サポーターからの声援に応える鬼木監督。試合前には笑顔も見せた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1第34節]川崎 1−1 G大阪/10月18日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 ルヴァンカップの準決勝で新潟に2試合合計スコア1−6で敗れ、今季の無冠が決定した川崎が10月16日に発表したのが、2017年から8年指揮を執り、悲願のリーグ初制覇を含めた7つのタイトルを川崎にもたらした鬼木達監督の今季限りでの退任だった。

 様々な葛藤、想いが生じた決定から2日。指揮官から自らの去就とピッチでの戦いは切り離して欲しいと呼びかけられた川崎は、ホームでG大阪と対戦したが、やはり気持ちを整理し切れていない部分があったのか、7分には早々に先制点を奪われた。

 どこか淡白な展開が続くなか、68分に鬼木監督は4枚替えを決断。すると投入された3人が仕事を果たす。家長昭博のパスを相手ペナルティエリア左で受けた遠野大弥がクロス。DFに競り勝ってヘッドでネットを揺らしたのは、鬼木監督と苦楽をともにしてきた、魂のストライカー、小林悠だった。
【動画】川崎の小林のゴール
 それでも小林は勝てなかったことを悔やむ。

「個人的には今季はタイトルがなくなって、オニさんの退任が決まって、モチベーション的にも本当に難しい状況でしたが、正直オニさんとやれる残りの試合をどう戦うかというメンタルでやるのが、僕にとっては良いモチベーションになると思うので、少しでも多くの勝利を共有したいです。だからこそ勝ちたかった」

“オニさん”と勝利を。それはチームとして共有していた想いだ。同点弾をアシストした遠野も語る。

「ひとつでも多く勝ちを。オニさんのために、みんな戦っていましたし、なんて言うんですかね、気持ちを込めてみんなやっていました」

 一方で鬼木監督がチームにもたらしてきたモノは大きすぎるからこそ、頭をすべて整理するのが難しいのは当然である。キャプテンの脇坂泰斗も飾らない想いを口にする。

「ここで崩れてしまうのは簡単なのですが、残りの少ない試合はACLや来年につながる戦いで、ひとつも無駄にできない試合が続くので、勝ち切っていきたいです。

 頭では切り離すのは分かっていますが、僕自身オニさんと深く関わらせてもらい、オニさんがいなかったら、今の僕は絶対にいないので、いろいろ思うことはありますが、残りの試合、オニさんとひとつでも多くの勝利を共有したい、キャプテンとしてそうやって試合に入りました」

 そしてこうも語っていた。

「正直、まだ整理がついていないというか...。そういう心境です。正直まだ整理がついていないです」

 鬼木体制で戦えるのは、リーグ戦の5試合(悪天候で延期になった浦和戦は後半45分を戦う)とACLエリートの4試合。様々な願いを込めて川崎が、どんな試合を見せてくれるのか、注目である。
  
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)