W杯アジア2次予選ミャンマー戦(6月6日)、シリア戦(6月11日)に臨む日本代表メンバー26人が以下のとおり発表された。

GK
前川黛也(ヴィッセル神戸)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)

DF
長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(アル・ラーヤン)、板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、橋岡大樹(ルートン・タウン)、菅原由勢(AZ)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(ラツィオ)、相馬勇紀(カーザ・ピア)、小川航基(NEC)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(フェイエノールト)、田中碧(デュッセルドルフ)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)、中村敬斗(スタッド・ランス)、久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)


 復帰組は谷、鎌田、旗手、冨安。鈴木も出場歴はないが招集歴はあるので、このなかに加えることができる。一方、前回メンバーから外れたのは、鈴木彩艶(シント・トロイデン)、渡辺剛(ヘント)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)、浅野拓磨(ボーフム)、佐野海舟(鹿島アントラーズ)。伊東純也(スタッド・ランス)、三笘薫(ブライトン)も前回に引き続き招集外となった。

 このメンバーに選ばれることは、日程が重なるパリ五輪に向けての準備試合であるアメリカ遠征(6月7日、11日アメリカ戦。メンバー発表は5月30日)に参加しないことを意味する。U−23の久保と鈴木は、年齢的には五輪の出場資格があるが、所属クラブがそれを認めなかったという話になる。五輪出場も難しそうだと、調整役である山本昌邦ナショナルチームダイレクターは語っている。

 さらに言えば、今回選ばれたメンバーが、オーバーエイジとして五輪に出場する可能性も減ったと考えていいだろう。五輪チームの試合日程を眺めれば、アメリカ戦のあとは、五輪本番直前に開催国フランスとスパーリングマッチをするのみだ。オーバーエイジをそこで初めて招集しても、本番に向けコンビネーションに大きな不安を残すことになる。

 五輪の成績はオーバーエイジのレベルに比例する。そう考えるのが妥当なので、吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航が加わった東京五輪のように、日本代表の主戦級の不参加がほぼ確定した今回は、メダル獲得が難しくなったと言えそうだ。

【ベストメンバーを選ぶ必要はあるのか】

 言い換えるならば、五輪のサッカー競技は、それほどメダルの重みに欠けるものでもある。選手の所属クラブが、五輪に選手を送り出そうとしない理由もよくわかる。欧州組が100人を超えたいま、日本のサッカー協会も五輪に対する考え方をあらためるべき時に来ている。五輪に無理に力を注ぐことは避けるべし。今回も、U−23日本代表からの抜擢は、久保や鈴木だけでは物足りないと考える。

 この世界、まずはW杯ありきだ。そこでの成績に言い訳は許されない。物事は次回W杯が開幕する2026年6月から逆算して考える。これが本来あるべき姿である。


日本代表のメンバーを発表する森保一監督 photo by Fujita Masato

 今回のミャンマー戦、シリア戦は完全な消化試合だ。日本の最終予選進出はすでに決まっている。選手を試すにはまたとない機会になる。にもかかわらず、森保一監督はベストメンバーを選んでいる。

 2年後に39歳になっている長友がいくらいい選手でも、選ぶべきではないのだ。次に控えている選手に経験を積ませたほうが、W杯でベスト8を狙う日本にとっては有益だとは思わないのだろうか。U−23日本代表に該当者がいるならば、アメリカ遠征でなく、A代表に加えるという選択はあっていい。もちろんU−23以上にも、試してみたい選手は控えている。

 欧州のシーズンが終了したタイミングである。一方で休ませたくなる選手が数多くいる。近年、故障を繰り返している冨安などはその最たる存在だ。欧州ナンバーワンのプレミアリーグで終盤、優勝争いをするチームに欠かせぬ戦力として活躍した彼を、ミャンマーに連れて行くべきだとは思わない。リバプールのアンカーとしてシーズン後半、出ずっぱりだった遠藤しかり。今回ぐらいは、休ませてやればいいのに、と言いたくなる。今回の2試合は、E−1東アジア選手権に臨む日本代表的な、代表キャップを多くの選手に与える機会との位置づけで十分であると考える。

「9月から始まるW杯アジア最終予選の準備をしっかりしなくてはいけない」とは山本氏の言葉だが、枠は8.5もある。アジアカップでは、あれだけ失態を繰り返してもベスト8に進んだわけだ。現実的に考えて日本が落選する可能性はほぼゼロに等しい。4.5枠を争ったこれまでの予選も、終わってみれば楽に通過している。もっと泰然自若に構えないと、大きな伸びシロは期待できない。本番でベスト8など望めない、とは考えないのだろうか。

【鎌田大地を外してきたという事実】

 先述した復帰組5人のなかで、最も引っかかりを覚えるのが鎌田だ。森保監督はタイ戦、アジアカップ、北朝鮮戦と、鎌田の招集を避けてきた。所属クラブでスタメンを外れる機会が多かったことと、それは深い関係にあるように見えるが、森保監督の鎌田評は、それ以前からけっして高いとは言えなかった。たびたび外してきた過去がある。

 その間、フランクフルトの一員としてヨーロッパリーグを制し、チャンピオンズリーグ(CL)にも出場。株を上げて今季はラツィオに移籍した。ところが監督(マウリツィオ・サッリ)との相性が悪く、出場機会は思うように伸びない。そのタイミングで森保監督は鎌田を外した。現在のUEFAリーグランキングでプレミアリーグに次ぐ2位に位置するセリエAの上位チーム。CLでもベスト16入りしたレベルの高いチームでの話であるが、森保監督は容赦なく、鎌田を除外した。

 ところがサッリのクビが飛び、イゴール・トゥドールが新監督の座に就くと、鎌田に対する扱いは一変、不動のスタメン選手となった。トゥドールは「こんないいい選手がベンチを温めていた理由がわからない」と言った。

 先日のインテル戦でも鎌田は先制弾を挙げるなど、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せている。代表復帰は当然の結果と言えるが、筆者は復帰より、外された事実を重く見る。6年も前から、日本代表の監督として鎌田を見続けている森保監督の鎌田評は、トゥドールに近いか、サッリに近いかと言えば、後者になる。日本代表監督がトゥドールなら、アジアカップには間違いなく招集していただろう。ベスト8という不甲斐ない成績と、森保監督のサッリ的な"目"は深い関係にある。

 筆者は「センタープレーヤーが務まる鎌田的な選手がいれば、日本の攻撃は円滑になった」と、アジアカップ期間中、再三、指摘したものである。

 鎌田は急にヘタになったわけではない。急に上達したわけでもない。出場を左右したのはサッリ、トゥドールそれぞれの目だ。筆者が鎌田なら、定見のない森保監督を訝しげに見るだろう。代表復帰を、心の底から喜ぶことができずにいると見る。

 ミャンマー戦、シリア戦。一番の見どころは鎌田対森保になる。