アメリカは中国に対して半導体の輸出制限をかけているため、中国企業はAIの開発に不可欠な高性能GPUを直接入手することが困難です。TikTokの中国親会社であるByteDanceが、この制裁を回避するためにクラウドを通じてNVIDIAのAIチップにアクセスしていると、海外メディアのThe Informationが報じました。

China’s Nvidia Loophole: How ByteDance Got the Best AI Chips Despite U.S. Restrictions - The Information

https://www.theinformation.com/articles/chinas-nvidia-loophole-how-bytedance-got-the-best-ai-chips-despite-u-s-restrictions

Sino firms using banned chips on US soil to avoid sanctions • The Register

https://www.theregister.com/2024/06/06/chinas_new_chip_sanctions_loophole/

TikTok’s AI efforts reportedly exploit loopholes to use premium Nvidia chips

https://www.engadget.com/tiktoks-ai-efforts-reportedly-exploit-loopholes-to-use-premium-nvidia-chips-173432988.html



伝えられるところによると、中国企業は新しい抜け穴として、クラウドプロバイダーを通じてNVIDIAのAIチップを利用してるとのこと。

アメリカ政府の目を盗んでAIチップをレンタルもしくは購入している主な中国企業としては、Alibaba、Tencent、China Telecomの名前が挙がっています。また、TikTokの運営を手がけるByteDanceは、Oracleのクラウドコンピューティングを介してNVIDIAの人気AIチップ「H100」を搭載したサーバーをレンタルしています。

こうした行為は、アメリカ政府による半導体規制の趣旨に違反していますが、Oracleは中国企業にAIチップを販売しているわけではなく、あくまでアメリカ国内に置いたまま貸し出しているだけなので、技術的には規制に引っかかりません。

The Informationの取材に応えた関係者は、「TikTokはアメリカでAIモデルのトレーニングを行っており、彼らが作ったモデルが中国の本社に送り返されるのを止めるのは難しいでしょう」と話しました。



一方、アメリカ当局も中国企業による制裁破りを手をこまねいて見ているわけではありません。アメリカ商務省は2024年初頭に、国内のクラウドプロバイダーに対して、「外国の顧客の身元を確認し、悪意あるサイバー活動に利用される可能性のあるAIモデルがトレーニングされている場合は当局に通報すること」を義務化する規則を提案しました。

しかし、この規則案の具体化は多数のクラウドプロバイダーからの反発を受けて頓挫しており、抜け道をふさぐ措置は宙に浮いた状態になっています。

折しも、ByteDanceにTikTokの売却か撤退かを迫る「TikTok禁止法」に対する憲法訴訟をTikTokが起こしたことで、アメリカのデータが中国政府に渡るのを阻止する当局の取り組みが尻切れトンボに終わる可能性も指摘されており、今回の抜け道に関する報道はこうした対策の難しさを改めて浮き彫りにしました。

TikTokがアメリカでの禁止措置をめぐり訴訟 - GIGAZINE



The Informationは「たとえアメリカがクラウドを通じた抜け道をふさぐことに成功したとしても、中国企業がNVIDIAのチップをアメリカ国内にある自社のデータセンターに組み込んでAIモデルのトレーニングを行うのを防ぐことはできないでしょう」と述べました。