「教科書に下線を引く」は単なる遊び。16歳で東大に合格した“天才”が示す3つの効率的な勉強法

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韓国で育ち、16歳で東京大学に合格。学生としては初めて「学力」だけで日本の永住権を取得した東大AI博士・カリスさん。

子供の頃は家庭内暴力といじめに悩み、中学校で不登校に。高校も進学していないなど、つらい人生を送っていたカリスさんがどのような思考で“成功者”となったのか。

著書『誰でも“天才になる”方法』(扶桑社)から、学校にも予備校にも行かずに編み出した独自の勉強法について一部抜粋・再編集して紹介する。

科学的に間違った勉強法はやめる

非効率的な勉強法とは、惰性に身を委ねた「怠惰な勉強法」を指す。

勉強した感を出すこと自体が目的と化してしまっている人はとっても多い。

以下はその典型例と言えよう。

(1)テキストをひたすら何度も読む
(2)下線を引いたりハイライトする
(3)ノートを取る

これらは全て、単なる作業に過ぎない。何気なくやっている人は多いが、勉強法の比較実験で非効率性が露呈するなど、科学的に強く否定されている。

一つずつ解説していこう。

 

(1)テキストをひたすら何度も読む
テキストを延々と何度も読み続ける行為は、2つの構造的欠陥があるため、勉強効率が非常に悪い。

まず、テキスト再読は「曖昧な内容の理解度向上」と「既知の内容の単なる復習」に大別できるが、惰性的な作業である後者の占める割合が大きい。

さらに、再読を繰り返す中で、「Aの次にはB。Bの次にはC」というふうに、内容そのものではなくテキスト上の順序を覚えがちなので、理解度の低い箇所に気づきにくい。

「テキストに下線」もやりがち

(2)下線を引いたりハイライトする
カラフルなペンで教科書や参考書を一生懸命にデコレーションする行為は、単なる遊びだ。下線を引いたりハイライトしたところで、内容が自分の頭に入るわけではない。

(3)ノートを取る
意図を持たずにノートを取る行為は、不毛である。ノートを取ったところで、教科書や参考書の劣化版を作っているに過ぎないからだ。

大事な箇所だけ取捨選択してメモするのは「あり」だが、何も考えずに惰性的にノートを取るのは「なし」だろう。

「目的を持たない人は、やがては零落する。全く目的がないぐらいなら、邪悪な目的でもある方がマシである」―トーマス・カーライル(英国の評論家・歴史家)

3つの科学的勉強法を駆使する

効率的な勉強法とは、冷静さと積極性に溢れた「勤勉な勉強法」を指す。意味のある努力は、ほぼ必ず報われる。

その典型例を次に示す。

(1)勉強する「前」に模擬試験を行う
(2)間隔を空けて練習と模擬試験を繰り返す
(3)質問形式でメモする

これらは全て、勉強である。直観に反するが、科学的には理にかなっている。

一つずつ解説していこう。

 

(1)勉強する「前」に模擬試験を行う
勉強する前に過去問を解くのは、一見理不尽に思えるが、2つの理由で勉強効率が非常に高い。

まず、何も知らない状態で過去問を10〜20年分解けば、当然間違えまくるが、試験に出る内容への感度が非常に高まるので、試験に出そうな内容だけ勉強できるようになり、暗記に必要な労力が3割程度に減る。

さらに、脳科学には「ハイパーコレクション」というものがあり、人間の脳は間違えた事柄を強く記憶するので、過去問を全然解けずメンタル的にしんどい思いをするのは、理にかなっている。

たとえば、「オーストラリアの首都はどこ?」という質問に「シドニー」と間違えて答えた記憶がある人は、恥という「記憶のトリガー」があるので、正解である「キャンベラ」を長期記憶として保ちやすい。

だから問題を解くときは、答えや解き方がパッとわからなくても、すぐ解説を見たり、人に聞いたりせず、十分に悩んでから答え合わせをする癖をつけよう。

キーワードは「想起間隔」と「練習」

(2)間隔を空けて練習と模擬試験を繰り返す
忘れそうなころに積極的に思い出す「想起学習」を行うと、短期記憶は長期記憶に移行する。想起学習には、模擬試験だけでなく、想起間隔と練習も重要である。

●想起間隔:
2〜3日後・1週間後・1か月後というふうに徐々に想起間隔を延ばしていくと、忘れそうなころにちょうど思い出せる。最適な想起間隔は、記憶を保持したい期間によって異なり、長い保持期間ほど長い想起間隔を要する。思い出すべきタイミングにアラートしてくれる、フラッシュカードのアプリを利用するのも効果的だ(例:Anki)。

 

●練習:
テキストを再読する代わりに、自分でテキストを作る。概念や単元名などのキーワードを見て、活用を意識しながら、自分の言葉で説明してみる。

完全な文章ではなく、箇条書きやメモリーツリー形式で殴り書きする。うまく説明できない箇所は⾚字でハイライトしておいて、後から覚え直す。

●自作テキストにおける、キーワードと説明の例
(a)英語の⽂法(例:関係代名詞)→概要・項⽬・⽤法・例⽂を書く
(b)数学の概念(例:ユークリッドの互除法)→定義・記号・証明・練習問題を書く
(c)国語の単語(例:よく出る古文の動詞)→単語とその意味を枚挙する
(d)化学の化合物(例:ベンゼンの反応)→性質・反応例・用途を書く
(e)心理学の用語(例:カクテルパーティー効果)→概要・理論・応用を書く

(3)質問形式でメモする
授業や自習中に大事だと思った箇所を質問形式でメモすると、効率の良い想起学習ができる。テスト直前などにメモを読み返し、解答できるか試せば、弱点を埋められるからだ。

たとえば、「縄文時代の人の平均身長は?」というクイズを作って、後で「男:158cm、女:149cm」と答えられなかったら、覚え直せばいい。

「科学は前進するが、人間は変わらない」― クロード・ベルナール(『随想』より)

カリス(東大AI博士)
1993年、韓国生まれ。大阪大学・招へい准教授。長崎大学・特任准教授。博士(情報理工学/東京大学)。医療AI/創薬AI研究開発にすぐ使える医用画像データプラットフォームを手がけるカリスト株式会社を2022年6月27日に起業。YouTubeチャンネル『カリス 東大AI博士』にて、科学的勉強法・科学的思考法・AIなどについて配信