【広島連続保険金殺人事件】死刑囚の長男が怒りの告発「私はCBCテレビにヤラセ演出を強要された!」

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「今までテレビや雑誌などいろいろなメディアの取材を受けてきましたが、あんな経験は初めてでした。制作陣と別れて一人になってから、怒りと悲しみで涙が止まらなかった。もう二度と、CBCテレビと関わるつもりはありません」

FRIDAY記者にそう怒りを露(あらわ)にするのは、愛知県に住む大山寛人(ひろと)さん(36)だ。

’98年10月、寛人さんの父親である大山清隆死刑囚(62)は自身の養父(当時66)を保険金目的で殺害。’00年3月には、妻で寛人さんの母親でもある博美さん(当時38)も同じ目的で殺害した。寛人さんは残された加害者家族、そして被害者遺族として自身の経験をメディアで語っている。そんな寛人さんがCBCテレビ(中部日本放送・TBS系)から”ヤラセ演出”を強要されたというのだ。

「きっかけは、今年4月下旬にCBCテレビから加害者家族を取り上げる公共CMの撮影をしたいという依頼があったことでした。その時は、詳しい内容を知らされなかったので承諾したんです。最初からヤラセがあると知っていれば、もちろんお断りしていました」

そして5月上旬、撮影場所に出向いた寛人さんへ、CBCの担当者から驚きの要望が伝えられる。

「担当者からいきなり、向こうが用意してきた台本を読んでほしいと伝えられたんです。その台本には、『僕は人殺しの息子だ!』『僕は人殺しの息子というだけで差別を受けてきた』といったニュアンスの言葉が並んでいました。それから、父親から送られてきた手紙を燃やす画(え)を撮りたいと言われて、手元にはないと伝えるとダミーの便箋(びんせん)を『父親の手紙に見立てて燃やしてください』とも言われました。自分がなるべく悲惨な状況にいる画が撮りたいというテレビ局側の意図はわかりますが、私は撮影が終わった段階でこれは放送するべきではないから断ろうと思いました」

CBCが捏造した誹謗中傷

CBCの悪質な演出に寛人さんの怒りが込み上げるなか、さらに驚愕(きょうがく)の要求を突き付けられる。

「撮影の担当者から、私への誹謗中傷が投稿されたXのアカウントの画面を見せられて、『これを悲しそうな感じで見ているシーンを撮らせてほしい』と言われたんです。その誹謗中傷アカウントはCBCのスタッフが勝手に作成したもので、《大山寛人は、殺人者の息子だ》《大山くんと友達になるのはやめて》《お前も殺人犯だ》などの投稿がされていました。担当者は、特に悪びれる様子もありませんでした」

この誹謗中傷アカウントを目にして寛人さんの我慢は限界を迎えた。怒りを通り越して悲しみに襲われたという。

「台本の準備や父親の手紙を燃やす演出については、もちろん許す気はないけれど、なんとか自分の気持ちを収めることができた。しかし、誹謗中傷の文面の捏造(ねつぞう)はさすがにやりすぎだと思いました。確かに、私は過去にこういった誹謗中傷を受けてきました。ただ、こういう文章をテレビ局の人たちが捏造までするというのは本当に理解できなかった。どういう気持ちで作ったのだろうと思うし、人の道を外れたような行為だと思います。実際に受けた誹謗中傷よりも、今回、テレビ局の捏造行為を目の当たりにしたことのほうがよっぽど傷つきました」

撮影が終わり帰宅する道すがら、寛人さんは一連の″ヤラセ演出″に対する自分の思いをCBCテレビの担当者にLINEで送った。帰りの車の中では、しばらくの間涙が止まらなかったという。

「後日、CBCサイドから謝罪の申し入れがあって、担当者と責任者に会いました。しかし、そこでは『大山さんのような方を一人でもなくしたいという思いが行き過ぎた。自分の熱意だけで突っ走ってしまったところに、大山さんを巻き込む形になってしまった』といった言い訳を並べられただけでした。あの誹謗中傷のアカウントを担当者がどういう理由で捏造したのか、それに対する回答は貰えなかった。彼らには人の心がないんです。
私は名前も顔も公にして、本当に身を削りながら取材を受け、講演活動もしてきました。今回の出来事は、自分の思いやこれまでの活動を踏みにじられたように感じています。私はもう二度とCBCと関わるつもりはありません。そして何よりも、彼らが今後ほかの加害者家族に取材をする際には、絶対にこういったヤラセをしないでほしいし、取材対象者を傷つけるようなことはしないでほしいと強く思います」

FRIDAYの取材中、寛人さんは怒りや悲しみからか涙をこらえる場面もあった。

台本の準備や誹謗中傷アカウントの捏造といった一連の″ヤラセ演出″についてCBCテレビに事実確認の質問状を送付したが、「番組の制作過程および取材過程の問い合わせにつきましては、従来よりお答えしておりません」とのみ回答があった。

当事者を傷つけるようなやり方では、伝わるものも伝わらないだろう。

『FRIDAY』2024年5月31日号より