(図:東大カルペ・ディエム作成)

英国数や、理科に社会。学校で学んだことは、社会人になってからどのように役立つのでしょうか。『読んだら勉強したくなる東大生の学び方』を上梓する東大カルペ・ディエムの西岡壱誠さんが、数学を例に、学ぶことの意義についてお話しします。

騙されやすい「おかしなグラフ」

「なんで数学なんて勉強しなきゃならないの?」と子どものときに考えたことのある人は多いと思います。

数学の勉強で挫折する人は「二次関数なんて将来なんの役にも立たない」「電卓を使えばいいじゃないか」と考えてしまうことも多いです。

親御さんも、子どもから「なんで数学を勉強しなきゃならないんだ!」と言われて答えに困ってしまう場合が多いのではないでしょうか。

そんな中で、僕たち東大生が考える「数学を勉強する意義」は、「騙されないため」というものです。大人になってから簡単に人に騙されないようにするためには、算数や数学の素養が不可欠だから勉強するべきだ、ということです。

前回の「"数学嫌いの子"も納得する「数学勉強する意義」」の記事でも「数学を勉強していないと騙されてしまうグラフ」を紹介しました。今回もみなさんに、「騙されやすいおかしなグラフ」を紹介したいと思います。

こちらのグラフをご覧ください。

※外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

このグラフを見て、みなさんは違和感を持つことができるでしょうか?一見すると、普通の棒グラフですよね。


(図:東大カルペ・ディエム作成)

これは、とあるアンケートの国際的な比較を示したグラフです。このグラフを作った人が示したかったのは、「ある問いに対して、『そう思う』と答えたC国の人の割合が、A国やB国の3〜4倍である」ということでしょう。

さて、みなさんはこのグラフ、正しいと思いますか?

たしかに、調査結果の数字で言えば、A国の4.3%、B国の5.7%に比べると、C国の15.9%は、「3〜4倍」であると言えます。しかし、ここで注意しなければならないのは、それでも約16%しかないということです。


(図:東大カルペ・ディエム作成)

残りの約84%は「そう思わない」と回答しており、「そう思う」は少数派の意見であることがわかります。

グラフにわざと加工がされている

このグラフは、「そう思う」が大多数であるかのように、わざと「加工」がしてあります。どこに加工がされているのか、わかりますか?

答えを言うと、これはグラフの左側があえて消されています。グラフの軸を見てみると、一番左の数字が「80%」となっており、もっと左側にあるはずの0%〜80%分の「そう思わない」の部分が省略されています。80%以上の部分だけをクローズアップして、大きくしているわけです。

では試しに、軸の一番左を「0%」にしたグラフも見てみましょう。このようになります。


(図:東大カルペ・ディエム作成)

先ほどと同じデータの、左側を表示した全体のグラフです。どうでしょうか?このグラフだと、0%からスタートしています。

こうすると、C国の「そう思う」と考える人の数がかなり少数派であることがわかりますよね。さっきはあんなに大きく見えたのに、このグラフだと少数派になってしまいます。

このように、軸のスケールや、グラフの一部分を切り取ることによって、印象が大きく変わってしまうわけです。小学校で習う棒グラフですが、グラフ全体の大きさが重要になることを理解していないと、簡単に騙されてしまいます。

もう1つ、「この問いに対して、『そう思う』と答えた人の割合が、C国はA国やB国の3〜4倍である」とは言い切れない側面があります。

それは、パーセンテージの掛け算をしているという点です。「%」というのは、「分数で表した数×100」のことを表しています。95%がNOだったというのは、「100人いたら95人がNOと答える」ということを表しているわけです。

今回の調査は、母数がわかっていません。仮に200人に調査したなら190人が、1000人に調査したなら950人がNOと言っているから、95%と表現されていることでしょう。

でもこの場合は、何人に調査したデータなのかはわかりません。「A国には賛成の人が3000人いて、B国には賛成の人が2000人いて、C国には賛成の人が8000人なので、C国には賛成の人がA・B国の3〜4倍いると言える」ということであればわかりますが、ここでは具体的な人数は示されていません。

どの属性に聞いたかでも調査内容は変わる


また、今回は「A国の人」「B国の人」「C国の人」に調査しているということが明らかになっていますが、A国の人の中にもいろんな人がいるでしょう。若い人もいれば、高齢者もいるでしょう。もしかしたら、「A国には若者に話を聞いたけれど、C国には高齢者に話を聞いている」という可能性もあります。

いかがでしょうか?今回のグラフのように、頭を使って考えていないと、よく考えずに「こうなんじゃないか」と考えてしまいがちです。

しっかりと算数・数学の勉強をして、騙されないように意識してみてください。

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)