(撮影:今井康一)

グローバル企業や外資系では、新しい期の始まりとなる9月。英語を使って仕事をすることになったものの、何気なく言い放ったひと言が、相手に失礼な印象を与えていないか気になるという方も多いのではないでしょうか。

また、英語で敬意を表すとなると、特別な英語表現を使わなくてはいけないのではないか、とたじろいでしまうこともあるかもしれません。

ですがカナダ出身で、オンライン英会話を提供するビズメイツ株式会社取締役の伊藤日加氏は著書『会議・プレゼン・メール・雑談で失敗しない! シンプル・丁寧・効果的なビジネス英会話のコツ96』の中で、「多くの日本人の持つビジネス英会話への印象とは異なり、実際のビジネス英会話は日常英会話よりもはるかに簡単」と述べています。

ビジネス場面において、相手と良好な関係を築くための丁寧な英会話表現を同氏に伺いました。

ビジネス英会話は日常英会話よりもはるかに簡単で、圧倒的にシンプル。

実際、グローバルで活躍する人たちがビジネスの現場で使っている英語も、極めてシンプルです。

彼らは「シンプル」「丁寧」「効果的」の3点を意識して、誰にでも伝わる英語で話しています。

ひとつずつ見ていきましょう。

「シンプル」な英語にするためわかりやすい表現を使う

まず、1つめの「シンプル」とは、わかりやすい表現を使うことです。

そもそもビジネス英会話は、「目的ありきのコミュニケーション」です。

「商品やプロジェクトの概要を伝えたい」「商談をまとめたい」「価格交渉をしたい」など、その目的が何であれ、何よりも重要なのは「意思と内容が伝わる」ことです。

そのため、とにかくわかりやすい話し方が好まれます。

世界の英語人口の多くを、第2言語として英語を使うノンネイティブ・スピーカーが占めていると言われています。

ビジネスの世界でも、ネイティブ・スピーカーだけでなく、多種多様なバックグラウンドを持つノンネイティブ・スピーカーの人たちと関わり合うことになります。

そのため、むずかしい単語や表現を使っても、ほとんどの人はわかりません。

一にも二にも、わかりやすい表現を使うべきなのです。

「いかにわかりやすく伝えるか」を意識して話すことは、グローバルで活躍する人の常識とも言える重要なポイントです。

相手の状況を考慮して「丁寧さ」を伝える

2つめの「丁寧」とは、相手を気遣って話すことです。

ビジネスの場では相手の立場に立って考えることが必要不可欠です。

コミュニケーションを円滑にし、よい人間関係を構築するために、相手に対する気遣いを意識した話し方を常に心がけることが大切です。

たとえば、外国人の同僚がミーティングに遅れてきた場面を想像してみてください。

あなたならどのように声を掛けますか。

Why are you late? (なぜ遅れたのですか)

Is everything OK?(何かありましたか)

日本語でも、遅れた理由を聞きたいのが本心だったとしても 「なぜ遅れたの?」と直接的には聞かないでしょう。

これは言語が英語に代わっても同じことです。

「電車が遅れた。エレベーターが止まってしまった」など、相手に非がない予期せぬアクシデントに見舞われた可能性もあります。

そのため、理由を問いただすのではなく、Is everything OK?(何かありましたか)と、 相手の状況を考慮したうえで言葉を投げかけることが大切なのです。

これが「丁寧」で「相手を気遣う」ということであり、 思いやりのある話し方です。

結果を出すことを意識して「効果的」な英語を使う

3つめの「効果的」とは「結果を出す」ことを意識して話すことです。

グローバルで活躍する人たちは、常に「結果を出す」ことに意識を向けています。

ここで言う結果とは、「営業成績を上げる」「顧客を増やす」といった中長期的な成果ではなく、日常的なビジネスのシーンに応じて、次の展開につながる何らかのきっかけやチャンスに結びつけることを意味しています。

初対面の人から、勤め先を聞かれたときの会話を例に挙げてみましょう。

Where do you work?(どちらにお勤めですか)

I work for Bizmates.(ビズメイツに勤めています)

これは、決して間違いではありませんが、せっかく相手が興味を持って聞いてくれているのですから、会社名を伝えるだけで終わらせてしまうのはもったいない。

結果を出すことを意識している人であれば、次のように答えます。

Where do you work?

I work for Bizmates. We provide an online business English program for Japanese business people. We are the No.1 company in this industry in Japan. How about you?

会社名を伝えたあとに、We provide an online business English program for Japanese business people.(私たちは、日本のビジネスパーソン向けのオンラインビジネス英語プログラムを提供しています)、We are the No.1 company in this industry in Japan.(この業界では、日本で1番の会社です)と言葉を添えて、自社がどのような会社なのかを説明し、強みをさりげなくアピールしています。

そのうえで、How about you? (あなたはどちらにお勤めですか)と相手に尋ねることで、相手もまた自分の強みなどを話しやすくなります。

結果を出すことを意識して話すと、人脈が広がったり、新たなビジネスチャンスが生まれたりするきっかけをつくることができるのです。

グローバルで活躍する人たちが話す英語

グローバルで活躍する人たちが話しているのは、複雑でむずかしい英語ではありません。

「シンプル」「丁寧」「効果的」。

このたった3つのポイントを意識しながら、誰にでも伝わる英語で円滑なコミュニケーションを図っているのです。

ビジネス英会話を身につけるうえではとても重要なことですから、ぜひ心に留めておいてください。

質問するときは、ワンクッション置く


相手に丁寧な印象を与えるための、便利な表現もお伝えしましょう。

「質問の前にワンクッション置く」は、きつい印象を和らげるためのルールです。

次の2つの例文を比べてみましょう。

ダイレクトな表現:

What is that?

How much is this?

インダイレクトな表現:

Do you know what that is?

Could you tell me how much this is?

初対面の人に質問するとき、What is that?( あれは何ですか)やHow much is this?(これはいくらですか)のようにダイレクトに聞くと、素っ気ない印象を与えてしまいます。

この場合はDo you knowやCould you tell meを冒頭につけて、Do you know what that is?(あれが何なのかご存じですか)やCould you tell me how much this is?(これがいくらなのか教えていただけますか)のようにすると、ソフトな印象に変わります。

何かを質問したいときには、このようにDo you knowや Could you tell meをつけてワンクッション置くことを意識してみてください。

(伊藤 日加 : ビズメイツ取締役)