NHKは14日、放送番組の配信やニュースサイトなど、NHKが行なうインターネット活用業務を“必須業務”とすることを定めた改正放送法が国会・参議院本会議で先月可決、成立したことに伴い、今後のスケジュールなどの説明会を開催。その中で、今年の9月下旬~10月中旬頃に、放送番組のネットでの同時配信、見逃し配信だけでなく、ニュースを文字でも提供するなど番組関連情報の提供を含めたサービスの概要を公表するとした。

必須業務化に伴って、NHKは「視聴者・国民において、放送経由でも、ネット経由でも、同等の、変わらない、同一の価値、同一の受益をもたらすこと」と「ネットでのみ受信している場合にも、テレビで受信している場合と相応の費用負担をお願いすること」を基本的な考え方としている。

なお、放送番組と同一の価値をネット経由でも提供するため、例えば「ネットだけでしか視聴できない番組」など、ネットオリジナルのコンテンツを作ることにはならないという。

一方で、「ネットの特性にあわせたコンテンツを提供していく事」は想定しており、例えばNHKのニュース番組をネットで「同時配信」し、「見逃し配信」するだけでなく、ニュース番組を文字起こししたニュースページを公開したり、各ニュースを個別の動画にして見やすく配信したり、地震などの災害時には必要な情報を記載した各地のマップを提供するなどの「番組関連情報」の配信も必要的配信となる。

3つの中の「番組関連情報の配信」においては、ニュースを文字で配信するだけでなく、例えば教育番組の内容もテキストで配信するといったものも行なわれる可能性がある。そのため、実施にあたっては、公正競争が阻害されるおそれがないかどうか、市場競争への影響がどの程度あるかなどを調査する必要がある。

必須業務化した後の、新たなインターネット活用業務で実施されるサービスが具体的にどのようなものになるかはまだ検討段階だが、市場調査するにあたっては、ある程度のサービス像が無いと調査ができないため、今年の9月下旬~10月中旬頃にサービス像の概要を公表する予定。

また、NHKはこうした番組関連情報が、「公衆の要望を満たすために必要かつ十分なものであること」、「公衆の生命又は身体の安全の確保のために必要な情報が迅速かつ確実に提供されることが確保されるものであること」、「関連する事業における公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるものであること」の3つをNHK内の「業務規程」策定プロセスにおいて、適合を担保する仕組みを構築。

1点目と2点目については、放送番組における放送番組審議会の機能を念頭に、配信コンテンツについても同等の仕組みで対応。3点目については現行の「インターネット活用業務審査・評価委員会」の役割を参考にしつつ、新たな検討体制として「競争評価分科会(仮)」を組成する。

この分科会(仮)が、NHKから示された評価・分析案について、「放送と同一の情報内容、同一の価値であるか」、「公正競争が阻害されるおそれがないか」、「質の高い情報発信がNHKだけでなく民間でも確保されているか(多元性)」といった観点から意見を述べる。メンバーは、学識経験者、メディア関係者等で構成する想定だ。

こうしたスキームを経て、前述の業務規程が3つの要件に適合しているか、経堂委員会で審議・決定するという。

新たなネット配信でも世帯単位の契約は変わらず

現在、放送の受信契約は世帯毎となっているが、スマートフォンは個人で使うものだ。インターネット活用業務が必須業務化すると、「契約も個人毎になるのでは?」という声もあるが、NHKは、ネット配信がスタートしても、現行の世帯単位の契約は変わらないという考え方であり、同じ世帯の中にいる他の人がテレビ設置し、受信契約を結んでいる場合は、新しくスマホでネット配信を利用しても受信料を支払う義務はないとする。

一方で、新たなサービスの具体的な料金体系は、予算が国会で承認されることをもって決定となるため、2025年1月の予算案に盛り込んで発表となる見込み。

なお、受信契約をしていない人が、ネット配信のページなどにアクセスした場合でも、映像が一切見えない状態にはならない見込み。一方でフリーライドを防止する必要はあるため、衛星放送のように放送画面の契約義務があるというメッセージを表示するのかなど、方法はまだ未定だが、何らかの施策は行なわれる予定。これは、前述のニュースの文字での配信など、番組関連情報の提供においても同じだが、こちらについても、受信契約をしていない場合はどのような表示になるかは現在検討段階だという。