「週4日労働」は思っているよりも早く定着するかもしれない
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行は、従来の「オフィスワーク」の固定観念を破壊するものとなりました。リモートワークも一般的なものとなる中で、「週4日労働(週休3日制)」が注目を集めています。
‘It’s better for humans’: The four-day workweek is closer than you think - MarketWatch
「週4日労働」はパンデミック以前から提唱されている考え方です。記事作成時点で働き方として一般的なのは1週間に5日働いて2日休む「週休2日制」ですが、「7日間を一区切りとする考え方は人工的なものであり自然ではないので効率的ではない」という指摘は以前から存在しています。そして週4日労働についてはさまざまな研究が積み重ねられ、ストレス軽減や生産性向上などの効果が報告されています。
週休3日制を導入するとストレス軽減&生産性が20%も向上し、週休2日制と変わらない仕事量を維持できることが明らかに - GIGAZINE
1週間の労働時間を「32時間」と定めている教育ソフトメーカー「Kuali」の場合、時間は計画的に使うことが求められるので、会議には無駄がなく、そもそも「この会議に自分はいなくても問題ない」と考えた場合は出席しなくてもよいのだそうです。
Kualiはユタ州リーハイに本社があり、従業員は70人ですが、そのほとんどはリモートワーク。週4日労働に切り替えたのは2022年後半からで、導入以降、退職者は1人も出ていません。CEOのジョエル・デーリン氏は「最も大きな生産性の損失は従業員の離職です」と述べ、退職者が1人もいないことによって従業員の再教育に必要な時間を取られないのは大きいと、現状の利点を説明。「将来的には、週4日労働制が主流になっていくのでは」と予測しました。
デーリン氏と同じく、週4日労働が主流になっていくという考えを示しているのが、著名な資産家でありニューヨーク・メッツのオーナーとしても知られるヘッジファンドマネージャーのスティーブン・コーエン氏です。
コーエン氏は、一般的に金曜日は生産性が低いことや、AIの存在感が増してきていることを挙げ、「週4日労働になると確信している」と述べました。
Steve Cohen says a 4-day work week is coming in part because of AI
https://www.cnbc.com/2024/04/03/steve-cohen-says-a-4-day-work-week-is-coming-in-part-because-of-ai.html
調査会社KPMGが、年商5億ドル(約780億円)の企業のトップ100人を対象に行った調査でも、CEOの10人に3人が週4日労働または週4日半労働の導入を検討していることが明らかになっています。
KPMG 2024 CEO Outlook Pulse Survey
https://kpmg.com/us/en/articles/2024/kpmg-2024-ceo-outlook-pulse-survey.html
週4日労働の導入を検討している企業では、金曜日は「もう週末の休みに入ったのか」と誤解するような生産性になっていて、パンデミック以降、金曜日のオフィス稼働率はどんどん低迷して他の曜日との差は開く一方だそうです。
一方、労働者の側からも週4日労働は魅力であり、求職者のおよそ7割が、求める待遇の筆頭として「給与に影響のない週4日労働」を挙げていることを調査会社Gartnerは報告しているとのこと。
仕事が年中無休の警察でも週4日・8時間労働シフトのテストが行われていて、コロラド州デンバーでは好評を博していて、コロラド州ゴールデンでも交通違反の取り締まり件数や逮捕件数に変化は出ていないそうです。
警察の仕事はストレスが多く勤務形態も不規則なため、肉体的・精神的な負担が大きいのですが、週4日労働であれば家族と過ごせる時間が増えるため、睡眠の質が向上するほか、保育料も少なくて済んでいるとのこと。
週4日労働を推進しているNPOの4 Day Week Globalによると、2023年に週4日労働のテストに参加したのは5カ国の企業や団体でしたが、2024年は19カ国に増加しているそうです。
4 Day Week Global
https://www.4dayweek.com/
ただし、労働者の満足度は間違いなく高くなっているのですが、生産性に関しては自己申告で「向上した」と述べている事例が多く、4 Day Week Globalのディレクターであるアレックス・パン氏は「生産性については難しいところがある」と述べました。「難しい」というのは、週4日労働をテストしている企業や組織は、多くが社会サービスなどの分野の仕事なので、週4日労働によってどれぐらい生産性が向上したか測定しにくいためだとのこと。
それでも「収益にマイナスになるようなら、週4日労働は誰もやらないでしょう」とパン氏は述べています。
なお、アメリカのバーニー・サンダース上院議員らは2024年3月13日に、給与を落とすことなく標準的な週32時間労働制を確立するための法案を提出しています。
NEWS: Sanders Introduces Legislation to Enact a 32-Hour Workweek with No Loss in Pay » Senator Bernie Sanders
https://www.sanders.senate.gov/press-releases/news-sanders-introduces-legislation-to-enact-a-32-hour-workweek-with-no-loss-in-pay/