「3人でじゃんけん。あいこになる確率は?」…多くの人が誤解している「確率」を理解できていますか

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食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。

長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。

『大人のための算数力講義』連載第16回

『1㎥の水の重さは何キロ?間違って覚えていると恥ずかしい「単位」の換算方法を学びなおし!』より続く

「確率」という言葉を正しく捉える

確率という言葉は誰もがよく使う言葉だろう。ところが、その意味を誤解している場合が少なくない。

たとえば、サイコロが見えないように細工してあって、次の目の順番で規則正しく出るとする。

1, 2, 3, 4, 5, 6, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 1, 2, 3, 4, 5, 6, …

このサイコロを6000回投げると、それぞれの目はちょうど1000回ずつ出る。それでも「このサイコロは、それぞれの目が確率6分の1で出る」とはいえない。

それは、1回目は必ず1の目が出て、2回目は必ず2の目が出て……、6回目は必ず6の目が出て、7回目は必ず1の目が出て……というようになっているからである。

「それぞれの目が確率6分の1で出る」といえるためには、何回目に投げるときも、どの目も同じ可能性で出ると考えられることが必要なのだ。

そのように、それぞれの事象が同じ可能性で起こると考えられるとき、それぞれの事象は「同様に確か」という。

この「同様に確か」という言葉は、注意しないと忘れてしまうが、確率を学ぶうえで最も重要な言葉である。

確率の計算式

一般に、コインやサイコロを投げるなどの何らかの試行で、起こり得るすべての場合がn通りあり、そのどの場合も起こることが同様に確かとする。このとき、それらのうち特定の事柄の場合がa通りあるならば、その起こる確率pは、

p=a/n

で与えられる。

なお、確率が1ということは確率が100%、確率が1/2ということは確率が50%であること、等々に留意する。

(細工のない普通の)サイコロを投げるとき、起こり得るすべての場合の目は1, 2, 3, 4, 5, 6で、またそれらのどの目が出ることも同様に確かである。そして、たとえば3の倍数の目は3と6の2通りなので、3の倍数の目が出る確率は

2/6=1/3

となる。

余談であるが、サイコロは正6面体である。確率に関する問題やゲームでよく用いられる正多面体は、正4面体、正6面体、正8面体、正12面体、正20面体の五つである。この証明は、拙著『新体系・中学数学の教科書(下)』に述べてある。

樹形図で考える確率

例題

コインとサイコロを投げるとき、コインは表が出て、サイコロは偶数の目が出る確率を求めよう。

結果として考えられるのは、樹形図で示す12通りである。そして、12通りのそれぞれは、同様に確かである。

コインは表、サイコロは偶数の目が出る場合に○を付けると、次のように3通りである。

したがって、求める確率は

3/12=1/4

となる。

ここで、コインの目の出方とサイコロの目の出方はお互い無関係である。このように、一般に二つの試行SとTがお互いに無関係な場合、Sに関して事象Eが起こる確率をp、Tに関して事象Fが起こる確率をqとすると、二つの試行SとTを同時に行うとき、EかつFが起こる確率は、

p×q

となる。たとえば、コインとサイコロを同時に投げるとき、コインは裏でサイコロは1の目が出る確率は、

1/2×1/6=1/12

となる。

3人でじゃんけん、あいこになる確率は?

例題

A, B, C 3人でじゃんけんを1回行うとき、あいこになる確率を求めよう。ただし、誰もがグー、チョキ、パーをそれぞれ確率で出すとする。

A, B, C 3人でじゃんけんを1回行うとき、樹形図で示した27通りが考えられ、どれも同様に確かである。それらのうち、あいこになるのは9通りなので、

あいこになる確率=9/27=1/3

となる。

『1/10の確率で採用される採用試験、20社受けたら採用の「期待値」は何社?』へ続く

1/10の確率で採用される採用試験、20社受けたら採用の「期待値」は何社?