日本最大級のピアノの祭典・みなとみらいピアノフェスティバル 2024がまもなく開催! 公演の魅力を聞く

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2024年10月18日(金)から20日(日)、そして11月9日(土)と10日(日)の全5日間にわたり、日本最大級のピアノ祭典『みなとみらいピアノフェスティバル 2024』が開催される。

2022年から3回目の開催を迎える本ピアノフェスティバルは、「横浜・みなとみらいを、本格的な音楽をもっと自由に楽しめる場所」にするというコンセプトのもと、最高峰の演奏家たちによるクラシック音楽を中心としたピアノの祭典だ。その初日となる公演が、10月18日、横浜みなとみらいホール・小ホールで行われる。それぞれが個性的で魅力的なプログラムの4公演は、各・約45分間、チケットは2,000円と手頃な価格となっており、本格的なクラシック音楽を気軽に楽しむことができる。

みなとみらいピアノフェスティバルの魅力、そして10月18日開催のホール公演について、フェスティバル実行事務局代表であり、Piascore株式会社の代表を務める小池宏幸氏に伺った。

――みなとみらいピアノフェスティバルとは、どんなイベントですか?

みなとみらいピアノフェスティバルは、「本格的なクラシック音楽を、横浜・みなとみらいで、もっと自由に楽しむ」をコンセプトにした、クラシック音楽中心のピアノコンサートです。2022年に初めて開催し、今年で3回目を迎えます。

フェスティバルは、複数の若手実力派ピアニストによるジョイントコンサートを軸に、ソロやピアノトリオなど、さまざまな編成の公演を展開しています。いずれも共通しているのは、ピアノを用いて本格的なクラシック音楽を届けるという点です。

このフェスティバルの主な目的のひとつに、「開放的な音楽体験の提供」があります。オープンスペースでの公演を中心に、クラシック音楽に馴染みのない方にもその魅力を楽しんでいただきたいと思っています。

――フェスティバルにはどんな思いが込められていますか?

このフェスティバルを通じて、素晴らしいピアノの演奏を、クラシックに馴染みのない大勢の方にも聴いていただきたいと考えています。演奏を届けるだけでなく、聴いた方が「いいピアニストに出会えた。また聴いてみたい」や、「あの素敵な曲は何だろう? 帰ったら調べてみよう」と感じて、何か新しい発見を持ち帰っていただけるようなコンサートにしたいと願っています。

そのため、オープンスペースでの公演を重視しています。ホール公演も大切ですが、クラシック音楽を広く普及させるためには、音楽が聴衆に近づいていく仕掛けが必要だと常々感じています。

――例年のフェスティバルと、今年の違いは何ですか?

今年の大きな違いは、ホールでの有料公演を取り入れたことです。

これまでオープンスペースでの公演を重視してきましたが、ホール公演では、より深いクラシック音楽の魅力を伝えることに挑戦したいと考えました。今回は、通常のリサイタル形式に比べて公演時間を短くし、その分チケット価格も抑えた形で実施しています。また、ホール公演では収益性も重視しており、様々な集客方法にも力を入れています。

また、小さなことですが、今年は各公演に名称をつけることにしました。公演ごとにテーマを設けることで、内容がより引き締まり、聴衆に興味を持ってもらいやすくなると思っています。名称は演奏者がつけることもあれば、私が考えることもあります。音楽の専門家ではない私にとっては難しい作業ですが、曲を知るきっかけになり、楽しみながら取り組んでいます。

――今年のホール公演の魅力は?

今年のホール公演は、個性豊かな4つの部による構成となっています。

第1部 「春はいけにえ。秋はピアフェス。ー「儀式」の再構築ー」(12:00開演)では、和田華音さんと川崎槙耶さんの若手ピアニスト2人による演奏が行われます。ストラヴィンスキー作曲の「春の祭典(ピアノ連弾版)」を披露します。和田さんと川崎さんは昨年のフェスティバルにも出演され、連弾による「魔王」(シューベルト)や「剣の舞」(ハチャトゥリアン)など、若さ溢れる華やかな演奏が好評を博しました。

今回の『春はいけにえ。秋はピアフェス。ー「儀式」の再構築ー』という一見奇妙なタイトルには、演奏会(=儀式)における音楽の聴き方や鑑賞の仕方を再考し、2人ならではの「春の祭典」を創り上げたいという意気込みが込められています。

全公演の中でもっとも予測不可能な公演であり、私も主催者としてドキドキしていますが、こだわりを持つ2人の演奏は、ライブならではの魅力が詰まっています。演奏時間が35分間というどっしりした作品ではありますが、最後まで楽しんでいただける内容となるでしょう。noteに掲載している和田さんと川崎さんのインタビュー記事(概要欄参照)もぜひご覧ください。

