Ⓒ「夫の家庭を壊すまで」製作委員会
 赤石真菜氏が原作・脚本、MUGEN FACTORYが作画制作を手がけた同名漫画が原作のドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレ東系、月曜夜11時6分〜)。主演を務める松本まりかの怪演が度々話題を集めており、その痛快なまでの“いかれっぷり”が多くの視聴者の心を掴んでいる。

 とりわけ、専業主婦の如月みのり(松本まりか)が、“もう一つの家庭”を持っている夫・勇大(竹財輝之助)に対して復讐を開始する第7話以降の演技はすさまじく、「怖い」を通り越してもはや「面白い」。

 ハマり役すぎる松本をキャスティングした理由、さらには松本の演技がどのようにして誕生しているのかなど、本作のプロデューサーを務める祖父江里奈氏(テレビ東京)に話を聞いた。
◆ドラマ化で、松本まりかの主演は大前提だった

 松本をキャスティングした背景について、祖父江氏は「企画会議で『この原作は松本さんが主演なら面白くない?』という意見が出ていました」と説明する。そもそも松本主演が前提でドラマ化が進んでいったという。

「『松本さんは不倫と復讐を掛け合わせた刺激的な本作にハマる役者さんだな』と感じ、オファーしました。また、いろいろな女性の感情を演じることが上手な役者さんというイメージもあります。不倫をされて可哀想な部分も見せますが、高校生の渉(野村康太)を誘惑するシーンもあり、いろいろな表情を見せるみのり役にピッタリだと思いました」

 本作の“フィクサー”である裕美役を務める麻生祐未の演技を称賛する声もSNSで散見される。麻生を選んだ経緯について、「『裏切られた瞬間を面白く演じてくれる人って誰だろう?』と考えた時、麻生さんが浮かびました。実際、第7話ではみのりから反撃を受けた時、悲壮感ばかりではなく、どこか“負け顔”のようなコミカルさを出しながら打ちのめされていく様子が最高でした」と予想を大きく超える演技を見せた麻生を称えた。

◆オリジナルキャラクターたちが登場する意味

 周辺の登場人物で言えば、渉に思いを寄せる原作には登場しないオリジナルキャラクター・武藤花音(田中美久)が存在感を発揮している。

「みのりは『復讐のために高校生をたぶらかす』という行為をしますが、原作ではそのことを真っ向から糾弾するキャラはいませんでした。だからこそ、花音を登場させてその役割を担ってもらいました。また、オリジナルキャラとして松崎和歌子(中島百依子)も登場していますが、和歌子は不倫には寛容な価値観を持っています。花音のように不倫を悪と考えたり、和歌子のように寛容に考えたりするキャラを登場させることにより、不倫という行為について多面的に考えてほしいという狙いもあります」

◆松本まりかは“天才型”ではない? 現場での意外な姿

 次に松本の演技がどのようにして現場から生まれているのかを聞いた。

「監督の上田迅さんは松本さんの演技について、突飛だったり癖があったりするものの、それでもみのりに共感できる理由として、そこに心情的リアリティがあるからだと話していました。そして、『なぜ今この台詞なのか』『どういう言い方なのか』などを松本さん自身がしっかりと解釈しているからこそ心情的リアリティが生まれる、と説明していました」

 直観的に演技をするのではなく、現場でディスカッションを重ねながら作品・登場人物の解釈を深めて演技していくタイプの役者であると上田氏は評しており、祖父江氏もそのことに同意する。

「松本さんを“憑依型女優”と言う人も多いように、役をおろして演じる天才型の役者というイメージが根強いです。ただ、実際は松本さんはいろいろなパターンを何度も試します。そのうえで監督と相談しながら、仕草ひとつ、呼吸ひとつを計算して作り上げていく役者なんですよね」