日産、取引先支援の新組織設置 下請法違反継続疑いで

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Maki Shiraki

[横浜市 31日 ロイター] - 日産自動車の内田誠社長は31日に会見し、社長直轄で取引先の相談に応じる組織を立ち上げると明らかにした。3月に公正取引委員会から下請法違反で勧告を受けた後も一部の下請業者から取引に対する不満が出ていることを「重く受け止める」と述べた。6月には公取委に再発防止策を提出する方針。責任をとるため、自らの役員報酬の30%を4月から3カ月間、自主返納する。

日産の取引先は2000社超あり、内田社長は「取り組みが隅々まで行き届くまでどうしても時間がかかってしまう部分は正直ある」と説明。「日々のやり取りで至らない点、改善すべき点を含めて今後、適正取引ができるよう取引先にヒアリングし、社内プロセスを見直す」と語った。

公取委勧告後も一部の取引先に代金の不当な減額を続けているとの一部報道について、日産は客観的に調査するため外部の弁護士などに依頼した。調査は、社内の購買担当とメールなどの範囲にとどまり、取引先には話を聞いていないという。調査を担当した辺誠祐弁護士は「現時点で直ちに下請法違反や何らかの法令違反があるというふうに暫定的に評価する状況ではない」との見解を示し、違反の有無は「最終的には公取委の判断」とした。

日本政府は、賃上げと物価上昇の好循環を目指し、中小企業が価格転嫁を通じて賃上げ原資を確保できるよう後押ししており、大企業が下請業者の価格転嫁を認めるよう適正な取引の実現を要請している。

公取委は3月、「割戻金」の名目で一部の下請業者への支払いを減額していたことが下請法違反になるとして日産に再発防止を勧告した。下請法では、下請け側に責任がある場合などを除き、両社間の合意があっても発注金額から減額することを禁じている。日産はこの時、法令順守と再発防止を徹底するとし、減額分をすでに下請業者へ支払い、割戻金の運用を廃止したと述べていた。

公取委によると、日産は2021年1月から23年4月の間、下請業者36社に対し、一度決まった支払い代金から総額30億円超を減額していた。