渋野日向子の新章、始まる「もっと強くなれる」全米女子OP2位で弾けるシブコスマイル!
渋野日向子はやっぱり"持ってる"。
今季海外メジャーの第2戦、全米女子オープン(5月30日〜6月2日/ペンシルベニア州、ランカスターCC)で、笹生優花に次ぐ単独2位でフィニッシュ。再び、世界が注目する大舞台で躍動した。
「(緊張感は)めっちゃ、ありましたよ。吐きそうだ〜って(笑)。昨日の夜から、ずっとそうなんですけど......。
いやぁ〜、めちゃくちゃしんどい4日間だったんですけど、ここまでの自分のゴルフの内容や結果を考えたら、ありえない結果なので。正直、自分でもびっくりなんですけど。(ラウンド中にスコアボードを見ても)おおおー、おおおー、みたいな。すごい選手が上にいるなかで、なんで自分がここにいるんだろうっていう感じはあったかも」
全米女子オープンで2位という好成績を残した渋野日向子 photo by Getty Images
2022シーズンから米女子ツアーに本格参戦を果たした渋野。その1年目こそ、ジェブロン選手権4位、AIG女子オープン(全英女子オープン)3位と、メジャー大会でも上位争いを演じたものの、2年目の昨季(2023シーズン)はメジャー5試合中、3試合で予選落ち。そのほかのトーナメントでもなかなか結果を残せず、今季ツアーフル参戦のシード権獲得はならなかった。
そして、今季もここまで9試合に出場して6試合で予選落ち。スイング改造の最中にもあって、非常に苦しいシーズンを送っていた。それゆえ、この渋野の活躍を誰が予想していただろうか。開幕前、総勢21名の日本勢が出場するなかでも、上位の評価ではなかったのではないか。
だが、今大会を前にして、渋野本人は自身の飛躍に少なからず期待を抱いていたかもしれない。 試合前日、彼女はこう語っていた。
「(コースは)めっちゃ難しいなと思っています。ラフも長いし、距離もそれなりにあるし、傾斜もあるし......。グリーン周りも難しいし、グリーンのアンジュレーションも難しいし、全部難しい。
でも、(自分の気持ち的には)かなり前を向けていると思う。不安はいっぱいあるけど、楽しみな気持ちは増えているから。(練習場では)自分が打ちたいドローが打てるようなものがもっとあると思って、いろいろ試しているなかで、それに近い球も打てていると思う。まだまだそれがベストではないけど、現状は前よりマシなボールが打てている。
メジャーの舞台なので、いろいろと試すという言い方はおかしいけど、自分のやりたいようにやりたい。アメリカで一番大きい大会で、コースも今年イチ難しいけど、やりがいがあるので楽しみ。気落ち的には、上を目指してがんばりたい」
そして初日、5バーディー、4ボギー、1ダブルボギーと出入りの激しいゴルフとなったが、渋野は1オーバー、15位タイとまずまずのスタートをきった。
「やっぱり難しいので、1回プチンッとなったら終わりだ、というのは頭に入れていた。(今日も)そうなる要素はたくさんあったけど、逆にバーディー数も多かったので。(パットは)しっかり打ちきれていたし、すぐに(気持ちを)切り替えることができた。
練習ラウンドから、ここは難しすぎるというのは(頭に)入っている。アンダーが出たら、ヤバいっすよ。そんな感じで、イーブンで上出来と思っていたので、そういう気持ちでいたのがよかった」
2日目も、随所で耐えるゴルフを披露。3バーディー、3ボギーのイーブンで回って、初日と同じ通算1オーバーながら順位は5位タイまで浮上した。
「出だしからパッティングで躓いてしまってはいたんですけど、ショットが悪くなかった分、すぐに切り替えることができた。最後はもったいないボギーでしたけど、イーブンパーで回れて上出来。というか、よかったなと思う。
攻めながら守るゴルフ? できているほうだと感じますけど。今週は気持ちよく振れているかなという感覚がドライバーにあるので、1個ミスしようがそんなにマイナスには考えていなかったかな。
バーディーの取り方がこれまでと違う? この2日間はそう思うところはありますかね。自分は昔からショットメーカーというか、ショットでバーディーを取りにいくみたいな。それが戻ってきたかなという感覚は、最近のなかでは一番あります。
それは(試行錯誤しながら)いろいろやってきたからだと思います。取捨選択というか、(自分に)合わないものは切り捨てるとか、自分のなかで理解をしてきての(今回)シャフトを替える、という選択にもなったし。スイングもある程度、自分のなかでは悪くないのにな、という感覚はあったので、(自分のスイングとは)違うことで変えられたら、というのが(今回のシャフトを替えるという)新しい発見になった」
ムービングサタデーの3日目、渋野はそのとおり爆発した。7バーディー、3ボギーの「66」と、この日のベストスコアタイをマーク。通算3アンダーまで伸ばして、首位と2打差の4位と順位も上げた。
「7バーディー? まったく数えてなかった。いつも数えるタイプなのに。それだけ集中していたんだと思います。久しぶりの感覚。
好スコアの要因? 一番はクラブのシャフトを替えたこと。ちょっと柔らかめのシャフトに戻したことによって、しなりを使って打てるようになった。それで、自分が打ちたいボール、それを打てる再現性が高まったことが要因かなとも思う。気持ち的にもすごくフレッシュな気持ちで臨めたのかな、と」
迎えた最終日、ボギーが先行してふたつスコアを落としたものの、優勝した笹生とわずかふたりだけ、というアンダーパーフィニッシュ。通算1アンダーの2位と、全米女子オープンでの自身最高成績を挙げた(過去最高は2020年大会の4位)。
「この何カ月とは次元の違うゴルフができていたと感じるし、自分のメンタル的にもすごく前向きだった。それが4日間、最後まで続けられた、というのはよかった。
この場に立てることが奇跡だなと感じていたし、この位置で戦えているのが奇跡と思えたことがすごく大きいことだったのかな、と。これで終わりじゃないし、これからまた、もっと強くなれる部分がたくさんあるとわかったからこそ、これからもすごく楽しみだな、というのが一番。
(2位でも)悔いはないかな。最後の最後まで全力でやれたと思います。ここまで予選落ちを何回してきたかっていう、そういうレベルなので、まさかこの位置で終われるとは思わなかったけど、ここから(自分の)"新しい章"がスタートできるなという感覚なので、すごく前向きな気持ちです」
4日間のラウンド中、久しぶりに"シブコスマイル"も随所に弾けていた。彼女自身が言うように、世界を席巻した"強い"渋野日向子の第2章がここから始まる。