリア全般から羽田空港まで直通可能となります。現在は浅草駅に発着している特急「りょうもう」の一部が久喜駅から宇都宮線に乗り入れ、大宮駅や上野駅、東京駅を通って羽田空港へ向かうようなイメージです。

 なお、東武日光線と宇都宮線に関しては、既に栗橋駅の連絡線を介して新宿駅と東武日光・鬼怒川温泉を結ぶJR・東武直通特急が運転されています。
 
 そのため、「東山手ルート」が開業すれば、東武日光や新鹿沼方面から羽田空港までの列車を設定することも可能と考えられます。栃木市や鹿沼市、日光市などが設立した「東京都心・羽田空港直通電車推進期成同盟会」は、このルートの実現を目指しています。実現すれば沿線住民だけでなく、外国人観光客の利便性も向上しそうです。

「新幹線駅へのアクセス機能の強化」というメリットも

 羽田空港アクセス線が本格的に着工した今、東武鉄道やJR東日本は上記の構想に関して何か検討を進めているのでしょうか。また、東武の「スペーシアX」や「リバティ」といった特急車両をJR線に直通させることは可能なのでしょうか。

 東武鉄道は、東武伊勢崎線から久喜駅経由での羽田空港アクセス線との相互直通運転について「両毛地域・羽田空港間のみならず、新幹線乗換駅である大宮・上野などへのアクセス機能の強化により、両毛地域の活性化に繋がるものと考えております」としたうえで、「鉄道事業を取り巻く環境も大きく変化していることから、引き続き慎重に検討をしていきたいと考えています」(広報部)と話します。
 
 一方、東武日光線から栗橋駅経由での羽田空港アクセス線との相互直通運転については、「現時点において具体的な検討は行っていません。事業環境を慎重に見極め、必要に応じ検討をしていきたいと考えています」(同)としています。

 また車両に関しては「500系車両(リバティ)・N100系車両(スペーシアX)のいずれも、現行の100系車両(スペーシア)と同様、JR線に対応した保安装置を搭載する改造を行うことで、技術的にはJR線へ乗り入れることは可能」と回答。ただ、現時点でそのような計画はなく、具体的な検討も行っていないとしています。
 
 JR東日本は「具体的な輸送体系やダイヤは未定であり、様々な可能性を含めて今後検討していきます」と話します。
 
 現時点では具体化にまでは至っていませんが、果たして今後、両毛エリアや東武日光・新鹿沼方面から羽田空港へ向かう直通列車は実現するのか、気になるところです。