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初期受注ではエアーの人気が高いが…

photo:Hidenori Hanamura(花村英典)

ホンダのコンパクト・ミニバン「フリード」が3代目へとフルモデルチェンジされた。

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既に現行型はモデル末期となり、新型の情報も流れていた今年上半期(2024年1〜6月)の新車販売台数でも、3万8429台と第7位に入っていた人気モデルだけに、新型への期待は否が応でも高まる。


ホンダ新型フリード公道試乗記    花村英典

公道試乗会で街中に繰り出した新型フリード。以前にスタジオでの事前撮影会で実車は見ていたが、街中に置いた実車を見ても、その印象は変わらなかった。つまり「あ、新しいフリードだね!」

LEDなどを用いた顔つきは従来型とは異なるものの、e:HEV搭載の関係でフロントノーズは少し伸びたがサイズはほぼ同じ。そしてフロントウインドウとリアウインドウの傾斜角は従来型とほとんど変わらないことから、フリードらしいシルエットは継承されている。

新型では「エアー」と「クロスター」がしっかり差別化された。シンプル&クリーンなフォルムで、兄貴分のステップワゴン・エアーの弟分的にまとめられたエアー。最近流行のクロスオーバーSUVテイストを加えて、アウトドアテイストを強めたクロスター。

おそらく、エアーは少しおとなしすぎると思われる人もいるだろうが、万人受けするデザインだ。クロスターは好き嫌いが分かれるかもしれない。

実際、初期受注の段階ではエアーとクロスターの比率は7:3から8:2といったところだという。だが、このあたりは今後の反響次第で変わってくるところ。もう少し動向を静観してみたい。

フィットやヴェゼルに似たe:HEVらしい走り

まず最初に試乗したのは、クロスターのe:HEV(FF/2列5人乗り)。運転席に着くと、スッキリしたインパネで視界の良さが好印象だ。ミニバンゆえ目線は少し高めで車両感覚もつかみやすいから、初心者でも運転しやすいだろう。

今回の試乗地は、横浜の市街地と都市高速。e:HEVによる走りの印象は、同じシステムを採用しているフィットやヴェゼルと大きくは変わらない。市街地走行ではモーターで走り、必要に応じてエンジンはかかるが発電のためで、エンジンは高速走行時以外は駆動をアシストしない。


ホンダ新型フリード公道試乗記    花村英典

市街地走行ではノイズを低減したタイヤの効果もあってか、いたって静かだ。乗り心地も良い。加減速もドライバーの意図どおりといった感じで、加速時の初期ゲインも強くはなく、ブレーキの効き方も素直だ。エンジンがかかっても極端に回転を上げることはないから、うるさくは感じないだろう。

都市高速に乗ったところで、ACCを作動させる。先行車の有無による加減速もスムーズで、加速時に必要以上にエンジン回転数を高めたり、強めの減速Gを感じることもない。

ただし、車線維持支援システムが少し過敏で、走行中に常に細かくステアリング操作をアシストしてくる。基本的に同じシステムを採用しているフィットやヴェゼルで同様に高速走行したときには、こうした挙動はなかった。

個体差なのか、初期ロットの問題なのかは確認中だが、全体の出来が良く感じられただけに、少々残念なポイントだった。

エンジン車のCVTもかなり洗練されたようだ

続いて、エアーEX(FF/3列6人乗り)。エンジン車のトランスミッションは従来型と同じCVT。かなり洗練されたようだが、発進時や加速時にエンジン回転数が上がって少しノイジーになるのは否めない。

それでもラバーバンド現象(エンジン回転数が上がってから車速が上がり出す)は抑えられているし、ノイズも不快なレベルではない。


ホンダ新型フリード公道試乗記    花村英典

e:HEVに比べればパワー不足を感じるが、街中で使うことが多いなら必要十分なレベルにはある。ECONモードを使うと少し鈍さを感じるが、エンジン回転数は抑えられるので街中を静かに走りたければECONモードを活用するといい。なお、e:HEVではECONモードによるパワー差はあまり感じられなかった。

高速道路をクルージングすると、Dレンジ80km/hは1500rpmといったところ。ACCの作動もe:HEVと大きくは変わらないが、加速時は少しエンジン回転数が高めになる。また、車線維持支援システムは先に乗ったクロスターほどではなかったが、少し過敏な動きを示した。

いずれのモデルも視界が良く運転しやすく、インターフェースの視認性や操作性もいい。最小回転半径は5.2mだからメチャクチャ小回りが効くというわけではないが、適度なサイズのおかげもあって街中の狭い道でも走りやすい。

3列目シートもヘッド&ショルダースペースは十分で、身長170cmくらいまでの人なら、少しヒザの位置は上がるが体育座りにはならず、長時間でなければ問題なく乗れる。シートの跳ね上げは女性でも簡単にできるだろう。グレードによるがリアシート用エアコンが用意されているのは、昨今の猛暑日が続く日本ではありがたい装備だ。

人気モデルのフルモデルチェンジは難しいところだが、このフリードはうまく進化させている。エンジン車とe:HEVの価格差は約35万円あるから、予算と使い方で自分好みのフリードを選びたい。

個人的には、永く付き合いたいならランニングコストや走りの印象を考慮して、パワートレインはe:HEVをチョイスしたい。

試乗車のスペック

価格:250万8000円〜343万7500円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4310×1695(クロスター:1720mm)×1755(4WD:1780)mm
燃料消費率:14.4〜16.5km(e:HEV 21.1〜25.6km)WLTCモード
駆動方式:FF/4WD
車両重量:1370〜1580kg
パワートレイン:直列4気筒1496cc
使用燃料:ガソリン
e:HEVモデル 最高出力:106ps/6000〜6400rpm
e:HEVモデル 最大トルク:13kg-m/4500〜5000rpm
動力用主電池:リチウムイオン電池
e:HEVモデル モーター最高出力:123ps/3500〜8000rpm
e:HEVモデル モーター最大トルク:25.8kg-m/0〜3000rpm
ガソリンモデル 最高出力:118ps/6600rpm
ガソリンモデル 最大トルク:14.5kg-m/4300rpm
ギアボックス:無段階変速オートマティック(e:HEV 電気式無段変速機)
タイヤサイズ:185/65R15(フロント)185/65R15(リア)


ホンダ新型フリード公道試乗記    花村英典