「無礼だ」セーヌ川汚染問題をパリ五輪トライアスロン出場のノルウェー選手が回想 運営の“強行開催”を猛批判!「あんな場所で」

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問題が山積みとなったセーヌ川での競技実施。当事者となった選手からはいまも苦情が相次いでいる。(C)Getty Images

 真夏のパリで開催された今五輪において、小さくない論争を巻き起こしたのは、セーヌ川での競技実施だろう。開幕前から水質問題が取りざたされる中で、トライアスロンの男女個人、混合リレー、男女のマラソンスイミングの5種目が無事に行われたが、ネガティブな話題は尽きなかった。

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 まさに“汚点”と言えるドタバタ劇だった。

 フランス政府は今大会の競技実施のために総額14億ユーロ(約2400億円)という莫大な予算をつぎ込んで水質を改善。約100年間も禁止されてきた遊泳が行えるように調整を図ってきた。

 しかし、雨天時に生活排水が流れ込むシステムになっているセーヌ川は、開幕後に続いた雨により状態が悪化。トライアスロンやオープンウォーターの公式練習が中止に。それでも大会組織委員会は水質の基準値を「下回った」とゴーサインを出して各競技を実施したが、大腸菌などの細菌濃度が依然として高いと報じられ、出場予定のアスリートへの配慮に欠けた“強行開催”という感は否めなかった。

 体調不良を訴える選手たちも続出した。現地時間7月31日の男子トライアスロン個人では、カナダ代表のタイラー・ミスローチャックは10回も嘔吐。世界各局の生中継で映し出され、衝撃を与えた。

 また、ベルギーの女子選手クレア・ミシェルは、ウイルス性感染症の下痢と嘔吐が続き、緊急入院。同代表は大腸菌感染の懸念を考慮して8月5日の混合リレーを辞退。その混合リレー後には、ポルトガルの男女の2選手が胃腸感染症を発症したことが発表された。

 運営方針が大きな波紋を呼んだのは間違いない。実際にレースに出場していた選手は、大会後に不満を爆発させている。東京五輪の金メダリストでもあるノルウェーのクリスティアン・ブルンメンフェルトは、母国のポッドキャスト番組『The Norwegian Method』の中で、厳しい感想を語っている。

トライアスロンレースで、大会の運営サイドは、『水をどう綺麗に保つか』という問題をまったく制御できていなかった。水質検査に関しては、コントロールが効いていたかもしれないけど、最初のスイム公式練習が2度も水質悪化が原因でキャンセルされ、その後のレースが延期された。さらにその後の公式練習が2つもキャンセルされ、マラソンスイミングの公式練習もキャンセルされた」

 練習のキャンセルが相次いだ中で、レースが強行された4日間は、すべて基準値をクリアして「良好」という検査結果が出た。この事実にもブルンメンフェルトは苛立ちを隠さない。

トライアスロンとマラソンスイミングをセーヌ川で開催すると決まった時、僕は彼ら(大会組織委員会)が、会場の状態をコントロールするだろうと思っていた。それはただのギャンブルだ。あんな場所で『アスリートのため』といって競技を行うのは、ある意味、僕らに対する無礼だ」

 大会後に「私たちにとって、より良い水質を取り戻すことができたのは、想像しうる最大の遺産」(パリ市副市長ピエール・ラバダン氏談)と胸を張ったパリ市。今後はセーヌ川での遊泳を一般市民向けに開放していくというが、果たして実現可能なのか。選手たちからクレームが相次いだ現状では、限りなく厳しいと言うほかになさそうだが……。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]