和田雅成×宮下貴浩×私オム 舞台『月農』インタビュー到着「観たことがない和田雅成を作り出したい」

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役者として多くの舞台、映像作品に出演し、数多くの舞台をプロデュースする宮下貴浩と、近年、注目の劇作家として原作やオリジナル作品のオファーが相次いでおり、公開前の舞台やドラマなどの映像作品も控えている私オム。そんな二人が、2018年からライフワークとして毎年オリジナル作品を上演する宮下貴浩×私オム プロデュース 第8回公演 舞台『月農』が2024年10月9日(水)からシアターサンモールで上演される。今回、主演を務めるのは和田雅成。プライベートでも深い親交があるという和田と宮下、私オムの3人が公演への想いを語るインタビューが到着した。

――「3人でやりたいね」と話していたことから企画がスタートしたと聞いています。

宮下:「やりたいね」とはずっと前から話していたのですが、なかなかタイミングが合わなくて。今回、こうしてやっと公演ができることが嬉しいです。

――公演が決まってからオムさんが脚本を書き始めたのですか?

オム:和田さんが決まって、和田雅成という人間を想像して、どういう世界に飛び込んでもらおうかなというところから創作しました。

――和田さんが演じる津久井は、田舎で自給自足をしている人物です。そうした設定はどういった発想から生まれたものですか?

オム:もともと田舎や畑を感じる話を書きたかったんです。和田さんに畑は似合わないからこそ、イメージの違う和田雅成と畑が合わさったら面白いのではないか。この美白の男をドロのなかにぶち込んで、ボロボロにしてみたい(笑)。そんな考えからこれだ、と。

――そうした脚本を読んで、和田さんはどんな感想を抱きましたか?

和田:オムくんって何を考えて生きているんだろうと気になりました(笑)。プライベートでは仲が良いですが、オムくんが1人でいる時にどういうことを考えているのか、普段の稽古場でどういう演出をするのかは分からないので、今回の作品を通してそれを知りたいです。稽古に入るのが楽しみです。

――そもそも、この三人の出会いというのはいつ頃なのですか?

和田:二人が知り合ったのは、何年前なの?

オム:2011年だから13年前。

宮下:さかのぼること13年前…そこから俺たちは始まった。

和田:ダサいな(笑)。やめよう、その話(笑)。

宮下:あはは(笑)。短く言ってしまうと、オムくんも最初、役者をやっていて、一緒の団体で活動していました。その団体が解散となってしまったので一緒にこの企画を始めたという流れです。僕と和田くんは、(宮下貴浩×私オム プロデュースの)第1回公演に出演してくれた安里勇哉くんがきっかけで、和田くんの作品を観に行かせていただいたのが最初です。

オム:僕は、スタッフの一員で入っていた現場に和田さんがいました。その時はほとんど会話もなく、同じ稽古場に一瞬いたというくらいでしたが、その後に宮下さんの家で手巻きをした時にもお会いして。

和田:コロナ前だったから、2019年くらいかな? 何がきっかけだったかは分からないけど、その会でオムくんと急に仲良くなったんだよね。

オム:それからはプライベートで飲んだり、ご飯食べたり、宮下さんの家で一緒にテレビゲームしたりしています。

――オムさんから見た和田さんは、最初は「尖っている」イメージだったとか?

オム:そうですね。でも「尖っている」というのはあくまでも仕事に向かう姿が、です。仕事に対するプライドの高さは今も変わらないと思いますが、友達として遊ぶという意味では尖っていると感じていたわけではないです。ただ、ちょっと気を遣うな、というくらいで(笑)。

宮下:手巻きに急に知らない人が来たら怒ったり(笑)。

オム:SNSで既読をつけて10秒くらいで返さないと「既読無視すんな」って(笑)。今、返信打っているから!

和田:これ、本気じゃないですからね? ボケとしてやってるのに、こうやって言うから、稽古入ったらできなくなる(笑)。

オム:あはは。そんな遊びができる距離感でお付き合いさせてもらっています(笑)。

――プライベートでも仲の良い3人が集まって作品を作ることになりますが、和田さんとの創作でどんなことを楽しみにしていますか?

オム:これまでは(和田の)完成したお芝居しか見ていないので、彼がどうやって作っていくのか楽しみです。僕は、一人でボソボソと言いながら作ってほしいなと思っています。そうやって稽古場にいるイメージがあって。自分のことは自分で理解しないとやりたくない人だと思うので、僕のイメージ通りだったらいいなと思っていますね。

――今回、和田さんが演じる津久井も、感情が内側に向いていく性格ですよね。それはオムさんが持っている和田さんのイメージがそうだということですか?

オム:勝手に本質はそうじゃないかなと思っています。遊んでいるときは全くそんなイメージはないですし、「何してんねん」と言って突っ込んでくれているんですが、でも無理してんのかなと。

和田:あはは。じゃあ、僕、今、無理してるんだ(笑)。

オム:家で1人でいる姿を、舞台上でオフィシャルとして引き出してやりたいと思っています。

和田:僕は、稽古場でみんなで肩を組んで作ろうと思います(笑)。でも、本質的には僕もネガティブなタイプだとは思います。自分と似ているのかは分からないですが、他のキャストの方たちとどういうキャッチボールをするかでも変わってくると思うので、稽古場でしっかりと作っていきたいと今は考えています。自分がただ駒になるだけだと意味がないと思うので、脚本、そしてオムくんの演出に寄り添いつつも自分がそこに立つ意味を見出しながら挑んでいきたいと思います。

――宮下さんから見た和田さんは?

宮下:和田くんの魅力は、やっぱり華とオーラがあること。今回は、和田雅成が真ん中にいるからこそ集まっていただけたキャストだと思います。一緒にお芝居をしていてもやっぱり違うものを感じますし、ゾクゾクさせてくれるものを持っているという印象です。和田くんが「床を舐めるような芝居」とよくおっしゃっているので、ぜひ今回はそんな役を生きて、心も体もグチャグチャになっていただきたいなと思います。僕も観たことがない和田さんの役なので、楽しみにしていただければと思います。

――今回、宮下さんは、和田さん演じる津久井に農作業を教え、田舎暮らしをサポートする大森を演じます。

宮下:今回は和田くんが座長で僕はそれをサポートする立場ですが、劇中でも同じように和田くんの演じる津久井を支える役柄なので、個人的には演じやすいのではないかと思っています。いい役をありがとうございます!

和田:(私オムの)宮下への愛を感じるよね。

――オムさんはお二人の関係をイメージされて書いた設定ですか?

オム:そうですね。1カ所だけ、きっと和田さんがしないようなことを、宮下さんが演じる大森にするシーンがあるので、そこを書いている時はすごく楽しかったですね。

――改めて、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

オム:これまで観たことがない和田雅成を作り出したいと思っていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

和田:お客さまに対してはもちろんですが、僕たちが集まって作る大切な公演になると思います。僕たちにとってもお客さまにとっても、光が差す作品になればいいなと思っておりますので、そうなれるように尽くします。

宮下:(すごく長く語ったが締めがうまくまとまらず諦めて)すっごく面白いので観に来てください!ピース!笑

インタビュー・撮影=嶋田真己