妻が専業主婦で夫の年収が「800万円」と、共働きで世帯年収が「800万円」では世帯年収は同じなのにもらえる年金額が違うと聞きました。本当でしょうか?
妻が専業主婦と共稼ぎでは年金額が異なる
公的年金制度は2階建て構成になっており、1階部分が老齢基礎年金、2階部分が老齢厚生年金です。老齢基礎年金は、日本に住む20~60歳までの人に加入義務があり、国民年金保険料を10年以上支払っていれば受け取れます。それに対し、老齢厚生年金は会社員などが加入する年金制度です。
国民年金保険料を10年以上支払った人が厚生年金保険料も支払っていれば、老齢基礎年金に上乗せして受け取れます。
例として、世帯の状況別に公的年金の加入状況をまとめてみたので、参考にしてみてください。
●夫:厚生年金(第2号被保険者)
●妻:国民年金(第3号被保険者)
●夫:厚生年金(第2号被保険者)
●妻:厚生年金(第2号被保険者)
上記からも分かるように、共稼ぎ世帯は夫婦ともに厚生年金へ加入します。夫が会社員で妻は専業主婦世帯の場合、妻が加入するのは国民年金のみです。妻が専業主婦の場合、その妻は厚生年金被保険者期間がなく老齢厚生年金を受け取れません。
そのため、世帯年収が同じでも、老齢厚生年金を受け取れるか受け取れないのかによって、年金額に違いが出てしまうのです。
妻が専業主婦の世帯と共稼ぎ世帯の年金額の違い
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金と老齢厚生年金の平均月額は以下のとおりです。
●老齢基礎年金:5万6316円
●老齢厚生年金:14万3973円(男性:16万3875円、女性: 10万4878円)
夫が厚生年金被保険者かつその配偶者(妻)が専業主婦の場合、妻が受け取れるのは老齢基礎年金となり、受け取れる老齢厚生年金は夫の分のみです。厚生年金保険料を納付した期間や収入によって正確な年金額は変わりますが、平均月額で計算すると約4万8862円の違いがあることが分かります。
●夫:16万3875円+妻:5万6316円=22万191円
●夫:16万3875円+妻:10万4878円=26万8753円
年金額を増やす方法
共稼ぎ世帯と比べて、妻が専業主婦の世帯の年金額は少なくなりますが、今から老後に備えて増やす対策を検討できます。主な方法は以下のとおりなので、可能な範囲内で取り入れてみてください。
●60歳以降も働く
●iDeCoやNISAを活用する
以下で、それぞれについて解説します。
60歳以降も働く
60歳で定年退職をしたとしても、70歳まで厚生年金保険料を納めれば将来の年金額に反映されます。老齢厚生年金の受給額は、被保険者期間や収入をもとに計算し、働いた分だけ年金額を増やせるからです。
現在の年金見込額では老後の生活費の工面が難しそうとなったら、再就職や再雇用などで働いて厚生年金被保険者になることを考えてみてください。
iDeCoやNISAを活用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAを活用することで、公的年金の不足分を補える可能性が高いでしょう。iDeCoは自分で拠出した掛金が全額所得控除となり、さらに運用益が非課税、受取時に税制優遇を受けることが可能です。
NISAは2024年1月に開始した少額投資非課税制度のことで、制度の詳細は図表1を参考にしてみてください。
【図表1】
(口座開設期間) 恒久化 恒久化 非課税保有限度額 1800万円 1800万円
1200万円(内数) 対象年齢 18歳以上 18歳以上
金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」より筆者作成
老後の安心を得るために年金額を増やす方法を検討しておこう
厚生年金被保険者の夫に扶養されている専業主婦は、原則として老齢厚生年金を受け取れません。受け取れるのは老齢基礎年金のみとなり、夫婦それぞれが老齢厚生年金を受け取れる共稼ぎ世帯と比べて年金額が少なくなることを避けられないでしょう。
年金額が少なくて老後の生活費を用意できるか不安な場合は、定年退職を迎える前などに適切な対処法を検討しておくと安心です。また、可能であれば専業主婦である妻が働いて厚生年金被保険者になるのも年金額を増やすことにつながります。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生労働省 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCo(イデコ)の特徴
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー