菊花賞を制したアーバンシックとガッツポーズをするルメール(撮影・石湯恒介)

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 「菊花賞・G1」(20日、京都)

 2番人気のアーバンシックが最後の1冠を射止め、G1初制覇を飾った。クリストフ・ルメール騎手(45)=栗東・フリー=は秋華賞に続く2週連続のG1制覇を達成し、菊花賞は昨年のドゥレッツァに続いて2年連続4勝目。管理する武井亮調教師(43)=美浦=にとっては開業11年目にしてJRA・G1初勝利。2着に4番人気のヘデントール、3着に7番人気のアドマイヤテラが入り、ダービーとの2冠を狙った1番人気のダノンデサイルは6着に終わった。

 円熟味を増した名手の手綱さばきが今週も淀でさえ渡った。大歓声に湧くゴール前、ルメールの駆るアーバンシックを阻むものは一頭もいない。傾いた西日に照らされたターフの上で先頭に立った人馬は、心地よい秋風に押されるように1着でゴール。欲しかったクラシックのタイトルを最終戦で手にした。

 ゴール後に派手なガッツポーズで喜びを表現した鞍上は、先週のチェルヴィニアでの秋華賞Vから立て続けの大仕事。「2週連続G1を勝てた。すごくうれしい」と満面に笑みを浮かべる。騎手の腕がものを言う長丁場。例年になく隊列がめまぐるしく入れ替わった今年はなおさらだろう。

 「3000メートルで馬にプレッシャーがかかる。1周目は優しく乗って、2周目からポジションアップを狙った」。リズムを重視して後方からじっくり運ぶと、折り合いに苦労する他馬を尻目に2周目からスムーズに位置を上げ、向正面では先団の後ろへ。4角坂下からロングスパートを仕掛けると、「馬の加速を感じることができた」と目標に置いたアドマイヤテラを残り200メートルでパス。ここで勝負は決した。

 ルメールにとっては昨年のドゥレッツァに続く連覇。今回の出走メンバー中4頭は前走で自らが手綱を握っていたが、「その中でアーバンシックを選んだ。勝つためにはタフな馬が必要で、彼は春から重賞でも戦ってきている」と明かす。そして「プレッシャーがあった」としつつも、「パドックで見て自信があった」と状態が万全なら負ける気はしなかった。

 管理する武井師にとってはこれがJRA・G1初勝利。「今まで勝ち切れなかったので、すごくうれしい」と喜びはひとしおだ。戦前は外枠からの発走に鞍上が不安を吐露していたというが、「どうせ完璧に乗るんでしょうと思っていた」と、冗談交じりに話す言葉にも絶対的な信頼があったことが伺える。対する鞍上も「G1初勝利ですか?僕は50回以上勝っている」と笑顔で軽くあおりつつ、「これからたくさん勝てると思うよ」と若きトレーナーの未来に太鼓判を押した。

 今後のプランは未定ながら「今のパフォーマンスは世代トップクラスの力。他の世代とやっても負けるポテンシャルではない」と言い切る武井師。馬名通り“洗練された”走りで世代を制圧した今なら、誰が相手でも引けを取らない。