客室乗務員から地方の専業主婦、そして単身東京へ。auコマース&ライフで“ひとり広報”をする女性が3度の転職で見つけたキャリア
取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部
名の知れた大企業で働いている人は、きっとすごいキャリアを持っているのだろう……そんな風に想像してしまうかもしれませんが、中には紆余曲折を経験し、キャリアアップ転職を成功させた人もいます。
「転職時は自身のキャリアやスキルに自信がなく、たくさんお祈りされました」と語ってくれたのは、auコマース&ライフ株式会社のひとり広報・倉持はるかさん。学生時代からユニークな経歴を重ねてきた彼女は、新卒から4社を経験。3度の転職活動を乗り越え、現在は1児の母として、子育てと仕事を両立させています。
パワフルさも感じさせる経歴を持っている彼女ですが、未経験領域の転職活動では、心が折れそうになることもあったといいます。そんな彼女に「キャリア軸」を聞いてみると、さまざまな職種を経験してみた上で、一貫した芯があったことが分かりました。
■挫折と達成、パワフルでユニークなキャリアも、転職活動は難航
倉持さんは色々と、ユニークなご経歴をお持ちみたいですね……! 青春時代を海外で過ごしている時点で、強い(笑)。
3歳からクラシックバレエを習っていたので、14〜18歳の留学は、バレエ留学だったんですよ。だけど、ケガを理由に、挫折し、プロのバレエダンサーへの夢は諦めてしまって。バレエばかりで勉強もおろそかになっていたので、バレエを辞めて唯一残ったスキルといえば、英語力くらいでした。
とはいえ日常会話レベルの語学力は、新卒就活では強みになりそう。
語学を生かせる就職先として、就活時は客室乗務員を目指していましたが……軒並みお祈りされてしまって、新卒時はホテルに就職したんです。
そうだったんですね……!
ホテルではレストランのレセプションとして働いていたのですが、バレエも、客室乗務員という夢も諦めて就職したこともあり、どこかモヤモヤした日々を過ごしていました。私はいつか子どもができた時、何か教えられることがあるのだろうか? と、ふと考えてしまったんですよね。「頑張れば夢はかなう」って、自分が体現していないと伝わらないんじゃないかと思ったことがきっかけで一念発起し、転職活動をして客室乗務員として日本航空に入社することができたのが、社会人2年目のことでした。
夢をかなえたんですね! 逆に、どんな経緯で現在のお仕事をしているのかが気になります。
客室乗務員として働く日々は本当に楽しかったのですが、結婚を機に退職を決意しました。パートナーとはもともと遠距離恋愛をしていたので、一度は専業主婦として地方移住したのですが、全く性に合わなくて……それで、ひとり東京に戻って再就職することにしたんです。
かなり波乱万丈だ……!
もちろん勇気は必要でしたが、それよりも「この退屈な毎日を変えたい」という気持ちが強かったです。ダメだったらその時に考えようと、半ば勢いでUターンしました。
でも、再就職には成功されたんですよね。
ポテンシャルを評価してくれるベンチャー企業に入社させていただきました。
前職で、はじめて広報領域をご経験されたんですよね。
広報職としての採用ではなく、総合職として色々なことを経験しました。ウェディングドレスや子ども服のECサイトの運営、アパレル商品の企画……ベンチャー企業だったからこそ幅広い業務に携わることができ、自身が本当にやりたいことを考えるきっかけになりました。
新卒から6〜7年とは思えないスピードで、色々なことをご経験されたんですね。
キャリアとしてはまとまりがないので、この時は焦りもありました。社員数が少なかったので、経営者との距離も近かったのですが、憧れていた女性社長の背中を見て、何か自分の強みを見つけないと彼女のように輝けないと感じていました。
強み=自分らしさと考えてしまう気持ち、とても分かります。
30歳を目前に再び転職活動を始めましたが、この時の転職は大変でしたね。広報・PR職を軸に探したのですが、たくさんお祈りされました。
「色々ご経験されていますけど、結局何ができるんですか」と聞かれた時、自分の強みはコミュニケーション力としか答えられなかったです。心が折れそうになっている時に、現在の会社からオファーをいただきました。
■時短重視のリモートワークでも、コミュニケーションは綿密に
ご経歴のお話を聞いただけで、倉持さんの行動力やタフさが伝わってきますね。
幼い頃から目標を立てて、達成していく癖がついていたんですよね。結婚や子どもを持つタイミングも自分の中で決めていましたし、目標通りに行動できました。
お子さんもいらっしゃるんですね。現在、働き方はどんなバランスですか?
弊社ではリモートワークと出社のハイブリットワークを実践していて、子育てとバランスが取りやすいので、週1出社・そのほかはリモートワークで対応しています。移動時間がない分、お迎えギリギリまで働けるので助かっています。今は広報の専任者が私しかいないので、仕事の優先順位は下げられないんです。
auコマース&ライフ株式会社では、どんなお仕事をされていますか?
