「アンプレアルスロー2」を着用する河村勇輝(アシックス提供)

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◆NBA グリズリーズ108―128ロケッツ(25日、テキサス州ヒューストン=トヨタセンター)

 NBAグリズリーズの河村勇輝(23)が25日、敵地ヒューストンでのロケッツ戦に途中出場。田臥勇太、渡辺雄太、八村塁に続き日本人4人目のNBAデビューを果たした。米留学経験なく、Bリーグ出身では初の快挙で、日本バスケ界に新たな歴史を刻んだ。3分34秒プレーして、1アシスト。チームは108―128で敗れた。

 今季も約500人のNBA選手がいる中、たった一人、河村だけが持っているものがある。日本のメーカー「アシックス」のバスケットシューズだ。10年以上、同社のシューズを履くNBA選手はいなかったが、今季は河村とともに海を渡り、世界最高峰で“再デビュー”。プレシーズンマッチから注目を集め、大きな話題になった。シンボルである「アシックスストライプ」が今、NBAのコートで輝きを放っている。

 モデルは「アンプレアルスロー2」。開発期間は約2年。シューズのコンセプトは「イヌワシのかぎ爪」。ワシの一種である「イヌワシ」は森の王者と言われ、体は小さいが非常に俊敏で、時には時速200キロ以上で獲物を捕まえる。チームプレーで狩りをすることもあり、河村のプレースタイルと重なったことから、デザインに落とし込んだ。本人も「面白い。めっちゃいいですね!」と伝えた時は、大満足の様子だったという。

 鋭い切り返しを生み出すのは「サイドウォール」と呼ばれる外側についた高硬度のクッション材で、スピードを吸収し、パワーロスなく方向転換が可能。また、河村からの要望でフィット性を高めるため、足の甲の部分に、ゆっくり引っ張ると伸び、瞬間的に引っ張ると止まる特殊な素材を使用。どんな場面でも足を包み込み、戦う河村を支えている。

 足首が出るローカットは、可動域が広がり、全方向に動かしやすく河村自身の強いこだわり。またシューズの底裏には「×」の形で溝が掘られおり、ソールがどの方向にも曲がりやすくなっている。

 河村のモデルは超人気で、パリ五輪では開幕前で在庫がほぼゼロになった。担当者の案浦萌さんは「通常の3倍くらいの速さで売れる」。子どもから大学生まで、また台湾や中国から問い合わせが入ることも。幅広いファンの姿を目にし、すさまじい影響力を肌で感じているという。

 シューズの開発を通し、河村と関わる中では「(携わる人たちは)いつか行くだろうと感じていたと思う。すごく志の高い選手」と語る。白基調のシンプル好きな河村は今回、今後発売予定の新色シューズとともに海外挑戦へ。そして唯一の“相棒”とともに、夢舞台に立った。