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最近の映画って、やたらとネコが出てきませんか?

いえ、ネコは以前から映画に登場していましたが、最近は明らかに扱われ方が違うと思うんですよね。なんていうか、それまでプロップ扱いだったのが、主役級になったみたいな。

正直、ネットのネコ人気にあやかろうって下心もあると思います。配信で映画を楽しむのが主流になっている昨今において、映画館に行って料金を支払って映画を見る人は減少傾向にあるので、観客に少しでも興味を持ってもらうためにネコを投入している感が否めません。

でも、現在公開中の『クワイエット・プレイス:Day 1』を見る限り、SNSでのバズり効果を目論んだ以上の効果が出ていて、映画におけるネコの立場が変わってきているのかなと感じたんです。

というわけで、この記事では映画におけるネコの立ち位置の変化について、書いていきたいと思います。

ネコは◯◯で××されるクリシェだった

古いコンテンツにおける実写のネコというのは、人間と意思疎通が図れない気まぐれなペットであったり、ホラー映画やサスペンス映画における不吉の前兆を知らせる役割という扱われ方をされていました。

ホラーやサスペンスで殺される系だと、『わらの犬』(1971)、『ペット・セメタリー』(1989/2019)、『ハイド・アンド・シーク』(2005)、『スペル』(2009)などが代表といえます。また、殺されないまでも、『チャイルド・プレイ』(2019)では首を絞められていましたし、『アメリカン・サイコ』(2000)では射殺されそうになっていました。

「man’s best friend(人間の親友)」と呼ばれるイヌも被害に遭うケースはありますが、ネコの方がひどい扱われ方をすることが多く、海外のサイトなどでは「ネコ好きが避けるべき映画リスト」なんてものが作られるほどです。

もちろんバッドエンドではなく、人間と共に平和に暮らしているネコもいます。しかし、人間と意思疎通が図れた描かれ方をしていたかどうか、人間の相棒として戦うアニマルヒーローのように描かれていたかどうか、と問われたら、自信を持ってYESとは言えないのではないでしょうか(イヌは昔からそういう立ち位置だったのにね)。

『ティファニーで朝食を』(1961)の名無しネコ、『ゴッド・ファーザー』(1972)のヴィトーのペット、『エイリアン』(1979)のジョナシー、『メン・イン・ブラック』(1997)のオリオン、『プリティ・プリンセス』(2001)のファット・ルイ、『キアヌ』(2017)のキアヌなど、映画における重要なポイントや印象に残る登場の仕方をしていたとしても、彼&彼女らは物語の語り部ではありません。『エイリアン』のジョナシーなんて、ノストロモ号の数少ないサバイバーであるにもかかわらず、です。

でも、それは仕方のないことだったんだと思います。

ネコを活躍させるのは難しい

ネコをヒーロー的な役割で登場させられない理由はいろいろとありますが、1つは本物のネコを使った撮影は難しいから。

ネコと暮らしていればわかる通り、ネコに芸を仕込むのは至難の業です。そのため、期間やコストを重視する映画製作の現場において、よほどのこだわりがない限り、ネコに芸を仕込んでまで起用するのは避けたいところ。

ティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』(2003)には、ネコを多頭飼育している家が出てきますが、本物のネコを登場させていたために、俳優の演技は完璧でもネコの目線1つで撮り直しになりました。あまりにもNGが出たため、バートン監督は「100%ネコが必要じゃない場合は、使わないようにしたい」と発言したほどです。

今はVFXを使えば、ある程度のレベルの演技ができるリアルなネコが再現可能ですが、身近な生き物であればあるほど、視聴者はVFXのアラに気づきやすいため、求められるクオリティが上がります。そして努力しても、大抵のCGネコが本物の魅力を超えられないため、それならば最初から作らない、もしくはネコはデフォルメ表現で、といった判断になる傾向があります。

でも、難易度が高いにもかかわらず、最近はリアルなネコの登場率が高まっているんです。

映画界は空前のネコ人気

ティム・バートン監督が嘆くほど、ネコは映画での起用を避けたい動物です。なのに、最近はやたらとネコが登場する作品が増えています。

理由の1つは、昨今のネットにおけるネコ人気にあやかりたいという映画界の下心。もう1つは、物語の語り部としてのネコのポテンシャルの高さでしょう。

直近でリアルなネコが活躍する作品ですぐに頭に浮かぶのは、『キャプテン・マーベル』(2019)や『アーガイル』(2023)、現在公開中の『クワイエット・プレイス:Day 1』です。ネコ目線で物語を語り、人間と同じ、もしくはそれ以上の活躍をし、ストーリーを引っ張っています。もうかつてのようなクリシェではありません。出演ネコたちは、皆生きたネコが演技をしており、負担がかかりそうなシーンのみCGという対応が採られています。

『キャプテン・マーベル』のグースは、12歳のレジーというオスネコ俳優によって演じられています。『アーガイル』のアルフィーは、監督であるマシュー・ヴォーンの愛猫チップで、チップの前にも別のネコが起用されていましたが、演技力が足りずに役を降ろされています。

『クワイエット・プレイス:Day 1』のフロドは、音に反応して襲いかかってくるモンスターが蔓延る世界をサバイブする重要な役柄かつ作品唯一の癒し担当です。ときにはアクションまでこなさないといけないのに、そのすべてをニコとシュニッツェルという2匹のネコが演じています。

スタジオ側はネコシーンの多さと高い演技力を求める脚本を読み、「CGで」と言ったそうですが、監督はどうしても本物のネコでなければならないと熱弁。結局ネコの特性とストレス回避を最重要課題として、ときに脚本を変えてまでフロド役を本物のネコで撮影しています。

結果? ネタバレを避けるために多くは語りませんが、従来のホラー映画におけるネコのクリシェを断ち切るヒーローが誕生しました。私は同作を試写で鑑賞しましたが、劇場を後にする人たちは一様に、作品におけるフロドのポジションの素晴らしさやかわいさに言及していたし、私は、フロドが完全に物語を牽引できていたことに驚きを隠せませんでした。

本作はホラー映画におけるネコの「殺られキャラ」だけでなく、なんなら「バズり効果狙い」という不名誉でやっつけなポジションすら返上したんじゃないかと思っています。

ここまでいろいろと書いてきましたが、私が言いたいことは1つです。

「ネコ映画はこれからも増える。しかも、いいポジションで」

私は動物好きを自称しており、当然ながらネコに対しても並々ならぬ思いを抱いています。なので、映画におけるネコの地位が向上されつつあることは、非常に喜ばしいことだと思っています。ぜひ、これからも(撮影現場におけるケアが徹底された上で)ネコには活躍してもらいたいところです。

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