サッカー五輪代表のメンバーを探る――GK2枠は本当に「確定」しているのか?
【短期連載】パリ五輪に挑むU‐23日本代表
56年ぶりのメダル獲得へのプロセス/第1回
五輪も、ワールドカップも、開催は4年に一度。それゆえ、大会に出場することの"希少価値"は高く、いつも登録メンバー予想は盛り上がりを見せる。とりわけ五輪のそれは、ワールドカップ以上と言ってもいいかもしれない。
なぜなら、ワールドカップの登録メンバーが23人なのに対し、五輪は18人。より狭き門であるからこそ、予想するのが難しく、加えて、オーバーエイジ(OA)枠というプラスアルファの注目ポイントもあるからだ。
では、来るパリ五輪で登録メンバー入りするのは、誰なのか。ここではその対象を23歳以下の選手に絞り、候補選手をポジション別に探っていきたい。
1回目の今回は、GKである――。
U23アジアカップ優勝に貢献した小久保玲央ブライアン photo by Getty Images
まず名前を挙げるべきは、パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU23アジアカップ優勝の立役者でもある、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だろう。
小久保は同大会で全6試合のうち5試合に先発フル出場。ウズベキスタンとの決勝で見せたPKストップをはじめ、再三の好守でチームをピンチから救っている。それはまさに、守護神と呼ぶにふさわしい活躍だった。
唯一の敗戦となった韓国戦後は苛立ちをあらわにするなど、メンタル面での課題はあるものの、その"熱さ"でチームを盛り上げることもでき、ムードメイカーとしての働きも見逃せない。チームの中心的存在となりうる選手だ。
とはいえ、パリ五輪を目指すU‐23代表が、一昨年にU‐21代表として立ち上げられて以降、最も多くの試合でゴールを守ってきたのは、鈴木彩艶(シント・トロイデン)である。
今年1〜2月のアジアカップに出場するなど、昨秋からはA代表への招集が優先され、このチームからはしばらく離れているが、元をただせば、このチームの正GKと言うべき存在は鈴木だったのだ。
当然、パリ五輪が久しぶりの復帰になるといっても、戦術理解やコンビネーションには何ら問題がない。それどころか、久保建英を除けば、パリ世代のなかで最も多くの国際Aマッチに出場している選手となり、その経験をU‐23代表に還元することも期待できる。
本人も4年前にはかなわなかった五輪出場を望んでおり(東京五輪では登録メンバー入りするも、試合出場はなし)、実際に招集されるとなれば、大きな戦力アップにつながるはずである。
メンバー入りの最有力候補であるこのふたりに続く選手を挙げるとすれば、Jリーグでプレーする3人のGK、すなわち、佐々木雅士(柏レイソル)、野澤大志ブランドン(FC東京)、藤田和輝(ジェフユナイテッド千葉)だろう。
佐々木はこのチームの初陣となった国際大会、2022年3月のドバイカップに、小久保、鈴木とともにメンバー入り。全3試合を等分する形で、1試合に出場しているGKだ。
J1でも2022年シーズンには20試合に出場するなど、柏の正GKに定着し、この世代のポジション争いでもトップグループを形成するひとりだった。
実際、一昨年のヨーロッパ遠征では、イタリア、スペインといった強豪国相手の親善試合で、小久保や鈴木を差し置いて先発出場しているほどだ。
しかし、翌2023年シーズンに入ると、柏での出場機会を大きく減らし、このチームでの序列も下げてしまう。
そんな佐々木と入れ替わるように台頭してきたのが、野澤である。
2019年U‐17ワールドカップでは、鈴木、佐々木とともに、登録メンバー入りしていた有望株も、所属するFC東京ではトップチームの壁が厚く、なかなか出場機会を得られずにいた。
だが、2023年シーズンでついにJ1デビューを果たすと、シーズン終盤は正GKに定着。J1での出場経験を生かし、このチームでの序列も次第に上げていった。先のU‐23アジアカップでも、2番手GKという位置づけで小久保を支えていたのは、野澤である。
一方、別路線から台頭してきたのは、藤田だ。
昨季J2での活躍(当時の所属は栃木SC)が認められ、2023年9月〜10月のアジア大会に出場した藤田は、正GKとして準優勝に大きく貢献。ピンチを救うシュートストップだけでなく、足元の技術を生かしたビルドアップにも冴えを見せた。
アジア大会の登録メンバーには大学生が多く、"Bチーム"とも称される編成ではあったが、そこでのアピールに成功した藤田は、およそ1カ月後に行なわれたアルゼンチンとの親善試合でもメンバー入り。"Aチーム"に抜擢されたばかりか、野澤、佐々木をベンチに座らせ、先発メンバーの座まで手にしている。
しかしながら、彼ら3人が繰り広げてきた競争は、現実的に考えて、3番手争いというのが実際のところだろう。パリ五輪登録メンバーのGK枠は2。これまでの起用法や実績を考えれば、彼ら3人のうちの誰かが、小久保、鈴木を押しのけてメンバー入りするとは考えにくい。
GKに関してはOAの活用を議論する必要もなく、所属クラブとの交渉さえ問題なければ、2枠の行方は、小久保と鈴木でまず間違いないだろう。
海外組のGKが登録メンバー入りするとなれば、日本の五輪チーム史上初めてのことになる。