晩秋だが台風襲来はある!10月も統計上ではまだ台風シーズン 過去には11月に台風上陸や竜巻被害の発生も
10月中旬になり、朝晩の空気が冷たくなって、冬への季節の歩みを感じる。ただ、10月も台風シーズンであり、まだ油断はできない。
10月〜11月も台風や竜巻に注意
気象庁によると、台風の平年値(1991年〜2020年の30年平均)は、10月が発生数3.4、接近数1.7、上陸数0.3となっている。統計を見ると、10月はまだ台風シーズンと言える。11月の発生数は2.2、接近数0.5であり、過去30年は11月の台風上陸はない。
また、台風だけではなく、竜巻の発生も10月、11月は比較的多い。寒冷前線通過時に北からの強い寒気が入ることや、台風からの湿った空気の影響で大気の状態が不安定となりやすいことなどで起こり得る。
気象庁のデータを見ると、竜巻の月別発生確認数(1991〜2024年の合計)は、以下のようになっており、年間でも7月から11月は竜巻の多い時期だ。
7月: 51
8月: 85
9月:125
10月: 81
11月: 49
過去には、10月から11月にかけても台風や竜巻などの気象災害に見舞われたことがあり、油断せずに対策をしておきたい。
台風からの湿った空気で大雨 令和元年台風21号(2019年10月25日)
2019年(令和元年) 10月、これから取り上げる台風21号とは別に、10月23日に東シナ海で発生した低気圧が、24日から26日にかけて、西日本、東日本、北日本の太平洋沿岸に沿って進んだ。この低気圧に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んでいた。
さらに、日本の東海上を北上した台風21号が、台風周辺の湿った空気を持ち込み、大気の状態が非常に不安定となった。
このため、前出の低気圧と、台風21号がもたらした湿った空気の影響で、関東地方と東北地方の太平洋側を中心に広い範囲で総降水量が100mmを超える大雨となった。特に千葉県や福島県では総降水量が200mmを超え、半日ほどで平年の10月1か月分の降水量を上回る大雨を記録。両県では、台風15号と台風19号による被害の復旧途上だった。
この大雨により、千葉県を中心に死者13人、負傷者10人以上、浸水・損壊家屋4000棟を超える被害となる。死者の約半数は、車での避難中に車体の水没や川に流されたことにより亡くなった。
また、多数の河川で氾濫、各地で土砂崩れや浸水が発生し、住家被害だけではなく、停電や断水などのライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害も発生した。
台風21号は、日本に接近する前から勢力を維持したまま北上することが予想されたため、気象庁からも早い段階で「大雨警報」や「暴風警報」を発表しており、自治体も避難指示や勧告を発令するなど、事前の対策が進められていた。しかし、台風がもたらした豪雨により、河川の氾濫や土砂災害が起こり、特に千葉県や茨城県、福島県などで甚大な被害に見舞われた。
10月でも、このような大きな被害をもたらす台風が襲来することもあるため、事前の対策や避難の仕方について、改めて重要であると認識された。
季節外れの上陸台風 平成2年台風28号(1990年11月30日)
1990年(平成2年)11月30日14時頃、台風28号が和歌山県白浜町の南に上陸し、本州を縦断。台風の上陸日時としては、記録が残っている1951年(昭和26年)以降で最も遅い。
台風は上陸して間もなく、温帯低気圧に変わった。しかし、この台風の影響によって広範囲で大雨や暴風となり、全国で死者・行方不明者4人、家屋全半壊160棟以上の被害が発生。
台風の場合、気象庁からの警報や最新の台風情報などに基づいて、避難計画を立てることが重要だ。特に河川の近くに住んでいる場合や、土砂災害の危険がある地域では、自治体からの避難指示を迅速に受け入れ、家族や近隣住民との連携を図ることも大切になってくる。
台風は12月も発生 フィリピンに甚大な被害
11月に台風が発生するというのは、季節的に遅いイメージがあるかもしれないが、実は12月を含む冬季にも台風が発生し、それは特に珍しいことではない。12月の台風発生数(1991年から2020年の30年平均)は1.0個だ。日本への上陸はないものの、フィリピンでは12月も台風による甚大な被害に見舞われている。
2017年12月22日から24日にかけて、フィリピン南部ミンダナオ島付近を台風27号が通過。大雨によって各地で洪水や地滑りが発生。死者は200人を超え、140人以上が行方不明となった。特にミンダナオ島にあるサンボアンガ半島の多くの地域で電気や通信網が寸断され、一時孤立状態となった。
その4年後、2021年(令和3年)12月16日から17日にかけて、台風22号がフィリピンの中南部地域を襲った。このため、大雨によりフィリピンの中部や南部を中心に洪水や地滑りが発生した。
この台風による大雨や洪水、強風の被害は複数の島々の広範囲に及び、その全容が判明したのは被災から数週間後のことであった。
400人以上が亡くなり、13万人以上が避難生活を余儀なくされた。家屋の被害は200万棟近くにのぼり、電気や水道、通信などのライフライン、学校や病院などの公共施設、空港や港、農地など甚大な被害を受けた。
寒冷前線にも注意 北海道佐呂間町竜巻災害(2006年11月7日)
晩秋に起こる気象災害の1つに竜巻がある。2006年11月、北海道の佐呂間町で発生した竜巻は、日本国内での竜巻災害の中でも特に甚大な被害をもたらした。
この竜巻は、寒冷前線が通過する際に発生し、9人の死者を出す大惨事となった。建物が倒壊し、大型トラックが吹き飛ばされるなど、竜巻の威力がいかに凄まじいかを示す出来事だった。
佐呂間町の事例では、竜巻が発生する前兆となる雲の動きや突風などがあったものの、発生から被害が広がるまでが非常に短時間であったため、事前の避難や対策が間に合わなかったとされている。
竜巻は短時間で発生し、激しい突風が狭い範囲を襲うため、予測が難しい。このため、日常的な備えが重要になってくる。竜巻が発生するような発達した積乱雲の近づく兆しを見逃さないようにしよう。
また、気象庁が発表する「竜巻注意情報」をこまめにチェックし、竜巻の発生が予想される場合は、外出を控えるか、早めに頑丈な建物に避難するなどの対策をしよう。家の周りに飛散しやすい物がある場合は、あらかじめ固定したり、屋内にしまったりしておくことも必要だ。
冬が近づいている晩秋といえども、台風による暴風や大雨、竜巻などの激しい気象現象が発生し得ることは、過去の気象災害から見ても明確である。また、このような災害は個々の対策だけでは防ぎきれないことが多いため、地域全体での協力体制や、国や自治体からの支援が不可欠だ。
そして、気象災害は毎年のように発生するため、常に最新の情報を把握し、適切な行動を取ることで、被害を最小限に抑えることができる。
【執筆:日本気象協会】