本格的な「うつ病」になってしまうことも…職場で精神の健康を害すると発症する危険な「9つの症候群」

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日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。

『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。

本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。

さまざまな症候群

職場で精神の健康を害すると、まともに業務を続けることができなくなり、社会的な責任が果たせなくなります。精神保健学ではその状態が、下記のごとくさまざまな症候群として分類されています。

●燃え尽き症候群

仕事に使命感を抱きすぎて、精神的なエネルギーを使い果たし、心身が極度の疲労に陥る状態です。理想に燃えた医者や看護師、教師、ケースワーカーなど、人のために尽くす職種に多いとされます。これは善意に突き動かされるためで、体力、精神力の限界まで頑張ったにもかかわらず、思うような結果が出ないとき、一気にダウンしてしまうのです。

金儲けが目的の職種では、少ないように思われます。金儲けで燃え尽きるのは、バカバカしいという無意識のブレーキが働くからではないでしょうか。

●途中下車症候群

こんなところで働くのはイヤだとばかり、一年以内に仕事をやめてしまう状態です。仕事での挫折や、仕事の内容が気にくわない、人間関係でつまずいたなど、理由はさまざまです。いわゆるヤメ癖ですが、今は転職自由の時代ですから、キャリアアップのための転職との見極めがむずかしくなります。自分ではキャリアアップと思い込んでいるけれど、実は途中下車症候群という人も少なくありません。

●無断欠勤症候群

仕事がうまくいかなかったり、上司の叱責に傷ついたり、会社の方針に反発したりして、届けを出さずに欠勤する状態です。

事後であっても、欠勤には届けを出すのが社会人として最低限のルールですが、無断欠勤症候群は翌日、または数日後に、平気な顔で出勤したりもします。最低限のルールを守らないということは、気に入らないルールはすべて無視するということで、当然、社会からは受け入れられません。

●無気力症候群

アパシーシンドロームともいわれますが、意欲や自発性が低下し、感情の起伏が減り、周囲への関心もなくなる状態です。

もともとは、過酷な受験を乗り越えて合格した大学生が、入学後一ヵ月ほどで無気力になる「五月病」を指していましたが、厳しい就活をくぐり抜けた新社会人や、仕事の強いストレスにさらされた社会人にも見られます。

●出社拒否症候群

会社に行きたくない、行く気力が湧かない、出社しようとすると吐き気や腹痛に襲われるなど、子どもの登校拒否と同じような反応で、出社が困難になる状態です。

無断欠勤症候群が比較的若い世代に多いのに対し、出社拒否症候群は三十代から五十代前半の男性に多いとされます。

●サザエさん症候群

日曜日の午後六時半から午後七時に、長年放映されているアニメ『サザエさん』にちなんだ名称で、日曜日の夕方になると、翌日からはじまる仕事の日々を思って憂うつになる状態を指します。ひどい場合は吐き気や腹痛、動悸や不眠など心身の症状を伴います。

日本人だけの現象ではなく、海外でも「サンデーナイトブルー」とか、「ブルーマンデーシンドローム」などと称されます。

●サンドイッチ症候群

中間管理職に発症しやすいうつ状態で、上司と部下の板挟みになることのストレスから発症します。横暴で要求過多の上司と、反抗的で使えない部下などにはさまれると危険です。症状としては、慢性的な疲労感や不眠、動悸やめまい、肩凝り、頭痛や血圧上昇などが起こります。

中間管理職ばかりでなく、顧客対応などで、理解のない会社とわがままな顧客の板挟みになって発症する場合もあります。

いずれもまじめで優しく、気の弱いタイプに発症しやすいのは想像にかたくないでしょう。

●仕事依存症候群

ワーカホリック、仕事中毒などとも称されますが、仕事に熱中しすぎて、家庭や友人との付き合い、自分の健康などを疎かにする状態です。

仕事に熱中するのは、よいことだという感覚があるため、自覚や発見が遅れ、家庭内不和や友人との関係悪化、過食や不眠、高血圧、アルコール依存をきたす場合があります。

さらに思うような結果を出せないと、燃え尽き症候群に移行したり、本格的なうつ病を発症したりもします。

●飛行機雲症候群

飛行機の後ろにできる飛行機雲を見るように、自分の過去ばかり振り返って後悔し、前向きな気持ちになれない状態です。

それまでがむしゃらに働いてきた人が、ふとしたことで人生の意味や、頑張る理由に疑問を感じたときに起こります。答えが見つからず、それ以上、前に進めなくなってしまうのです。

人生の意味は人それぞれで、確定的なものなどあってないようなものですし、頑張る理由は、出世したいとか、認められたいとか、お金を儲けたいなど、下世話なものがほとんどです。世のため人のために頑張るという人も、結局は自分の満足を求めている点では、その他の欲望と本質は同じです。そういう現実を受け入れられず、普遍的なものや、理想を求めるので、戸惑ったり人生に空しさを感じたりするのでしょう。

あまり生まじめすぎるのもよくないようです。

さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。

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