弊社はKDDIグループの子会社として総合ショッピングサイト「au PAY マーケット」や「au PAY ふるさと納税」の企画・運営しているのですが、事業や企業に関わるプレスリリース作成や、取材案件のディレクションなどが主な業務です。
auコマース&ライフ株式会社で働く中で、大変だったことはありますか?
私が入社する前は広報の専任者がおらず、私自身プレスリリースを作成したこともなかったので、当時は手探りで動くことがとても多かったです。広報の存在を認知してもらえるまで、さまざまなメンバーのデスクまで足を運び、専任者であることをアピールしていました。
社外のやり取りよりも、社内関係の構築の方が大変だったんですね。
苦労の甲斐もあって、当時は月1件あるかないかぐらいのプレス案件の依頼が、現在は抱えきれないほど案件が舞い込んでくるようになりました。社内ディレクションでは特に、顔を見知ってもらっていない方への依頼がなかなか進まないことが多かったので、なるべく密にコミュニケーションするよう気をつけていました。
現在はリモートワークが中心かと思いますが、コミュニケーション面で気をつけていることはありますか?
リモートワークできるのはありがたいのですが、オンラインだけだと上手く伝わらないことも多いので、より丁寧に言葉を選んだり、情報をまとめたりするようになりましたね。相手にとってラクな交流になるよう、心掛けています。
オンラインで交流できるのって便利だけど、ちゃんとデメリットもありますよね……。
直接話しかけるからこそ深まる仲もありますからね。ただ、今は仕事と同じくらい、子育てにもリソースを取られてしまうので……バランスを見ながら、定期的に出社するようにしています。
ひとり広報をこなしながら子育ても両立されているなんて、尊敬しちゃいます。
でも、子育てから学べることもたくさんあるんですよ。子どもと向き合うようになって、自分の考えと相手の考えが全く同じであることはないんだと実感しています。どうしたら寄り添えるのか深く考えるようになりましたし、子育てを始めてからは感情を一度グッと抑えて、これまでより感情的になることが減りました。
なるほど……親も子どもに育てられているなんていいますけど、本当なんですね。
ほんと、そうなんですよ(笑)。子どもとの交流をきっかけに、ビジネスコミュニケーションでも、相手の立場や気持ちをより意識できるようになりました。
■子育てと仕事、両立のコツは「余力がつくる笑顔」
働いていて、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
広報職はECの出店者様と直接交流する機会がなかなかないのですが、オフラインイベント時など、実際のお声を聞ける時は嬉しいですね。サービス業に従事していた時期も長かったので、お客様の笑顔が見られる瞬間はやりがいを感じます。
ご自身の強みを探して迷走された時期もあるとのことですが、倉持さんはとても親近感がありますし、コミュニケーションもお上手です。人との交流が、倉持さんのキャリアの軸になっているように感じます。
バレエに注力していた頃も、見ている方に踊りで何かを伝えることでその人の感情を生み出せるようにと踊っていました。今も、変わらず誰かの心が動いた瞬間に立ち会えることが嬉しいです。広報活動により、多くのお客さまに認知され、ご利用いただける事で社内の関係者や出店者様の笑顔が見られた時は、報われたような気持ちになります。
サービスにも興味が湧いてきました。「au PAY マーケット」のECサイトとしての強みがあれば、教えてください。
「au PAY マーケット」では、「暮らしが満たされるお買い物体験」をアイデンティティに、ただ買い物するだけでなく、購買前からワクワクできて毎日サイトを見にきたくなるような楽しいお買い物体験の提供を目指しています。現在はライブコマースにも力を入れているため、吉本興業の芸人さんが出演する「生配信!よしもと市場」ではお笑いとECの融合された番組やVTuberやウェザーニュースのキャスターが出演される番組など、新たな取り組みも行っています。
広報活動だけにとどまらず、色々な方法で発信しているんですね!
プレスリリースやサービスのPRだけに偏らず、「au PAY マーケット」をご存じない方に「おもしろいことをしている会社だな」と知っていただくことも大切だと思っているので、そのための仕掛け作りは今後も積極的に取り組んでいこうと思っています。
倉持さんのブランド愛、伝わってきました。そして、子育てと両立しながらでも楽しく働けることが分かって、なんだか安心しました……!
母親になってからは、自分が無理しすぎると家族も仕事も崩れてしまうことが分かって、余力を残すことを意識しています。リフレッシュする瞬間を作ることも大切だと思うので、子どもを夫に預けて夜中に1人でサウナに行くなど、自分だけの時間を作ることも意識しています。120%は頑張れないから、どんな時も余力を残すことが毎日笑顔でいるコツです。仕事ではこれからも、困った時に助け合える関係値を作っていきたいです。