SNSで猛威を振るう「チン凸」 送り側はコミュニケーションのつもりだが......性別関係なく送られてくる「卑猥画像の恐怖」

写真拡大 (全4枚)

XやInstagramといったSNSは日常生活の中に溶け込み、仕事のツールや普段の連絡手段として活用され、なくてはならない存在になっている。

総務省が公表している「令和5年(2023年)通信利用動向調査」によると、13歳から29歳のSNS利用者は9割を超え、特に若い世代で支持されている。SNSの利用目的は「知人とのコミュニケーション」、「情報を探すため」、「暇つぶし」の順で多く、ツールとしても、娯楽としても活用されていることがわかる。

しかし、SNSでのコミュニケーションでは相手の顔が見えず、年齢や性別もわからないことが多い。

近年では、こうした匿名性を用いて、詐欺や怪しい団体への勧誘など、悪意のある使われかたをされることもある。そして、SNSでの匿名性を利用して行われているのがオンライン型の露出、いわゆる『チン凸』になる。

チン凸とは、DM等の第三者が見ることができない場所で、相手と直接チャットができる機能を用いて、自身の男性器の写真を相手に送り付ける行為を指す。ネット上では有名な迷惑行為として問題となっている。

そもそも「チン凸」とはなにか

チンは男性器、凸の由来は突撃のネットスラングで、2つを組み合わせた造語がチン凸となった。2000年代後半から使われ始めた言葉で、ニコニコ生放送、(通称ニコ生)から始まったとされる。

ニコ生では、配信中に男性器がカメラの画角内に映りこむと、即座に放送が中止され、利用規約違反でアカウントが削除される。これを利用して、動画配信の妨害行為として行われていた。

ネット上での荒らし行為として始まったチン凸。動画配信が市民権を得た昨今では、SNS上で露出をする手段の一つとして認知されていることが多い。

当然チン凸はれっきとした犯罪であり、わいせつ電磁的記録頒布罪に該当する可能性がある。ここで言う頒布とは、「不特定多数に対して交付・譲渡」をすることで、原則として「1対1では頒布に当たらない」と解されている。

しかし、1人の相手に送っていたとしても、不特定かつ多数の人に対して交付・譲渡する意思がある場合は頒布に該当する判例もある。

性別関係なく「無差別」に送られる卑猥画像

イラストレーターをしている30代の女性Mさんもチン凸の被害に遭った。SNSで主に二次創作のイラストを公表しているため、フォロワーの数は5000人と一般人よりも多い。

Mさんは性別の公表はしていなかったが、女性参加者が多い即売会等のイベントに多く参加していることや、女性ファンが多いゲームの二次創作をしていることもあり、目を付けられた。

「普段からDMは開放していたので『何かメッセージが来たのかな?』と思い無意識で通知欄を開きました。そこには肥大した男性器が天に向かっている写真だけが載せられていたので、そこで初めてチン凸が送られたと気が付きました。元々Twitter歴は長く、2010年から利用していましたが、チン凸が来たのは初めてです。ネットの治安に期待はしていませんが、ついに私のところまで来るようになったのかと思いました」(Mさん)

ネット上での活動が長いMさんは、チン凸の存在は知っていたものの、今まで卑猥な写真を送らたことはなく、「私には無縁のもの」と考えていた。

チン凸は誰にでも送られる危険性があり、無差別チン凸が横行しているのがSNSの現状になる。

また、チン凸は女性だけの被害ではない。女装が趣味でXやInstagramに自身が女装をした姿を投稿している都内の20代男性Oさんは、男であることを公表しているにも関わらず男性器の写真が送られている。

「可愛い服を着ることが楽しくて20歳の頃から女装した姿をSNSで公開していました。普段は『今日は友達とご飯!』みたいな投稿を女装した姿で投稿しています。プロフィールにも男であることは明記していますが、男性器の写真は送られてきます。フォロワー300人くらいの小規模なアカウントですが、1日に1回くらいの頻度で送られてきますし、今ではチン凸の常連の人がいるくらいです。」(Oさん)

Oさんは“僕に”になぜ男性器の写真を送るのかと聞いたことがある。Oさんとしても、男に卑猥な写真を送ったところで性的興奮を得られないと考えていたからだ。

「『男でも可愛いなら関係ないし、むしろ後ろめたさがないから送りやすい』と言われて驚きました。この言い分は全く理解ができませんし、女性に写真を送るときは後ろめたさがあるみたいな話もよくわかりませんでした。送り主としてはただ見てもらいたいだけみたいで、DMでの会話が成立して以降、定期的に卑猥な写真を送ってくるようになりました」(Oさん。前同)

行為自体が有名になり「軽い気持ち」で送る側

何故チン凸は行われているのだろうか。チン凸の被害者に協力してもらい、送り主に連絡をすると取材に応じてくれた。

チン凸をしているKさんは20代男性。主な手法は「写真を送ってもいいですかと」聞き、相手からの許可が出ると卑猥な写真を送るタイプだ。だが、有無を言わさず写真だけを送り付けることもある。

「最初にチン凸を行ったときは、女性側がSNSなどで『チン凸を受けた!』と面白い話として“ネタ”にしていたので私も面白半分で送りました。そこで気付いたのは下ネタでもコミュニケーションが取れることです。結構な人数に送りましたが、10数人に一人は反応を返してくれました。

それが『キモい』や『頭おかしい』といった暴言であっても、私としては嬉しく感じたことがきっかけになります。局部の写真を送る抵抗があったのは最初だけで、それ以降は特に気にすることもなかったです。考えてみれば、顔写真や、服装に比べて下半身の一部のパーツだけの写真で個人を特定することはできないので、ハードルはかなり低いと感じています」(Kさん)

犯罪をしている自覚している自覚はあるが、送る相手を選んでいるため今のところは事件になってはいないと話す。

「恐らく性癖として誰かに局部を見せることが好きなのは事実です。好きな女性に悪戯をしてみたいと思うことと同じだと考えています。多数の人に見られるのは嫌ですが、特定の人物であれば、私は見られて嬉しいと感じます。犯罪なのは知っていますが、SNSではチン凸の被害や、実際に写真を送っている人の話も散見するので、軽い気持ちで写真を送っています。一応許可は取っているつもりなので、自分が安全圏にいて大事にはならないからこそ局部の写真を送れているのも事実です」(Kさん。前同)

Kさんが言うには、道端や公園に出没する不特定な人物に見せることでスリルを楽しむ従来型の露出ではなく、あくまで特定の個人に向けて写真を送るという。

許諾があったうえで、動画配信やSNSでの話題にしてくれる前提があるため、無条件の犯罪ではなく、面白い行為として昇華されることが免罪符となっているようだ。

SNSでのセクハラやわいせつ行為は後を絶たないが、その多くが匿名アカウントからの攻撃になるため対処は難しい。

情報開示による法的措置などをするにも時間がかかるため、個人ができる防衛手段は限られている。

千葉県に盗撮マニアが「聖地」と呼ぶ駅があった…恐るべき「盗撮ステーションの実態」