TSMCの先端プロセスは、AI半導体の需要急拡大を受けて生産能力が逼迫している。写真は3nmプロセスの主力工場である台南市のFab 18(TSMC提供)

半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は7月18日、2024年4〜6月期の決算を発表した。

同四半期の売上高は6735億1000万台湾ドル(約3兆2452億円)と前年同期比40.1%増加。純利益は2476億6200万台湾ドル(約1兆1933億円)と同36.3%増加し、アナリストの事前予想を超える好業績を誇示した。

その背景には、世界的な生成AI(人工知能)ブームが続く中、TSMCのお家芸である微細加工技術を駆使したAI半導体の需要が急拡大していることがある。

データセンター向けの高性能AI半導体で世界最大手のエヌビディアは、主力製品「H100」をTSMCの5nm(ナノメートル)プロセスで製造している。同じくアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の「Instinct MI300」や、インテルの「Gaudi 3」も、TSMCの5nmプロセスを採用しているとされる。

HPCが売上高の5割突破

TSMCの4〜6月期の売り上げ構成を製造技術の世代別に見ると、現時点で最先端の3nmプロセスの比率が総売上高の15%を占め、1〜3月期の9%から6ポイント上昇したのが目を引く。さらに、5nmプロセスの比率は35%、7nmプロセスは17%を記録し、7nm以下の先端プロセスだけで全体の67%を稼ぎ出した。

製品分野別に見ても、4〜6月期はAI半導体を含むHPC(高性能コンピューティング)が総売上高の52%に達し、ついに全体の半分を超えた。一方、かつての稼ぎ頭だったスマートフォン向けの比率は33%と、1〜3月期より5ポイント低下した。

TSMCは製造技術のさらなる進化に余念がない。同社の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める魏哲家氏は決算説明会で、次世代の2nmプロセスの量産を2025年に開始すると繰り返し強調した。


TSMCの魏哲家・会長兼CEOは、次世代の2nmプロセスの需要確保に強気の見通しを示す(写真:TSMC提供)

魏氏によれば、2nmプロセスの半導体は前世代(の3nmプロセス)と比較して、消費電力が同じなら演算速度を10〜15%速く、演算速度が同じなら消費電力を25〜30%減らすことができるという。

「わが社の2nmプロセスの採用について、AI半導体(の設計)を手がけるほぼすべての顧客が検討中だ。2nmの量産開始から2年間で生産するチップの数は、3nmや5nmの時を上回る(急速な立ち上がりを見せる)だろう」。魏氏はそんな強気の見通しを示した。

先端プロセスに集中投資

AI半導体の受注急増を受け、TSMCの先端プロセスは生産能力が逼迫している。今後の生産能力増強について、魏氏は次のように語った。

「すでに発表済みの生産能力倍増計画を、予定通りに進めていく。足元の生産能力不足は2025年まで続くが、2026年には緩和するだろう」


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TSMCの今後の投資計画について、同社CFO(最高財務責任者)の黄仁昭氏は決算説明会で、2024年通期の予想投資額のレンジを以前の280億〜320億ドル(約4兆3948億〜約5兆226億円)から300億〜320億ドル(約4兆7087億〜約5兆226億円)に引き上げると明らかにした。

その7〜8割を先端プロセスの研究開発に投じ、AI半導体のさらなる需要拡大に対応するのが狙いだ。

「わが社は(先端プロセスへの)継続的な投資を通じて、顧客の事業拡大をサポートしていく」。黄CFOはそう述べた。

(財新記者:劉培林)
※原文の配信は7月18日

(財新 Biz&Tech)