【パリ五輪を巡るライバルとの差は?】

 バレーボールの国際大会「FIVBネーションズリーグ2024」の女子大会は、予選ラウンドの第2週までが消化され、いよいよ6月11日から最終第3週が実施される。その福岡大会で、女子日本代表はパリ五輪の切符を懸けた勝負の4試合に臨む。


得点が決まって喜ぶ主将の古賀紗理那(中央)ら女子日本代表の選手たち photo by FIVB

 昨秋のパリ五輪予選で出場権獲得を逃した日本は、今年に「ONE TEAM ONE DREAM〜一つの心でひとつの夢を掴む」をスローガンに掲げた。そのパリの舞台に辿り着けるかどうかは、すべてネーションズリーグの結果にかかっている。

 パリ五輪の出場国は12。そのうち、開催国のフランスを除いて予選で出場権を獲得したのは6カ国で、残る枠は5つ。最終的に出場権が付与されるのは、今回のネーションズリーグの予選ラウンドを終えた時点でのFIVBランキングの上位国となっている。さらに、アフリカとアジアからは予選で出場権を獲得した国がいないため、それぞれの大陸におけるランキング最上位チームが優先される。

 2020年から現在の算出方法になったFIVBランキングは、主要な国際大会の全試合がランキングを構成するポイントの対象であり、ネーションズリーグもこれに該当する。試合結果に応じて各国が獲得、損失したポイントによりランキングは常に変動する可能性があるため、一試合一試合が勝負の場だ。

 なお、ランキング下位チームが上位チームを破ると大量にポイントを獲得するチャンスであり、反対に上位チームが下位に敗れると一気にポイントを失う。そんなシビアな戦いとなっている。

 日本は、予選ラウンドでランキングをひとつでも上げることが最大の目標だ。その点において、第1週トルコ大会で当時1位のトルコや、第2週マカオ大会でランキング上位にいた中国に勝利を収めたのは、ポイント獲得の上でも大きかった。

 特に中国は、まだパリ五輪出場を決めていないため、アジア圏における最大のライバルとなる。今回の勝利で日本は一気にポイント差を縮め、その後、中国がイタリアに敗れてポイントを失ったことにより、第3週を前に日本がランキングで上回った(日本が329.62ポイントで6位、中国が327.57ポイントで7位。以下、第2週終了後の6月3日時点)。

 とはいえ、一瞬たりとも気の抜けない戦いは続く。福岡大会で日本が対戦する4カ国のうち、韓国(39位/99.22ポイント)とカナダ(10位/288.74ポイント)はまだ五輪の切符を手にしておらず、ランキング上でも日本より下位に位置しているため、絶対に落とすわけにはいかない。また、すでにパリ行きを決めているセルビア(8位/324.00ポイント)とアメリカ(5位/346.78ポイント/)との試合は、ポイント獲得の好機である。眞鍋政義監督も「福岡大会では満員のお客さんで選手たちを後押ししてほしい」と呼びかけた。

【35歳のベテランセッターが躍動】

 出場権を手にするのが前提だが、2022年からスタートした現体制の女子日本代表が掲げる最大の目標は、やはりパリ五輪でのメダル獲得。そのためのチームづくりも大詰めを迎えようとしている。

 キャプテンの古賀紗理那は、今回のネーションズリーグで初黒星を喫したポーランド戦を除き、いずれの試合も2桁得点をマーク。パリ五輪で金メダル候補筆頭のトルコ相手には、31得点の活躍で金星の立役者となった。

 そのエース対角は、2023−24シーズンをイタリア・セリエAでプレーするなど海外で経験を積んだ石川真佑が主に務め、こちらも得点源に。また、同じアウトサイドヒッターの井上愛里沙も、中国戦では18得点を挙げて勝利に貢献した。石川と井上のどちらが古賀の対角を務めるかはひとつの焦点だが、戦況に応じてそれぞれを起用できることはプラスと捉えられるだろう。

 アタッカーでいえば、セッター対角に入る林琴奈は攻守で安定感を誇り、怪我から復帰したミドルブロッカーの荒木彩花も高さとパワーを活かしたクイックがアクセントになっている。その攻撃陣の力を引き出しているのが、35歳のベテランセッター岩崎こよみだ。

 前回の東京五輪に向けた日本代表にも名前を連ねたが、最終的には落選。その後、出産を経て復帰すると昨年はアジア競技大会に出場。今年はA代表に抜擢され、今大会では落ち着きあるプレーが光る。チームの求めていたピースが、ここにきてぴったりとはまった印象だ。

 岩崎にサーブ順が回る、いわゆるS1ローテーションでのブレイク率が高いのもチームにとっては好材料。もっとも、サーブは眞鍋監督体制になって強化してきたポイント。中でも、ミドルブロッカーの山田二千華はブロックはもちろんだが、効果的なサーブで流れを引き寄せる。

 ミドルブロッカーは荒木、山田に加え、渡邊彩や宮部藍梨が控えており、パリ五輪出場が決まればメンバーを争うことになる。それはリベロも同様で、ここまでは小島満菜美と福留慧美が併用されているが、五輪本番となれば守護神の座はひとつ。今大会でのパフォーマンスに、選手個々の命運もかかっている。

 チームとしてはサーブとディフェンス、さらにサーブレシーブでAパス(セッターが動かずトスが上げられる位置へのパス)を返してからのアタック効果率が強化ポイントであることは変わらない。加えて、「20点目以降の勝負どころにおけるパフォーマンスを向上させること」(眞鍋監督)は、勝敗を大きく左右する。その点において、第2週のブラジル戦や、最終セットで最大8点差をひっくり返したドミニカ共和国戦など根気強くセットを取りきるシーンは増えている。

 今年の活動を始動させるにあたって、古賀が強調したのは「個々の力を結集させて、チームとして戦っていきたい」ということ。福岡の地でより一丸となって、パリ行きの切符を掴みたい。