W杯アジア2次予選のミャンマー戦、シリア戦が行なわれる。サッカー日本代表の顔ぶれはカタールW杯以降、大きく変わらずに来ているが、はたしてこのまま次のW杯まで続くのか。2年後のレギュラーメンバーは誰か。5人の識者に予想してもらった。


日本代表は2年後も同じメンバーで戦っている? photo by Kishiku Torao

【2026年W杯成否のカギはパリ五輪世代の台頭】

浅田真樹(スポーツライター)

FW/三笘薫(平河悠)、上田綺世(前田大然)、久保建英(堂安律) 
MF/南野拓実(鈴木唯人)、守田英正(田中碧) 
MF/遠藤航 
DF/伊藤洋輝、冨安健洋、板倉滉、関根大輝 
GK/鈴木彩艶

 過去のワールドカップを振り返ってみると、日本代表は概ね"ニコイチ"で大会に臨んでいる。ニコイチとは、つまり2大会をひとつとして、同じメンバーで戦ってきたという意味だ。

 たとえば、2002年日韓W杯で若手として台頭してきた選手たちが、2006年ドイツW杯では主力として円熟期を迎える。同じことは、2010年南アフリカW杯と2014年ブラジルW杯にも言えるだろう。

 もちろん、登録メンバー全員が同じだったはずはないが、ざっくりとしたイメージで言えば、日本代表はニコイチで世代交代が進んできた。

 日本が初出場した1998年フランスW杯と、大会直前に監督交代があった2018年ロシアW杯を除けば、概ねこのサイクルが続いている。

 だとすれば、次の2026年で主力となるのは、2022年カタールW杯での若手。すなわち、東京五輪世代である。堂安律、三笘薫、田中碧ら、すでに2022年大会で活躍した選手はもちろん、同世代の選手がさらに勢力を拡大し、主力メンバーを構成することになるはずだ。

 だが、大会ごとの成績を見比べると、日本がグループリーグを突破しているのは、"ニコイチの一個目"。勢いのある若手が台頭してきた時に、結果を残しているのである。

 現在、東京五輪世代が加速度的にヨーロッパで実績を重ねていることを考えれば、次回ワールドカップで中心になるのは彼らだろうが、どれだけパリ五輪世代が主力に割って入れるのか。

 そこに結果を残せるか否かのカギがあるのではないだろうか。

【パリ五輪世代の突き上げで期待の選手は?】

原山裕平(サッカーライター)

FW/上田綺世(小川航基) 
MF/三笘薫、久保建英(鈴木唯人)、伊東純也 
MF/遠藤航、藤田譲瑠チマ(守田英正) 
DF/伊藤洋輝、冨安健洋、板倉滉、菅原由勢(関根大輝) 
GK/鈴木彩艶(小久保玲央ブライアン)

 監督が同じである以上は、2年後のワールドカップも、前回大会からメンバーが大きく変わることはないだろう。カタールの地で悔しさを味わった選手たちが4年分の成長を手にして臨むことを考えれば、ベスト8超えも十分に期待できる。

 一方で、競争意識や年齢バランスも考慮すれば、下からの突き上げが求められる。その役割を担うのは、当然パリ五輪世代の選手たちだ。

 絶対的な存在が不在のGKは、すでにアジアカップでレギュラーを張った鈴木彩艶に加え、先のU-23アジアカップで躍動した小久保玲央ブライアンのふたりに対する期待値が高まっている。一方で、フィールドプレーヤーに関しては、既存の序列を覆せそうな選手は見当たらない。

 可能性があるのは藤田譲瑠チマだろう。U-23アジアカップでは大黒柱として君臨したボランチは、鋭い縦パスやボールを失わないキープ力が光り、頭ひとつ抜けた存在だった。縦に速い攻撃を標榜するA代表の戦術への親和性も高いと考えられる。現在はベルギーでプレーするものの、クラブのランクアップを実現できれば、中盤のポジション争いに加わってくる可能性は高い。

