1人で暮らす高齢者には、さまざまな支援が必要だ。公的制度から民間サービス、近隣の人との助け合いまで、生活事情に合った多様な仕組みを充実させたい。

 単身の高齢者は2020年に672万人を数え、40年には896万人に増える見通しだ。65歳以上の単身世帯が全世帯の2割近くを占めるという予測もある。

 配偶者や子どもと同居している人に比べ、相談相手が少なく、孤立しがちだ。身寄りがない人もいる。身体機能が衰えると、買い物や掃除など普段の家事でも困り事が増えていく。

 こうした日常生活の支援、身元保証、死後の対応を民間事業者が担うケースが増えている。

 身元保証サービスは、身寄りのない高齢者が入院や介護施設入所の際、病院や施設の求めに応じて保証人を有償で引き受ける。死後の葬送に関する事務手続きを代行する事業者もある。

 需要は増えているが監督官庁はなく、サービスの質の確保が課題だ。

 全国の消費生活センターに寄せられた身元保証サービスなどの相談件数は、20年度の114件から23年度は3倍を超える355件へと急増している。「勧められるままにサービスを追加したら高額契約になった」といった金銭トラブルの報告もあった。

 このため、政府は関連事業者向けの運営指針を6月に策定した。入会金や預託金を明確にし、利用者の判断能力が低下した場合の対応を書面で説明するなど、留意すべき点をまとめている。

 法的拘束力や罰則がないとはいえ、事業者の社会的役割は大きい。適正な運営を心がけてもらいたい。

 単身高齢者が頼る支援サービスは居住地域や経済力によって異なる。有償サービスを利用できる人は限られる。安価なサービスを住民同士の協力で提供している地域にも着目したい。

 大分県の山あいにある玖珠町(人口約1万4千人)には調理や掃除、外出の付き添いなどを高齢の住民同士で助け合う仕組みがある。社会福祉協議会が主導して3地区に導入した。

 利用料は30分の家事支援で300〜500円に抑えている。サービスを利用する高齢者が、可能な範囲で支援する側に回ることもある。運営しているのは住民だ。

 玖珠町でも人口が減るにつれ、住民のつながりが弱くなり、以前のように隣近所に助けを求めづらくなっていた。サービスを有料にしたことで気兼ねなく依頼でき、住民が交流するきっかけにもなっているという。代え難い効果ではないか。

 単身高齢者はますます増える。誰もがそうなる可能性がある。孤立を防ぎ、不安なく暮らせるように、生活する地域での助け合いに工夫を凝らしたい。