第2部 「愛を捧ぐ」(14:00開演)では、ピアニスト斎藤龍さんとヴァイオリニスト荒井章乃さんによる演奏が披露されます。斎藤さんと荒井さんは前回のフェスティバルにも出演しており、地元横浜に縁の深い演奏家です。横浜みなとみらいホールでの演奏回数も多く、お二人にとってまさにホームグラウンドのような場所です。

前回は、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番(第1楽章のみ)などが演奏されましたが、今回はフランクのヴァイオリン・ソナタとピアノソロ3曲が披露されます。フランクのヴァイオリン・ソナタは名曲中の名曲で、初めて聴く方も一瞬で心を奪われることでしょう。このソナタでは、ヴァイオリンの高音の美しいメロディーと、低音から高音まで幅広い音域を最大限に活用したピアノの豊かな音色が絶妙に絡み合い、また循環形式による構成が深い感動を呼び起こします。

斎藤さんは、前回のフェスティバルでベートーヴェンの月光ソナタ(全楽章)を演奏したこともあり、ベートーヴェン弾きとしてのイメージが強いかもしれません。しかし、今回はフランツ・リストの作品を取り上げ、ベートーヴェンの作品は一切演奏されません。ベテランの域に入りつつある斎藤さんと、何度も共演を重ねてきた荒井さんの新たな挑戦に注目です。こちらもインタビュー記事がございますので、ぜひご覧ください(概要欄参照)。

第3部 「若き才能の旋律」(17:00開演)は、ピアニスト古海行子さんのソロ公演です。古海さんは、2018年第4回高松国際ピアノコンクールで日本人初の優勝を果たし、2021年第18回ショパン国際ピアノコンクールのセミファイナリストとしても知られています。

私の周囲には、「インターネットで好きな作品の演奏を探していたら、古海さんの演奏が一番好みだった」という方が何人もいます。古海さんの魅力は、ショパン、シューベルト、リスト、ハイドン、ラフマニノフといった作曲家たちの作品を、時代を問わずオールマイティに表現できる点です。

今回の公演では、ショパン、ラフマニノフ、シューベルト、ラヴェルのそれぞれの作曲家が20代後半に作曲した作品が取り上げられます。古海さんが同世代の作曲家たちに共感を感じたのかもしれません。タイトルにある「若き才能の旋律」を存分に楽しめる公演となるでしょう。

ホール公演の最後を飾るのは、第4部 「広がる色彩、フランスのエスプリ」(19:00開演)です。ピアニストの黒岩航紀さん、ヴァイオリニストの小川恭子さん、チェリストの矢口里菜子さんが出演されます。黒岩さんと小川さんは、それぞれ2015年日本音楽コンクールのピアノとヴァイオリン部門で1位を受賞し、矢口さんは山形交響楽団の首席チェロ奏者を務めており、この豪華なトリオは、公演のフィナーレを飾るのにふさわしいものです。

黒岩さんは、2022年のフェスティバルや配信企画に出演され、Piascoreとの関わりが深いピアニストです。演奏だけでなく、選曲へのこだわりや、豊富な知見をもとにした公演でのトークでも多くのファンを魅了しています。音楽に対する真摯な姿勢を見せつつも、SNSでは家族思いの優しい夫・父親という一面を垣間見せるなど、ピアニストとしてだけでなく、人間としても尊敬される存在です。

今回取り上げるドビュッシーとラヴェルは、色彩感に溢れる作風で非常に人気の高い作曲家です。特にラヴェルのピアノ三重奏曲は、各楽器の音域や特性を最大限に引き出す意欲的な作品であり、演奏者に高度な技術を要求します。

今回の選曲は、私がこれまでに知っていた黒岩さんとは少し異なる雰囲気を感じさせ、新たな一面を披露してくれることを今から楽しみにしています。ぜひ皆さまも、パリ・オリンピックなどで話題のフランスのエスプリを、この公演を通じて感じ取っていただければと思います。

――今後のフェスティバルに向けた展望をお聞かせください。

みなとみらいピアノフェスティバルは、少しずつ規模を拡大してきました。将来的には、横浜を代表する音楽祭のひとつとなれるよう目指しています。そのためには、良質な音楽を提供し続ける努力が欠かせません。クラシック音楽に親しんでいる方はもちろん、まだあまり馴染みのない方々にも、フェスティバルの魅力を広く伝えていくことが必要だと考えています。

また、横浜の芸術文化とのコラボレーションも一層進めていきたいと考えています。今年はホール公演でその機会は多くありませんでしたが、オープンスペースでの公演では、さまざまなコラボレーションを予定しています。

現在、来年のフェスティバルに向けた準備も水面下で進行中です。どうぞご期待ください。