 もうひとり挙げるとすれば、鈴木唯人になる。今季、デンマークでセンセーショナルな活躍を見せたアタッカーは、1トップの軸が不在のなか、得点が奪えるトップ下として日本代表に新風を吹き込む可能性がある。今回の代表活動で存在感を放つことはもちろん、こちらもクラブシーンでもうワンランク上のレベルにたどり着くことが求められる。

 関根大輝にも期待したい。柏レイソルで台頭する右サイドバックは身長187cmの高さが魅力。U-23日本代表に次いで、A代表でもポジションを確保すれば、世界にも誇れる超高層4バックが形成されることになる。

【層の薄い1トップに中村敬斗。伊東純也の右SBもあり】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

FW/上田綺世(中村敬斗) 
MF/三笘薫(中村敬斗)、南野拓実(鎌田大地)、久保建英(堂安律) 
MF/田中碧(守田英正)、遠藤航 
DF/伊藤洋輝(冨安健洋)、冨安健洋(伊藤洋輝)、板倉滉、伊東純也(菅原由勢) 
GK/鈴木彩艶

 現在の主力を見渡して、2年後に年齢的な衰えを見せそうな選手はいない。最年長の遠藤航と伊東純也も、2年後のW杯はまだ33歳。とりわけW杯では経験値も重要なので、数人のベテランがピッチに立っていたほうがバランス的にベターだろう。それを考えると、スタメンと交代要員5人を選ぶ場合、どうしても現状のメンバーが中心になってくる。

 正GKは現在も流動的な状況だが、パリ五輪後にしっかり成長すれば鈴木彩艶が最有力候補。それを追うのはシュミット・ダニエル、大迫敬介、谷晃生あたりか。

 DFは、2年後を想定すると右サイドバック(SB)に伊東を配置するのもひとつの手だ。所属のスタッド・ランスでも、自陣右サイドの深い位置まで戻って守備をするシーンも多く、代表でも守備力は証明済み。菅原由勢との比較でも、守備力で見劣りすることもない。さらに言えば、より攻撃に迫力と速さを生み出してくれそうだ。

 最も駒不足とされる左SBは新戦力台頭を待ちたいところだが、現状では伊藤洋輝が軸。戦況によって冨安健洋と入れ替えることもできるのが利点でもある。

 ボランチは4−1−4−1に可変することも想定すると、遠藤航を軸に田中碧または守田英正が有力。戦力豊富な2列目は、1トップ下に南野拓実、右に久保建英、左に三笘薫を配置し、鎌田大地、堂安律、中村敬斗をバックアップとした。

 南野は、今シーズンのモナコでの変貌ぶりを見るにつけ、出場時間が少なかった鎌田より上位と評価。2年後も、このふたりの調子次第で使い分けたい。層の薄い1トップは上田綺世にしつつ、控えはシュートのうまさが突出している中村の今後の成長次第。現状の左ウイングのみならず、1トップもしくは2トップで得点力を発揮できる選手に進化してもらいたい。

【不確定なポジションで最適解を見つけられるか】

小宮良之(スポーツライター)

FW/上田綺世 
MF/三笘薫(俵積田晃太)、鎌田大地(荒木遼太郎)、久保建英(堂安律) 
MF/守田英正(田中碧)、遠藤航 
DF/冨安健洋、町田浩樹、板倉滉、菅原由勢(半田陸) 
GK/高丘陽平

 2年後の予想は難しい。むしろ予想どおりだったら、戦況は厳しいだろう。今後2年で、どれだけプラスアルファが生まれるか。

 一方、今の代表の主力は年齢的にも2年後にピークを迎えそうで、現時点では大きな変化は考えられない。

 ケガがなければ、という前提だが、DF冨安健洋、板倉滉、MF遠藤航、守田英正、鎌田大地、FW三笘薫、久保建英、上田綺世の8人は"堅い"だろう。パリ五輪世代も台頭しつつあるが、現時点では相当な実力差。センターバック(CB)は町田浩樹、谷口彰悟、中盤では田中碧、旗手怜央、サイドアタッカーは中村敬斗、堂安律、相馬勇紀など層も厚い。本来はレギュラーの伊東純也をどう処遇するか、という懸案も......。

