「障害者雇用率が高い会社」ランキングTOP100社

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(写真:pearlinheart/PIXTA)

2024年4月に障害者の法定雇用率が2.5%に引き上げられ、2026年度には2.7%となる方針が公表されている。法定雇用率の引き上げに伴い、企業の取り組みはどのように進むのか。

東洋経済では毎年、障害者雇用率ランキングを発表している。今回も『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2024年版掲載企業1714社のうち、2022年度に障害者を3人以上雇用している企業1198社を対象にランキングを行った。

なお、『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』2024年版には同ランキング上位800社まで掲載している。また、電子書籍『東洋経済CSRデータeBook2024 障害者雇用取り組み編』には、障害者雇用率だけでなく、特例子会社の有無、各社の障害者雇用への取り組み情報などを1653社について掲載している(企業により情報量に差はある)。ランキングと詳細情報を併せてご活用いただきたい。

トップ企業の障害者雇用率は16.6%


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ランキング1位は、雇用率が16.6%(雇用人数は35人、以下同様)のゼネラルパートナーズ。7年連続の1位となった。

障害者雇用のリーディングカンパニーとして、障害者向けの人材紹介や求人情報サービスを提供するほか、ソーシャルファーム事業として就労継続支援A型事業所の「アスタネ」を運営。「アスタネ」では、菌床シイタケの生産・販売を通じて経済的自立と安定した就業のサポートをするだけでなく、自立を促すことで一般企業への就職や復職を含む長期就労の実現を目指す。同社では、「アスタネ」を含むほぼ全部門で障害のある人が活躍し、複数人が管理職を担う。

2位は大東建託傘下の賃貸仲介専門会社のハウスコム。雇用率は16.07(21人)で上場企業ではトップだ。社内プロジェクトとして、「障害者共働プロジェクト」を発足。障害者と健常者がともにいきいきと働くことができる職場をつくることを目的とし、コミュニティサイトの作成や本社内におけるユニバーサル自動販売機の導入など、障害者に配慮した職場環境の構築、改善を行う。

3位は食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコ。雇用率は12.5%(365人)で特例子会社エフピコダックスを中心に、折箱容器の生産工場および使用済み容器の選別工場など、エフピコの基幹業務である「食品トレー容器の製造」と「リサイクル」の事業で障害者が活躍する。活躍の場の拡大として、グループ内で一般就労へのステップアップなど、グループでキャリア形成促進にも積極的に取り組む。

4位はリサイクル事業、医療・ヘルスケア事業、リユース事業、保育園事業など多角的に展開するジットグループで10.82%(48人、グループ4法人の合算値)。継続した障害者雇用と働きやすい環境整備のため、南アルプス市自立支援協議会の権利擁護部会と連携し、ジットグループ全体を対象とした研修会を実施。「合理的配慮」の提供に関連し、働く環境と日常の行動や言動を見直す機会を設け、よりよい環境構築に向けた取り組みを推進する。

5位はスマホゲーム、比較・情報サイト、ECを3本柱とする純粋持株会社のエイチームで8.87%(5人)。障害者雇用促進の一環で、ヘルスキーパーの登用として視覚障害者をマッサージ師として採用している。

ユニクロのファストリは1167人雇用

6位は搬送機器メーカーのキトーで7.03%(36人)。「障がい者と共にごく自然に働ける企業風土をつくり、さまざまな個性をもった方たちが働ける職場環境を構築する」という基本方針を掲げる。障害者雇用の5カ年計画を推進しており、雇用の定着を重視し、サポートできる範囲で実習受け入れから採用を行う。障害に合わせた職場環境の配慮など、誰もが働きやすい職場環境の構築に取り組む。

7位は樹脂発泡製品の専業大手、JSPで5.48%(47人、特例子会社JSPモールディングとの合算値)。JSPモールディングを中心に障害者雇用に取り組む。JSPモールディングでは、複数サポーターによる業務指導や、得意・不得意の把握、ジョブローテーションを実施することで、適材適所の配置を実現する。

8位は紳士服業界2位のAOKIホールディングスで4.95%(6人)。障害者雇用率5.0%を目標に掲げる。障害者が活躍する場として、全国に5カ所ある障害者雇用専門オフィスで店舗運営をサポートする業務を提供。持てる能力を発揮し、「働く喜び」や「生きがい」を実感できる環境整備にも積極的。

9位はユニクロを展開するファーストリテイリングで4.92%。雇用人数は1167人。障害者雇用率の目標として「1店舗1人以上の雇用」を掲げる。障害の種別(知的・身体・精神)を問わず雇用を推進する。日本だけでなく、グローバルでも障害者雇用を推進する。

10位は女性中心の下着のネット通販会社、白鳩で4.9%(7人)。京都府による障害者雇用推進認証企業(京都はあとふる企業)。他の従業員と同様に商品の梱包作業を担い、1人で作業を完結する。通常の業務プロセスの中に業務を組み込んでいることが雇用促進につながっている。

ランキング100位以内で人数が最多だったのは、9位にランクインしたファーストリテイリングで1167人であった。次いで、22位のしまむらの590人(3.82%)が続く。

また、800位以内で雇用人数が最多だったのは、日本郵政で7569人(2.42%)。次いで、同グループのかんぽ生命保険6435人(2.42%)、ヤマトホールディングス3154人(2.85%)、パーソルホールディングス2417人(2.56%)、イオン2019人(2.4%)が多かった。

2022年度の業種別の障害者雇用率を見ると、全体平均は2.2%(2022年度の障害者雇用率を開示している1396社が対象)で、2021年度の2.13%(対象1382社)から微増。詳細は『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』2024年版を参照してほしい。

平均雇用率が高い業種は?

対象社数が10社以上で平均雇用率が高い業種は、鉄鋼2.56%(17社)、パルプ・紙2.53%(10社)、小売業2.43%(101社)、食料品2.42%(54社)、銀行業2.42%(39社)、医薬品2.42%(28社)、陸運業2.41%(33社)、化学2.37%(113社)、電気・ガス業2.36%(14社)、非鉄金属2.31%(18社)など。2.5%を上回る業種は2業種だが、2.3%を上回る業種は10業種だった。2022年度の時点で、2024年4月以降の法定雇用率(2.5%)を上回る業種はまだ少ないようだ。

一方、企業数で見てみると、2022年度の時点で、企業の法定雇用率「2.3%」を達成している企業は1198社中751社で、2021年度の672社(対象1195社)から増加。「2.5%」を達成している企業は、1198社中425社だった。

「令和6年版障害者白書」によると、2023年6月1日時点における民間企業の雇用障害者数は、約64万2000人と20年連続で過去最高を更新。このうち、身体障害者は約36万人、知的障害者は約15万人、精神障害者は約13万人であり、とくに精神障害者の伸び率が大きかったようだ。

厚生労働省からは、2026年度には障害者の法定雇用率が2.7%となる方針が公表されている。単に数値を追うだけでなく、誰もが働きやすい環境とは何か、在り方も含めて達成されることが望ましいだろう。法定雇用率の引き上げに伴い、各社がどのような取り組みを進めていくのか、来年の動向にも注目したい。




(伊東 優 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)