 一方、不確定要素が濃厚なポジションもある。

 左サイドバック(SB)は伊藤洋輝が有力だが、代表では不安定。今年で38歳になる長友佑都のバックアップを受けざるを得ない。右SBは菅原由勢が一番手も、橋岡大樹、毎熊晟矢が追随し、半田陸、関根大輝のパリ五輪世代が頭角を現わし、経験では酒井宏樹というカードもあり、群雄割拠。GKに至っては、森保一監督の申し子である鈴木彩艶から、選ばれていない高丘陽平なども含めて、10人程度が横一線だ。

 森保監督の仕事は、不確定なポジションで最適解を見つけられるか。

 左SBは冨安をコンバートし(アーセナルで世界トップレベルの実力を証明)、CBに町田という選択肢もある。GKもプレーコンセプト次第で変わるが、「能動的なサッカー」を志す場合、2022年JリーグベストGKでMLSでも研鑽を積む高丘は面白いが......。

 2年後、未知の選手で言えば、俵積田晃太を推したい。単純にスピードと技術に優れ、海外向き。もうひとりは、Jリーグでは突出したエレガントさのある荒木遼太郎か。ライン間でのプレーは出色だ。

 W杯は魔物が棲み、勝ち上がるチームは不思議とラッキーボーイも生まれる。「三笘の1ミリ」など象徴的。今シーズンは南野拓実に勢いを感じるが、2年後の旬の選手に"最後のピース"として命運が託される。

【鎌田、冨安が構える迫力ある前線はどうか】

杉山茂樹(スポーツライター)

FW/冨安健洋(荒木遼太郎) 
MF/三笘薫(平河悠)、鎌田大地(鈴木優磨)、久保建英(坂元達裕) 
MF/藤田譲瑠チマ、(守田英正)、遠藤航 
DF/伊藤洋輝、高井幸大、板倉滉、菅原由勢 
GK/小久保玲央ブライアン

 日本で最も総合的な能力が高い選手=冨安健洋を、ストッパーで使うのはもったいない。ここでは思いきって1トップで起用したい。1トップに特別感のない選手を置くチームにW杯で上位に行く可能性を感じないからだ。

 冨安はまだ底が割れていない未知なる選手。アーセナルでは左サイドバック(SB)を務めるが、どのエリアでもこなせそうな、癖のない動きが魅力。ポストプレーさえもできそうで、その多機能性はもっと追求されるべきである。

 もうひとり懸けてみたい選手は、五輪チーム(U-23日本代表)のキャプテン、藤田譲瑠チマ。まだ少々、甘いプレーが目立つが筋はいい。中盤を彼に仕切らせてみたい。そのほか、五輪チームからこのなかに加えたい選手は高井幸大、小久保玲央ブライアン、そして平河悠、荒木遼太郎の5人。高井、小久保はスタメンで使いたい。巧緻性の高い小兵、平河や荒木は外国人が嫌がるタイプ。価値は高まる。

 独断で抜擢したいのは鈴木優磨と坂元達裕だ。鈴木はJリーグでプレーする日本人選手のなかでは別格の域にある。パッと見、オラオラ系だが、技術的に多彩で、多機能的かつ今日的だ。五輪のオーバーエイジにも加えたいほど。坂元は今季後半、ケガで休養を余儀なくされたが、それまでのプレーぶりはまさに代表に選びたくなる出来だった。フェイントのキレ、逆を取るアクションは三笘級だ。

 森保一監督が最近1トップ下、あるいはインサイドハーフで使う回数が増えた久保建英は、右ウイングで使いたい。一方、1トップ下には鎌田大地を据える。鎌田、冨安が前で構える前線はこれまでにない迫力だ。森保監督は絶対にやらないと思うけれど。